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三遊亭圓丈が40年前に語っていたオトーサンのための〝国民の祝日〟改革案

※当コラムには、今日の人権感覚に照らして性的または差別的表現ととられかねない箇所が散見しますが、執筆当時の時代背景を考え、また著者が故人であるという事情を鑑み、原文ママとしました。

祝日は全部ワシら父親のために変えるべきなんだ

 たしか6月17日が父の日だったネ。俺も一応、女房、子供がいるから父なんだけど、父としては不満だヨ。だいたい父の日が、ナンで日曜日のついでにやるの? ナンで祝日にせんのヨ? ナンでトルコ(注1)やノーパン喫茶は、父の日にタダでやらせないの? 子供の日、なんか遊園地はタダだぜ!


注1)現在の「ソープランド」。1960年代後半から性風俗店としての「トルコ風呂」は広く使われるようになったが、日本に滞在するトルコ人の憤慨を呼び起こし、駐日トルコ大使館が抗議したこともある。トルコ人留学生だったヌスレット・サンジャクリ氏が再来日した84年に渡部恒三厚労大臣に直訴して改名運動を活発化。84年12月19日に新たな名称「ソープランド」が東京都特殊浴場協会によって発表された。

2003年に閉園した遊園地「甲子園阪神パーク」(1984年)

 トルコなんかタダでさせたら、きっとNHKのニュースでも大きく取り上げて「今日は父の日で日曜日とあって、歌舞伎町のピンク街には5万人の父が行き交い、心のこもったピンクキャバレーのホステスやフルート演奏のサービスや、トルコの泡踊りのサービスに、お父さんは目をうるませていました!」なんてのが出るヨ。

 このトコロ、母のほうはくれない族(注2)なんてツッパッているけど、一方の父は、たたかれ族だネ。〝女房から前戯でたたかれ、本番でたたかれ、男はたたかれてインポになるんですな!〟って感じでアワれすぎるヨ。


注2)1984年の「新語・流行語大賞」の銀賞にも選ばれた言葉。同年の大原麗子が主演したドラマ「くれない族の反乱」(TBS)から生まれた。くれない族とは「〇〇してくれない」という不満を持った主婦を指す言葉で、「愛してくれない」「わかってくれない」など責任転嫁、他責思考が目立つとされる。

大原麗子(1984年6月)

 だけど、今の日本を支えてんのは、働きもしないで文句ばかりいってる、くれない族でもなきゃ、原宿あたりをチャラチャラしてるジャリどもじゃない、ワシらたたかれ父族だぜ。

 トコロが、その父親の実態は悲惨だね。平日は働いて日曜は、家族サービスだもんネ。

 オレは、祝日は全部ワシら父親のために変えるべきなんだ。子供の日なんか、いらん! あの日は「子どもをつくる日」と変えてしまえ。もちろん、女房以外と子供をつくる日という意味だぜ。

 それから敬老の日なんかいるかッ! 年寄りは平日の昼、ゲートボールしてりゃいいんだ。

 ワシらのためにケーローじゃなく、ソウロウの日を作れ――! 仕事でついつい疲れ、ソウロウになったチンチンをやさしく女子大生にカイホウしてもらう日にしろッ!

 体育の日なんてくだらんモンは、ヤメちゃえ。体位の日にしろ! どっかの運動場を借りて、四十八手の大きな絵をかいて、5000人のギャルと父がやりまくる体位の日! モチロン、タダで! どの祝日の場合も必ずタダでやらせる! これが最低条件だ。

 それから愛人誕生日も作れ! これは愛人が出来た日を愛人誕生日とする! この場合は、女の愛人が父に金を出す。これが最低条件だ。

 そのほかにもオメコ感謝の日、スケベエ記念日、クリスマスはクリトリスの日にして、モミの木に陰毛を飾ってお祝いをする! モチロン、タダだ。

 エーか、ワシら父をバカにすんなヨ。チャント祝日にせーえヨ。コラッ、ヤイッ、中曽根、聞いとんのか!

中曽根康弘首相(当時)と蔦子夫人(1984年3月)

※このコラムは1984(昭和59)年6月28日付、東京スポーツ紙面の「日替わり面白エッセイ」を再掲したものです。


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