日本選手権連覇のロコ・ソラーレ 「ゾンビ」が「女王」になった!
2月5日に幕を閉じたカーリングの日本選手権(北海道・アドヴィックス常呂カーリングホール)は、北京五輪女子銀メダルのロコ・ソラーレ(以下LS)が2年連続4度目の優勝を果たした。各チームが難敵の壁を崩すべく奮闘した一方、LSは勝負どころで圧巻のパフォーマンスを披露。その戦いぶりは、まさに〝女王〟の名にふさわしかった。
徹底包囲網を〝ゾンビゲーム〟で突破
決して絶好調ではなかったと思う。しかし、要所で底力を発揮するのがLSの強さだった。
「今季たくさんのゲームをこなしてきた中で、身につけた『ゾンビゲーム』がある。私たちは前半が良くなかったとしても、アイスをしっかり読んで後半にベストパフォーマンスに持っていくことを何回も練習した」
こう話したのは、サード・吉田知那美だ。各チームが徹底したLS対策を講じ、1次リーグでは北海道銀行とフィロシーク青森に敗戦。1次リーグで2敗を喫したのは、スキップ・藤沢五月が加入後、初めてのことだった。
カーリング関係者が「特に女子のレベルは年々高くなっている」と口を揃えるなど、LSといえども簡単には勝たせてもらえない。それは選手たちもわかっていた。今大会のテーマは「グッド・ムード、グッド・テンション」。1月中旬にはワールドツアーの世界最高峰・グランドスラムの1つであるカナディアンオープンで、男女を通じて日本勢初のグランドスラム制覇を達成したばかり。疲れが全くないと言えばウソになる。だが、藤沢によると、ジェームス・ダグラス・リンドコーチから「チーム全員が良い雰囲気、そして良い緊張感のバランスが試合前からできていて、そういう雰囲気でこの日本選手権も臨んでほしい」とアドバイスをもらい、当テーマを設定。大会期間中はどんな場面でも〝LSらしさ〟を貫いた。
転んでも笑顔
1次リーグの北海道銀行戦で藤沢が、東京都協会戦ではセカンド・鈴木夕湖が転倒。トップ選手らしからぬ事態に見舞われても、鈴木は「厄年全開でいってしまった。全部を厄のせいにして、厄を笑いに変えることを今季の目標にしている。ハプニングが起きたら全部笑いに変えようと思っている」と満面の笑み。
さらに、吉田知があえて藤沢の転倒シーンに言及するシーンも。カーリングを題材とした映画「シムソンズ」に酷似していると切り出した上で「加藤ローサちゃんが初めてカーリングをやって、滑って転んでストーン(石)を投げるシーンがあるんですけど、シムソンズの加藤ローサちゃんみたいな転び方だった」とニヤリ。「さっちゃんはちょっと落ち込んだと言っていたんですけど、私たちはかわいいなと。あれがLSのMVPシーンだったと思う。すみません(笑い)」といじり倒したところ、藤沢も照れ笑いを浮かべていた。
このブレない姿勢がLSの魅力の1つ。プレーオフの中部電力戦は、第5エンド(E)終了時点で2―4とリードを許す展開。それでも、第6Eに1点を奪って流れを引き寄せ、第7、8、9、10Eに不利な先攻で1点ずつスチールし、7―4で勝利を収めた。決勝のSC軽井沢クラブ戦は、第3E終了時点で4―0とリードを広げる。中盤以降は猛追に遭うも、焦ることなく逃げ切り、7―5でチーム史上初の連覇を達成。
吉田知が「日本での試合だけど、日本語の大きな声で必要なコミュニケーションを取ってやってきた。コミュニケーションを取れれば、どんなショットでも決めやすくなるので、チームとしていいショットを決められてよかった」と振り返るように、最後まで笑顔と会話が途切れることはなかった。
世界選手権初の金メダルへ
今大会の優勝を受け、銀メダルを獲得した2016年大会以来となる世界選手権への出場が決定した。藤沢は「日本選手権や五輪と違う緊張感があるし、メンタル面はもちろん、フィジカル的な強さも求められる。初出場から7年経って若さはないかもしれないけど、それ以上に経験がメリットになると思う。たくましく成長した姿を見せたい」ときっぱり。初の金メダルへの期待は高まるばかりだ。
日本カーリング界の歴史に新たなページを刻み続けるLS。モチベーションが落ちてもおかしくないはずだが、心配はいらない。吉田知は「私たちは勝つことを目標に設定していない。勝つことをゴールにすると絶対に終わりが来るけど、私たちは成長を目標にしているので、勝ち続けることができるし、成長し続けることができる」と頼もしい言葉を残した。
果たして次はどんなストーリーを描いてくれるのか――。LSの旅路はまだ序章にすぎない。(運動2部・中西崇太)