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カズ・ハヤシ「食いたくなったら食う。行きたくなったら行く。お金もためない!」【豪傑列伝#24】

 カズ・ハヤシは、マット界きっての食通である。プライベートでは「特にやることもない」というほどの無趣味人間だが、デビュー時から続けているのが“弾丸グルメツアー”。思い立ったら日帰りで日本全国を食べ歩いている。

 プロレスと切っても切り離せないのが地方巡業だ。だからこそ、レスラーは各土地のおいしいものを知り尽くしている。特にカズは自ら「舌が肥えてる自信はある」と豪語するほど。人並み外れた食べ歩き経験がその自信を支えていた。

【カズの話】そもそもは「レスラーだったら豪快なエピソードが必要」ってことで何かネタになるものを作ろうとしたんだ。で、考えたのが「全国どこでも日帰りでメシ食ってくる」というヤツ。19歳か20歳の時はそれが豪快だと思って、最初は金沢までカニを食べに行ってその日に帰ってきた。カニのリッチ感が豪快かなって。

カズは日本地図を手に弾丸ツアーのプランを練っていた

 今では当たり前のように旅行代理店が“弾丸ツアー”を組んでいるが、当時は珍しかった。とにかく日帰りが絶対条件のため、現地滞在時間は食事を含めて平均2~3時間。つい先日は「どうしても生ラム肉が食べたくて」と思い立ち、ジンギスカンを食べるため、飛行機に飛び乗った。羽田から新千歳空港まで往復約2時間、札幌では食事の1時間だけ滞在し、計3時間強で東京に帰ってきた。

【カズの話】基本的に公共の交通機関を使う。御殿場までチャチャっとソバを食いに行ったりするとか、近場は車を使うけど。その時に食べたくなった素材によって場所も思いつくから、とりあえず新幹線か飛行機に飛び乗るパターンかな。1人で行くから現地の食事代はそれほどかからない。それに、高級品を食べることが目的じゃないし。今の時代、いいもの食べるだけなら東京でも十分。現地に出かけていくことが目的だから、交通費の方が全然かかってる。JAL(日本航空)もよく使っていますよ。全国を飛び回って日本経済の活性化に一役買っているわけです(笑い)。

 この十数年間で費やした交通費は「何百万円では利かない」ほど。しかし、滞在時間が極めて短いため、写真やお土産など思い出の品は何も残っていない…。

【カズの話】思い出はオレの舌と頭に残っていれば十分。形に残るものを求めているわけじゃないし。今、何を食いたいか? 沖縄の石垣島にすっごくうまいラー油があるんだけど、それでギョーザを食いたい。ギョーザがなければ、ご飯にラー油をかけただけでもいいな。あと青森・八戸のせんべい汁。せんべい汁は昔、八戸の途中まで行ってあきらめて帰ってきた。石垣島は、今のところ思いつきとタイミングがなかなか合わないんだよなぁ。

武藤敬司(左)とチャイニーズレストランで食事を済ませるカズ。海外で贅沢は言えない(2000年7月、米サウスカロライナ州チャールストン)

 デビュー当時、レスラーらしいエピソードを作るため意図的に始めたことが、今やカズのライフスタイルに影響を与えているというから、人生分からない。

【カズの話】今になって思うのは「ためない」人生って理想的だよ。食いたくなったら食う。やりたくなったらやる。行きたくなったら行く。お金もためない!

 カズがオススメする日帰りグルメは「肉なら北九州市のハンバーグ(注・名店があるらしい)、北海道のジンギスカン。魚なら下関のフグ」とのこと。全日ジュニアの第一人者は今日もうまいものを求めて、日本のどこかを飛び回っているのだ。

※この連載は2009年4月~2010年3月まで全33回で紙面掲載されました。東スポnoteでは当時よりも写真を増やしてお届けします。


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