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曙「あの変なコスチュームは恥ずかしかったなぁ」【思い出したくない恥バウト】

 思い出したくもない過去の暗黒部分を、わざわざ本人に振り返ってもらって紙面にし、さらに14年後に再び引っ張り出すというのは残酷すぎる企画。第64代横綱の曙のトラウマは「WRESTLE―1」(2005年8月4日、東京・両国国技館)のグレート・ムタ戦だった。

34cmのシューズが間に合わず裸足でリングイン

 もしかしたら「Dynamite!!」(2003年大みそか)のボブ・サップ戦と思う人もいるかもしれないけど、違うんです。だってあの試合は自分で納得して試合を受けたわけだし、結果(1R2分58秒、KO負け)は言い訳にしたくない。後悔している試合はいろいろあるけど、一番はWRESTLE―1のムタ戦です。

「Dynamaite!」でサップと戦う曙(2003年12月、ナゴヤドーム)

 確かオファーをもらったのは10日前でした。何がなんだか分からないまま、初めてプロレスのリングに上がることになった。それまではK―1に上がっていたので格闘技の練習しかしていませんでした。

 そこで、すぐに全日本プロレスの道場に行かせてもらい、体づくりをしました。諏訪魔選手に雷陣明選手、カズ・ハヤシ選手や土方隆司選手たちとスパーリングをやり、受け身の練習もしました。

 もちろん時間がなかったから、十分な練習はできていません。でもそれ以上に困ったのは試合当日です。ボクの足は34センチあるので、シューズが間に合わなかったんです。あの試合、裸足で戦ったんですよ、裸足で…。信じられません。それと用意されたコスチュームを見て2度ビックリしました。見た目が格好悪かったんですよ。用意されたものだから仕方ないけど、何か変なカットが入っているし、正直着るのがイヤだった。

本当はプロレスやめようと思ってた

曙はムタとの初戦を思い出したくない一戦に挙げた

 あの変なコスチュームで入場するのは恥ずかしかったなあ。一番思い出したくない。試合はイス攻撃をされたり、シャイニングウィザードをやられて、最後はムーンサルトで負けてしまった。100点満点とは言えないけど、自分なりには頑張れたと思う。できる限りのことはリングで出したつもりでした。

 でも試合中と試合後に、お客さんからのブーイングが聞こえました。みんなは「曙はプロレスに向いていない」と思ったからでしょう。そう判断されてしまったことに、やっぱりショックを受けました。試合後は確か「今後もチャンスがあれば」みたいなことを話したと思うけど、本当は「もうやるもんじゃないな…」と思いました。

 この試合を最後に、もうプロレスは辞めようと思っていました。でも武藤敬司さんが話をしてくれて、その後は全日本のリングに上がることになりました。そう考えると、あの試合があったからこそ親方(武藤)と出会い、いまの曙があると思うんですよ。いつかまた、親方と一騎打ちをしたいです。

※この連載は2009年4月から10月まで全14回で紙面掲載されました。東スポnoteでは写真を増やしてお届けする予定です。

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