プロレス界の〝狂猿〟こと葛西純は自他共に認めるデスマッチの天才だ。蛍光灯、画ビョウは日常茶飯事。11月20日にはあまりに危険なため過去3度しか行われていないカミソリボードデスマッチを敢行。デスマッチ史に残る戦いをくぐり抜けてきた男は、常識外れの生命力を持っていた。
デスマッチにこだわりを持つ葛西だけに、試合後の肉体はいつもズタズタ。生傷とは切っても切れない間柄だ。そんな葛西でも「あれはクレージーだった」という出来事があった。
聞くだけで身の毛もよだつ話だが、本人はケロリ。この時は150針縫ったが、それ以外の傷は「骨が見えたり、脂肪がベロッて見えてきたりしない限り、縫わない」らしい。通常は傷口を寄せて張り付けて固定するだけ。消毒も「シャワーぐらい」というから、痛みの感覚もマヒしているのかもしれない。
やはり痛みの感覚が常人とはズレている。医者は、こんな男を前にして何も言わないのか?
葛西は破壊王・橋本さんの最後の付け人でもあった。
太く短く、できれば長く――。葛西のデスマッチ人生は続く。
※この連載は2009年4月~2010年3月まで全33回で紙面掲載されました。東スポnoteでは当時よりも写真を増やしてお届けします。