規格外の肉体を誇った元横綱曙は、買い物も豪快だった。横綱時代は海外で超高級腕時計にひとめぼれして「10倍」の価格で購入したという。現在では「惜しいことをした…」と悔やむ秘話とは…。
1995年、横綱として全盛を極めていた時期、曙は海外公演で訪れたオーストリアで、信じられない出来事に見舞われた。
この決断が誤算だった。帰国後、曙は自分の目を疑う。届けられた明細書にはハッキリと「600万円」と記されていたのだ。どうやら、店側の単純な(?)計算ミスか、曙の勘違いが原因だったらしい。しかし、ここからの対応が太っ腹だ。
ブランド物へのあこがれは単身、東関部屋に入門した直後に芽生えた。ホームシックにかかった曙はわずかな手当金のほとんどを、故郷ハワイにいる両親への電話代に費やした。孤独な環境下、先輩横綱の千代の富士(九重親方)の存在は絶大だった。
努力のたまもので手に入れたとも言える高級時計だが、別れは唐突に訪れた。数年後、秘密裏に保管していた金庫もろとも盗まれてしまったのだ。被害総額は数千万円にも上ったという。
その後、顔見知りの犯行と判明し、曙はさらなるショックを受けた。それでも曙は悪夢を振り払おうと声を振り絞る。
※この連載は2009年4月~2010年3月まで全33回で紙面掲載されました。東スポnoteでは当時よりも写真を増やしてお届けします。