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「かわいいだけじゃだめなんだ」

こんにちは!レース部の栗栖歩乃花です!

1年間というのはあっという間で、あと2か月で入社して1年が経とうとしています。前回は勢いでアドマイヤベルちゃんへの愛を語ってしまい失礼しました!本当は2週間前に帰ってきたベルちゃんの様子を書きたいと思っていましたが、その思いをグッと抑えます(多分抑えられません…笑)。それでは今回も栗栖のnoteにお付き合いください!

「かわいいだけじゃだめなんだ」

そう言ってくれたのはベルちゃんを管理する加藤征調教師。

最近〝かわいいだけじゃだめですか?〟というCUTIE STREETさんの歌がはやりましたが、競走馬はかわいいだけじゃダメでした。私はベルちゃんのことが大好きなので、姿を見るとついつい「かわいい」とつぶやいてしまいます。当たり前ですがカワイイだけでは勝てないのです。競走馬の世界はとても厳しい世界だと感じています。JRAで勝利を飾れるのはサラブレッド全体の約3頭に1頭だといいます。

ある日突然、怪我をすることもあるのです。以前レース前に取材していた馬が帰ってきたら骨折していたことがあります。それはブラックジジ(牡3・菊川)くん。

ブラックジジと菊川正達調教師(2024年8月、美浦トレセン、カメラ=国分克彦)

昨年10月26日の2歳未勝利(新潟ダート1800メートル)で3戦目にして勝利をつかんだのですが、翌週の水曜日、菊川調教師のところに「おめでとうございます!ジジ!よかったです!」と伝えに行くと「骨折してしまったんだ」と一言。元気に走っていたから当然、怪我をしているなんて思ってもいませんでした。ジジくんは全力で頑張って、頑張りすぎてしまったようです。幸い、大きなものではなく6カ月の休養を経て戻ってくる予定ですが、常に命を懸けて戦っている競走馬やジョッキーには頭が下がります。もちろん週中の調教時にも「何も起こりませんように」と思うことが多いですが、週末の競馬開催日には1レース1レース「無事に終わってよかった」と感じるようになりました。

東スポ杯2歳Sを制したガストリックと三浦皇成騎手(2022年11月、東京競馬場、カメラ=国分克彦)

治療をして復帰してくる馬もいますが、怪我が治らず引退という場面にも立ち会いました。2022年の東スポ杯を勝ったガストリックは屈腱炎という病と闘いました。当時管理していた上原博調教師は「不治の病」と呼ばれていたんだと教えてくれました。それほど完治することが難しいということ。そんな病があることを教えてくれたのがガストリックなのです。

1年7カ月の休養を挟み挑んだ昨年の関越Sでは7着。その後のケフェウスSでは9着と頑張っていましたが、屈腱炎が再発してしまい引退しました。どれだけ、競走馬としての能力があっても怪我にはあらがえません。これからまた重賞制覇に向けてと頑張っていた矢先とても悔しい結果となってしましたが、今は乗馬園で屈腱炎の良化を待ちながら乗馬になるために頑張っています。

競走馬登録を抹消されたガストリック(2024年11月、美浦トレセン、カメラ=国分克彦)

そしてどれだけ頑張っていても勝てるのは1レースにつき1頭だということ。取材をしていていつも「本当はみんなに勝ってほしい!どの馬にも1番を!」と思います。それでも1頭しか勝てないのです。だから、取材した馬が必ず勝つわけではありません。でも馬は頑張って帰ってきているのです。翌週も厩舎に行ける時間があればお邪魔させていただいて、レースを振り返ったコメントをいただきつつ、馬には「頑張ってたね。見てたよ。私の中では1番だったよ」と伝えています。「たまには〝調教頑張ったで賞〟とか〝かわいいで賞〟とかいろんな賞があればいいのにね」なんてカメラマンと話したこともあります。

ですがやっぱり「かわいいだけではだめ」。間違いありません。
勝つために日々苦しいトレーニングを積んでいるんですから。

たくさんの人の思いが詰まった1戦1戦を皆さんに分かりやすく丁寧に発信していけるような競馬記者になれるように、2年目も頑張っていきたいと思います。(レース部・栗栖歩乃花)


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