忘れられない延長12回完投引き分け!野茂英雄は171球で12奪三振、僕は198球13奪三振【野田浩司連載#11】
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忘れられない延長12回完投引き分け!野茂英雄は171球で12奪三振、僕は198球13奪三振【野田浩司連載#11】

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メッタ打ちされて小川打撃コーチが「なめとんのか」

 僕は1992年のオフにオリックスの松永浩美さんと交換トレードになった。当時の阪神の中村勝広監督からは電話で「申し訳ない…」と言われた。

 阪神時代、中村監督には手紙をもらったことがありました。92年の6月ごろ、投手陣が疲れてきていた時に僕はまだ二軍で調整をしていたけど「もう上がって来い」と呼ばれて合流した時です。「とにかく期待しているから頑張れ。1年間は長いぞ」みたいなことが書かれてあった。それで7月に月間MVPを取れたんですよね。

 その年に開幕投手をやらせてもらった時も宿舎を出る前、みんな集合して選手会長の和田(豊)さんが「今年はやるぞ」とあいさつした。そしたら中村監督が「野田も行け!」って言われてあいさつさせられました。「頑張って投げるんで打ってください」と。そういうところもうまかったんじゃないですかね。普通は先発投手のあいさつなんてないですからね。引退後も僕の三宮のお店にもよく来てくれますし、だいたい「お前は絶対トレードで出てよかったぞ」と言われますよ。僕にとっては今も監督と選手の関係ですよね。

VS西武、土井監督と野田(93年、西武球場)

土井監督と野田(93年、西武球場)

 新天地のオリックスでスタートしたのが93年。パ・リーグの野球ってどんどん振ってきてめちゃ怖いと思いましたよ。僕は最初、抑えだったんです。当時の土井正三監督(故人)は抑えで使うつもりで僕を獲った、と言ってましたもん。オープン戦からずっと抑えをやっていたわけですけど、米田哲也投手コーチが「お前、無理。絶対、お前は先発だ。俺が先発に行かしたる」って…。

 自分でも力投型だし、抑えのタイプではないと思っていました。リリーフをずっとテストされるんですけど、最後に神戸で阪神とのオープン戦があって、その最後の1イニングをピタリと抑えた。それを打たれていたら開幕二軍だったと思います。とりあえず開幕一軍に残ったんですけど、それまでずっと打たれていたんで抑えは無理やろうと…。それで先発5番手に入れたんですね。

 お客さんは少ないし、阪神とのあまりの雰囲気の違いに戸惑いもありました。最初の神戸での西武戦はKOされて、次が4月21日の日生球場の近鉄戦。2回までにブライアントらにホームランを3発打たれていた。それまでもパでは通用しないわ、と思っていました。オープン戦もメッタ打ちされていたしね。

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15奪三振で初勝利をマークした日生球場での近鉄戦(93年4月21日)

 ベンチに帰った時、小川亨打撃コーチに「お前、パ・リーグの野球なめとんのか!」って言われたんです。担当コーチでもないのに…。小川さんも気持ちが盛り上がらない僕に思うところがあったんでしょう。それで頭にきて試合最後まで思い切り投げた。肩が壊れてもいい、くらいの気持ちで投げたら15三振取れた。逆転してくれて、移籍後の初勝利。その試合が一つの分岐点になりました。

イチローを指導する小川亨コーチ(93年5月、GS神戸)

イチローを指導する小川亨コーチ(93年5月、GS神戸)

 パの野球でやっていける自信を持てたのは、後にメジャーに行く野茂英雄との投げ合い。お互い延長12回を完投して…。

頭にヒビ!それでも投げ最多勝の僕に並んだ野茂

 1993年からオリックスに移籍し、パ・リーグの球場の静かな環境に最初は戸惑いました。92年の阪神が優勝争いで大フィーバーだったんで、余計にギャップがすごくて…。お客さんの“衝撃”ですよね。阪神のあの大観衆の中でやってきて、お客さんに燃えさせてもらっていたところもあった。そんな僕に捕手の中嶋聡から「野田さん、パ・リーグは自分で盛り上げていかないとダメですよ」って言われたくらいです。

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スターだった野茂。延長12回を投げ合ったことが大きな自信になった

 最初の神戸での西武戦なんてドル箱カードって聞いていたのにガラガラで…。まあ、平日だったせいもあるんでしょうけど。日生球場なんてあの狭さだし、着替えるところもない。打撃練習は全部フェンスに当たるし「ここで投げるの」って思った。イチローが出てくるまではほんとお客さんが少なかったですね。

 それにパの打者はどんどん振ってくるし、ピッチャーもすごい。ロッテには伊良部秀輝(故人)がいたし、近鉄には野茂英雄でしょ。西武には工藤公康さん渡辺久信さん石井丈裕さん郭泰源さん鹿取義隆さん、リリーフには潮崎哲也…。これは優勝するよな、と思いましたよ。

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