いよいよ放送開始!「ウマ娘」アニメ3期の見所をいつもの「東スポ」記者が解説
いよいよ4日からアニメ『ウマ娘 プリティーダービー Season 3』の放送が始まります。ゲームが大ブレークしたこの2年半、私は「ウマ娘」各キャラの史実について、過去の「東スポ」紙面を使って紹介してきました。おかげさまで信じられない数の皆さんが読んでくださり感謝感激です。
私はもともゲームリリース前に放送されたアニメの大ファンでもあるので、文章でもアニメと史実の関連性に触れています。マックイーンの回なんて、原稿書きながら該当シーンを思い出して泣いていましたから、いいオッサンが何やってんだという感じですが、そんな私を知っている「東スポnote」の編集長(年下)が先日、わざとらしく神妙ぶって近づいてきました。
「アニメ、始まりますね」
おー、そうそう、楽しみだなー。
「メインキャラはキタサンブラックと…」
サトノダイヤモンドだね。
「あれ? 先輩、その2頭のnote、もう書きましたっけ」
…。
「書いてないですよね。うわー、タイミングいいなー」
私はすぐに彼が何を言いたいのか分かりました。通常の仕事もあるのに「東スポnote」の編集長を押し付けられ、それでもしっかり読者を増やし、「東スポ」のブランドイメージを向上させた有能な男ですから、この機を逃すわけがありません。
「書きましょう。アニメ開始のタイミングでアップしましょう!」
予想通りの言葉でした。でも…。
「あれ? 先輩?」
…。
「あー! もしかしてもう書いて…」
ないです。でも、書いていたとしてもアップはしません。私は編集長に声を上げました。
「喝!」
「え?」
「喝だ! 今、キタサンブラックとサトノダイヤモンドのnoteをアップしたら、アニメを楽しみにしていた人の迷惑になる」
「えっ…」
「ウマ娘のアニメは史実を的確に反映してくれるだろ? それがまた競馬ファンにとってはたまらないんだけど、一方でウマ娘から入ったファン、キタサンブラックやサトノダイヤモンドの史実を知らないファンは、アニメで史実を知ることにもなる」
「あっ、まさか…」
有能な彼は気付きました。私はうなずきました。
「そうだ。ネタバレになるんだよ。ファンの皆さんのためにも、アニメ制作にかかわった人のためにも、俺は書かない。ウマ娘のアニメを愛するがゆえに書かないんだ!」
黙り込む編集長。彼も、競馬を、ウマ娘を愛する男です。この理屈が分からないわけがありません。そして私は彼が素直なのも知っています。「すみません、浅はかでした」と頭を下げるはず。引き下がるはず。
「先輩…」
なんだ?
「書きたくない言い訳ですか?」
違うっつーの!
結局、キタサンブラックとサトノダイヤモンドのnoteはネタバレ回避のために後回しとなったものの、「何か書かなきゃダメでしょう」という編集長に押し切られ、アニメの見どころを「東スポ」と「東スポに保管されている写真」を使って書かせていただきました。Season1、2を見ていなくても、これを読めば〝前提〟が分かりますし、見ていた人も〝おさらい〟できると思います。鑑賞前の一助になれば幸いです。(文化部資料室・山崎正義)
Season3への流れは?
今回、中心となるのはキタサンブラックとサトノダイヤモンド。新入生としてトレセン学園に入学したところから物語は始まるはずで、そのトレセン学園こそが「ウマ娘」の舞台。そう、アニメSeason1、2で活躍したキャラクターが〝先輩〟として待ち構えています。
改めてざっと振り返っておきますと、Season1はスペシャルウィークがヒロイン。北海道から上京し、トレセン学園に転入してきたスペちゃんが、あこがれのサイレンススズカとともに切磋琢磨し、頂点を目指します。
ライバルとしてグラスワンダーやエルコンドルパサーも出てきます。いわゆる黄金世代ですね。
Season2はトウカイテイオーがヒロイン。生徒会長・シンボリルドルフにあこがれたテイオーが無敗の三冠ウマ娘を目指します。3度の骨折、ライバル・メジロマックイーンとの死闘を乗り越え、1年ぶりの出走となった有馬記念で奇跡の復活――
この有馬を中山競馬場の最前列で見ていたのがまだ〝おこちゃま〟のキタサンブラックとサトノダイヤモンドです。もともと2人はSeason2の序盤からほんの少しですが登場するようになっており、キタサンブラックはあこがれのテイオーが骨折した際にお守りを渡そうともします。そして最終話、有馬を見て狂喜乱舞し、さらにあこがれを強くして、エンディングではサトノダイヤモンドとともにトレセン学園の門の前に立つシーンが…。
「いよいよだね、キタちゃん」
「一緒に頑張ろう、ダイヤちゃん」
入学式
Season3へ
という流れです。
ヒロインの素顔
ネタバレしない程度に、知っておくと面白くなる程度に、キタサンブラックとサトノダイヤモンドがどんな馬だったか、軽く説明しておきましょう。アニメでは互いに「キタちゃん」「ダイヤちゃん」と呼んでいるので、当noteもそれにならいます。
2頭は2010年代半ば、同じ時期に活躍しました。アニメに登場するメンバーで言うと、テイオーとマックイーンが戦ったのが1992年、スズカ、スペちゃん、グラス、エルコンドルが90年代後半、ウオッカやダイワスカーレットが走ったのがその後の2000年代後半です。ゴールドシップはさらに後で、実は引退レースで3歳年下のキタちゃんと1度だけ対戦しています。
そんなキタちゃんの馬主はご存じ、歌手の北島三郎さん。
キタちゃんがGⅠを勝ったときに、競馬場で「まつり」を歌うことでも知られていました。そのせいか、普通の名馬よりもはるかに知名度が高いのですが、デビュー当初から大きな注目を集めていたわけではありません。血統が地味で、馬の値段は350万円。一方のダイヤちゃんがいくらだったかというと…
2億3000万円!!
父が近代競馬の結晶にしてリーディングサイアー・ディープインパクト、母はアルゼンチンのGⅠ馬という超良血。アニメでの設定が「お嬢様」なのも当然です。ちなみに、キタちゃんの父・ブラックタイドはディープインパクトのお兄さん。GⅠは勝っていませんが、父母もディープと同じ全兄だったので、〝代替〟〝お手頃ディープ〟といった扱いで種牡馬になりました。ただ、ガンガンGⅠ馬を輩出していたディープと違い、キタちゃんデビュー時点で、GⅠ馬は輩出していません。
これほど値段に差があった2頭がGⅠでしのぎを削ることになるのですから競馬というのは本当に面白いです。特にキタちゃんは、どんどんどんどん強くなる馬でした。既に公開されている本PVで「ビシビシご指導、お願いいたします!」と口にしていますが、これ、史実通りで、とにかくめちゃくちゃ練習する馬。スターになっても、年を取っても、トレーニングセンターでビシビシ鍛錬する姿に私は惚れていたのですが、その姿勢がアニメに反映されそうで本当に嬉しいです。
お次は2頭のジョッキーを見てみましょう。皆さん、少し前から放映され、話題となったあのCMを思い出してください。トップジョッキーがタップを踊るあのCMを…おそらくあれはアニメへの布石でもありました。そう、キタちゃんの主戦は天才・武豊ジョッキー。
ダイヤちゃんはルメール騎手なんです。
ともに名手を背に、GⅠ制覇を目指す2頭。ただ、その道のりはかなり違います。ネタバレになるので詳しく書けませんが、アニメのダイヤちゃんには「サトノ家の悲願」が付いて回ることになります。「サトノ」の冠名で知られるオーナーは、良血馬や実力馬をたくさん持っていたものの、どうしてもGⅠに手が届かなかったからです。面白いのは、そんなダイヤちゃんが「メジロ家」であることにプライドを持ち、それに苦しんだマックイーンに憧れているところ。「使命」や「宿命」というテーマが、Season3にも引き継がれるわけで、キタちゃんがスペちゃんやテイオーといった元気で明るいヒロイン像を引き継いでいることとともに、競馬の継続性を非常にウマく落とし込んでいますよね。
他に注目のウマは?
Season3ではアニメ初登場のウマ娘にも注目です。こちらもネタバレしない程度に紹介しますと、まずはダイヤちゃんと同じ「サトノ家」であるサトノクラウン。史実ではダイヤちゃんの1歳年上で、同時期に活躍しました。
アニメの公式サイトにあるプロフィールではチーム「カペラ」所属となっています。ダイヤちゃんも同じチームであることがプロフィールに書いてあり、チーム「スピカ」に入るキタちゃんとは別チームになるようです。あこがれのマックイーンは「スピカ」なのですが、このあたり、どういう絡みを見せるのかも見ものです。
お次はシュヴァルグラン。内向的で口数少なめなキャラで、「同級生のキタサンブラックの勢いにはやや気圧されがち」と公式HPにあります。実際、キタちゃんとは史実でも同級生で、オーナーが有名人なのも同じです(シュヴァルグランの馬主は元プロ野球選手〝大魔神〟佐々木主浩氏)。
以上2頭とも、キタちゃん、ダイヤちゃんと同じく、GⅠ制覇に向けて苦労に苦労を重ねるのですが、そういう意味ではアニメ登場のアナウンスが最も遅かったサウンズオブアースが果たす役割も非常に楽しみです。ネット上では、チーム「カノープス」入りが噂されています。メンバーは、ナイスネイチャ、ツインターボ、イクノディクタス、マチカネタンホイザ…はい、競馬に詳しい方ならサウンズオブアースとの共通点にお気づきですよね。このあたりを想像しながら、そして「GⅠ」という高い壁がストーリーの根底にあることを踏まえつつアニメを見れば、よりグッとくると思われます。というわけで編集長、こんな感じでいかがでしょうか?