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走らせるならどの名馬?「ウマ娘」にも登場するアイビスサマーダッシュと面白すぎる千直の歴史を「東スポ」で振り返る

伝えたい聞きたい

 ツインターボ師匠のnoteで力を使い果たし、短期放牧をいただいたのに、ごめんなさい。「ウマ娘」で大好きなマルゼンスキーを紹介しようと執筆を始めたのですが、最古参キャラ(1970年代!)なので資料発掘が困難を極めた上に、ウラが取れない(確証が得られない)事象もあり、結局、完成に至りませんでした。というわけで、急いで何か書けないものかと、今朝からネタを探してみたところ、今週末はアレなんですね!

 まず競馬初心者の皆さん、「ウマ娘」で「アイビスサマーダッシュ」というGⅢに自分のウマ娘を出走させたとき、驚きませんでしたか? そう、日本の重賞で唯一、カーブのない直線だけを走るレースなんです。競馬ファンにとっては真夏の楽しみのひとつで、今年は次の日曜日に新潟競馬場で行われます。ぜひ多くの人に存在を知ってほしい面白レースなので、ちょっと紹介させてください。名馬を掘り下げる普段のパターンとは異なりますが、競馬の魅力を広めるのが使命だと思っていますのでどうかお許しを(言い訳)。あと、こういう回になったからこそ今までやりたかったことを一つ。実は私、競馬好きの方々の意見を聞いてみたいんです。皆さんは、過去の名馬でアイビスサマーダッシュを走らせたらどの馬が一番速いと思いますか? 本当はみんなで朝まで酒を飲みながら語り合いたいところですが、そうもいきませんので、「東スポ競馬」のこのnoteのアップ告知ツイートに返信する形(リプライと呼ぶんでしたっけ)で聞かせてもらえるとうれしいです。私はアカウント管理者ではないため(そもそもツイッターも使いこなせません)、皆さんのご意見に反応することはできませんが、ファン同士で、どの馬の名前が挙げられるか、チェックし合いませんか?

21世紀とともに

 あれはちょうど20年前でした。2001年、新潟競馬場が改修された際、直線1000メートルのコースが新設されたのです。カーブのある1000メートルのレースは以前からあったものの、直線コースは日本初(外国には既にありました)。設置が発表されたときから楽しみで仕方ありませんでした。

 改修後初めての開催日は7月14日。その第1レースに、いきなり直線1000メートル戦が組まれました。盛り上げよう!というJRAの粋な計らいに乗らない「競馬の東スポ」ではありません。何と、7月14日土曜日の午後から発売される新聞で、その第1レースの結果を速報したのです。しかも、終面(裏1面)をドーンと使っちゃいました。

最初の紙面


 競馬記者の皆さん、カメラマンさん、紙面づくりをした整理部さん、お疲れ様でした。第1レースの発走は午前10時ちょうど。10時30分には印刷を始めないと全国各地に新聞を届けられませんから、超絶ギリギリのタイミングでした。そんな中で、写真はもちろん、誰もが気になっていたレースの様子もしっかりリポートしています。目標物のない直線で、各馬がどのようにレースを進めるか。内に寄るのか、外に寄るのか、はたまた真ん中か。馬群はバラけるのか一団なのか。結局、写真のように内と外、各馬がバラけるようになり、2枠3番だったセトブリッジが馬場の内から3分の1ぐらいのところを通り、勝利しました。鞍上が、その後、アイビスサマーダッシュを2勝する大西直宏騎手というのが、競馬ファンにとっては感慨深いです。

コース形態は?

 ファンの間で「千直(せんちょく)」と呼ばれるそのコースは、本紙の競馬欄に載っているコース形態図ではこうなります。

コース直線赤丸

 普通はこんな感じなので…

コース丸い

 最初は違和感ありましたね。「ただの矢印じゃん」と(苦笑)。 

 そんな「千直」のスタートは4コーナーの奥に設置されています。ゴールは通常のレースと同じ位置で、やや上からの写真で見ると、こんな具合でレースが進みます(以下、異なるレースですが、続けて見ると分かりやすい3枚を組み合わせてみました)。

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 で、競馬場に行き、ゴール前の最前列あたりを確保すると、こんなふうに見えます。

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 WAO!という近さですよね。ゴール前じゃなくても、とにかく前の方の観戦場所さえ確保すれば、目の前を馬が通り過ぎるのを見られます。私も一度だけ体験していますが、それはもうド迫力です。小さかった馬がだんだん大きくなってきて、アッと言う間に駆け抜けていきます。F-1のような「シュンッ」という甲高い音ではなく、重低音の「ドドドッ」という足音。涼し気でさわやかな風ではなく、馬の息遣いとともに熱風が通り過ぎていく感じです。正直、一瞬なので、どの馬が先頭かなんて分かりません。馬券が当たったかどうかも全く分かりません(苦笑)。でも、まさにそこでしか見られない光景に、なぜか拳を振り上げたくなります。これ、ウソじゃないです。あの場にいたら皆さんも絶対やっちゃうはず。一度、経験してみてはいかがでしょう。

 で、そんな千直の、年の一度の重賞レースがアイビスサマーダッシュですから、その日だけは絶対に見に行くというコアな競馬ファンも少なくありません。何か月も前からホテルを取って(アイビスSDの日は満室が多くなります)、あの一瞬の風のために新幹線「とき」に意気揚々と乗り込むのです。トキ、ニッポニアニッポン、英語だと「アイビス」です。逆に言うと、どんなレースでもいいから千直を見たいという人は、その日は避けた方がいいかもしれません。今年はコロナで事前にネットで指定席を購入できた人しか行けないので大丈夫でしょうが、例年、このぐらいめちゃくちゃ混みますから(苦笑)。

大混雑


 ちなみに、千直が始まってすぐは、今ほど馬との距離は近くありませんでしたが、すぐに〝間近〟が当たり前になります。すなわち馬が直線の外側(外ラチ沿い)を走るようになったんです。新設当初は騎手も手探りで、それこそ上記にある最初のレースのように内と外に分かれることもありましたが、だんだん「外有利」が明らかになっていきました。考えてみれば、非直線のレースで外ラチ沿いを走る馬はいません。外に行けば行くほど、踏み荒らされていないキレイな芝を走ることができるのですから、ある意味、当然とも言えます。他に「馬がラチに頼って走れる」「外ラチ沿いの方が傾斜がない」などの理由が挙げられており、明確な答えが発表されているわけではありませんが、レースでは必ずと言っていいほど、外に馬が殺到しますし、内から伸びて勝つことはめったにないです。で、外を走るために有利な枠は…となると、そりゃあ外枠ですよね。データを取ってみても、勝率、連対率(2着以内)、複勝率(3着以内)とも、7枠や8枠が上位になっています。明らかに実力が劣る馬でも外枠だというだけで好走し、力が上なのに内枠だと敗退してしまう…最もシンプルな速さ比べで、最も枠順の有利不利がなさそうなのに、なぜか逆のことが起こったのも、競馬の面白いところです。こんなことになるなんて、JRAも騎手もファンも、だ~れも予想していませんでしたから。

千直唯一の重賞

 というわけで、アイビスサマーダッシュも、すぐに主戦場は外ラチ沿いになりました。これは2001年、第1回のゴール前です。

アイビス1回目はまだこれ

 赤い矢印をつけた馬は3着になったカルストンライトオで、終始、先頭に近い位置を走っていたのですが、通っているのは馬場の真ん中あたりですよね。それが翌年は、外枠だったのもありますが、しっかりラチ沿いへ(2馬身差をつけて完勝)。

2002ラチへ

 さらに2004年は5枠5番からのスタートだったものの、スタート後、外ラチに向かって斜めに走っていきました。一目散だったので、これは盛り上がりましたね~。で、そのままラチにくっつくように猛ダッシュして3馬身差の完勝です。

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 3勝目を狙った2005年、1枠1番で敗れた(さすがに外にいくにはロスがありすぎて先頭に立てませんでした)ことを見ても、やはり千直の舞台は外なのでしょう。昨年のゴール前も、しっかり外ラチ沿いで火花が散りました。

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 50秒台前半で終わってしまう電撃戦のスピード感は、いよいよ始まる五輪の競技で言えば陸上の花形「100メートル」。あの興奮を得られるだけではなく、馬が外へ外へ行く様子、走るコースを激しく取り合うバトルもアツいので、見たことがない人は動画などをぜひチェックしてみてください。なお、競馬ファンが感心するほど細部へのこだわりが見事な「ウマ娘」でも、なぜかアイビスサマーダッシュにこの〝外へ外へ〟は反映されていません。ウマ娘たちが外に集まっちゃうのを想像すると、ちょっと面白そうですが…(苦笑)。

 そうそう、特殊すぎる条件だからこそ、この舞台設定を得意とするスペシャリストが出てくるのも千直の特徴です。人間でも「これだけは!」という得意分野を持つ人がいますが、最近では、2019年のアイビスサマーダッシュを勝ったライオンボスという馬がそう。2勝クラスで頭打ちになっていたのに、千直を使ったら、誰もが驚く突然のぶっちぎり(15番人気の大穴)。トントン拍子に3連勝して重賞ウイナーになったのですから、どれだけカーブが嫌いだったのでしょうか(苦笑)。

ライオンボス

 で、そこまではいかずとも、もともと力のあった馬で、千直を得意とする馬もいます。過去20回行われたアイビスサマーダッシュでは、前述のカルストンライトオの他に、2勝している馬が2頭もいて、この〝リピート率〟はかなり高いものです。舞台の持つ特異性の証明と言えるのですが、その2頭には共通点があります。

 2008、09年を連覇したカノヤザクラ

カノヤザクラ

 2015、16年を連覇したベルカント

ベルカント

 どちらも父がサクラバクシンオーなのです! この馬の生涯については日を改めてしっかりまとめようと思いますが、さすがゲームで「あらゆるレースをスピードで制す」と言っているだけありますよね。

 では、バクシンオーはアイビスサマーダッシュに出なかったのか。はい、競馬ファンの方には説明不要でしょうが、バクシンオーの現役時代にはまだ千直はなく、この重賞自体がありませんでした。でも、もし出走したら…と思うと、ワクワクします。あの驚異的なスピードを1000メートルで発揮したらどうなるのか。さあ、競馬ファンの皆さん、一緒に妄想しましょう。過去の名馬で、アイビスサマーダッシュを走らせたとして、一番最初にゴールするのは?

「バクシンオーに決まってる」

「タイキシャトルだろ」


「いや、マルゼンスキーは相当速かったらしいぞ」

短距離馬とは限らないですよね。

サイレンススズカは?」

「オグリキャップ!」

 そうです、近代競馬の結晶・ディープインパクトだって、一度も走っていないから答えは出ていないものの、もしかしたら1000メートルにめちゃくちゃ適性があったかもしれません。

 もしよろしければ皆さんのご意見をお聞かせください。ちなみに私は、GⅠはおろか重賞も勝っていませんが、スリーコースに惹かれます。めちゃくちゃスタートが速いし、1000メートルなら無敵だと思うんですが…マニアックすぎますか(苦笑)。いや、このシリーズを応援してくれている競馬ファンの皆さんなら分かってくれる人がいると信じています。というか、このネタで語り始めたらやっぱり朝まで飲めますね(笑)。

 というわけで、今回は特別バージョンで失礼しました。リプライに反応できない代わりに、来週は「ウマ娘」登場キャラの中で、私が千直を走らせてみたい馬を書いてみようと思います(マルゼンスキーではなく)。それではまた。

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