NETFLIXを一度も見たことない東スポ記者がもしもNETFLIXの戦略を学んだら
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NETFLIXを一度も見たことない東スポ記者がもしもNETFLIXの戦略を学んだら

ネット利用時間がテレビ視聴時間を超えまして…

最近テレビ見てますか? 私が今年一番見たテレビといえば、夕方のニュースに流れる新型コロナウイルス感染者数の速報です…。東スポの編集局にはテレビが並べて置いてあり、各局から一斉に「東京都は●日、新たに●人が新型コロナウイルスに感染していることを発表しました」と流れる光景は日常になり過ぎました。幸いなことに感染者も減少してきましたが、増加の一途をたどっていた時期には日々暗澹たる気持ちになり、「見てください!この大きなカニ!」のテレ東さんが恋しくなったこともありました(お腹が空いていたのかも)。

さて今日はズワイガニではなく、総務省情報通信政策研究所が今年8月に発表した「令和2年度情報通信メディアの利用時間と情報行動に関する調査報告書」を見てみましょう。漢字だらけで難しそうな資料ですが、要点だけまとめますのでご安心を。13~69歳までの男女1500人を対象にして、①インターネット上のメディア、②テレビやラジオなどの情報通信メディア、③新聞、雑誌などの活字メディアの利用実態を明らかにする調査です。

注目すべきは、平日における全年代のネット利用時間が168.4分と過去最高になり、テレビ視聴時間(リアルタイム)の163.2分を初めて上回ったところです。2012年の調査開始以降、テレビは微減傾向でしたが、インターネット利用時間は2倍以上に伸びているのです(ちなみに新聞は16.1分から13.4分にわずかに減っています。短っ!!)。以下のグラフのように世代別で見るとさらに顕著な差がありますよね。

メディア平均利用時間のグラフ

そんな中爆発的な成長を遂げているのが、NETFLIX、Hulu、dTV、Amazon Prime Videoなどオンデマンド型動画配信サービス(いわゆる定額制動画配信でSubscription Video on Demandの頭文字をとってSVODとも言われます)で、調査によると10~30代の利用率は50%を超過しているそうです。ぶっちゃけ全年代の80%超がYouTubeを利用していることよりも、若い人の2人に1人が有料動画をサブスク利用していることに驚きませんか? 私はユーチューブはよく見る(週に3~4回)のですが、「どうせ有料動画をじっくり楽しむ暇なんてないよな~」という諦めと家計を気にしてサブスクには二の足を踏むタイプです(二軒目には喜んで行きます)。

しかしながら「NETFLIXってすごいよ」という声は4年近く前から聞いていました。さらに東スポで連載してくださっている女優・川上奈々美さんからも「私が出演してるとか関係なく、『全裸監督』は見なきゃダメでしょ!」とまで言われていたのに…すみません、まだ見てないんですよね(※ちなみに川上さんはシーズン1の第4話に出演されてます!)。

川上奈々美

『全裸監督』で役者魂に火がついた川上奈々美さんは22年にセクシー女優を引退。今後は女優の「川上なな実」としてハリウッドを目指す(21年8月)

『全裸監督』のヒットは〝必然〟だった!

完全に記者失格の恥ずかしいエピソードなのですが、そうこうしているうちにネットフリックスは全世界に有料会員を2億人も抱えるほどまで急成長しておりました。で、本屋さんに『NETFLIX 戦略と流儀』(中公新書ラクレ)という本が並んでいたので思わず手に取った次第です。

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著者の長谷川朋子氏は、NETFLIXの戦略には「ネットファースト展開」「ユーザー第一主義」「ローカル発グローバル」の3つがあると説明しています。なかでも私が驚いたのが、3つめのローカルに対する戦略性で、NETFLIXはライバルのAmazonの3倍もの現地語コンテンツを制作しているという点です。

ハイパーローカル戦略は、現地の出演者が現地語で語る現地ならではのストーリーを作り出すことと解釈できる。ローカルの視聴者は自国のローカルコンテンツをより好む傾向がある。ローカルの視聴者を納得させることを前提に、全世界同時配信を可能にした環境も生かした上で、ハイパーローカルコンテンツを提供するのがネットフリックスというプラットフォームの強みなのである。(42ページ)

つまり、村西とおる監督の半生を描いた『全裸監督』はたまたまヒットしたのではなく、計算されたヒットだったというわけです。本書では全裸監督以前に日本初のNETFLIXオリジナルドラマ『火花』や地上波から派生した『テラスハウス』や『深夜食堂』などがじわじわと市場を温めていたことについても詳しく記されていて面白いです。温めて温めて温めて、ついに火がついたところが『全裸監督』だったようです。

ネットフリックスには『ナルコス』という、80年代のメキシコを舞台に麻薬戦争の裏側をあぶりだす実話をベースにした大ヒット作品があり、こうした裏社会の歴史ものは人気カテゴリーのひとつでもある。『全裸監督』も、ダークヒーローや負け犬を意味する典型的な「アンダードッグ」物語である。バブルの時代に欲望と金にまみれて崩壊していくアダルトビデオ業界ビジネスドラマとしてもじっくり味わえる。(81ページ)

もしも東スポがNETFLIXの戦略を取り入れたら…

戦略とデータに裏打ちされていたヒットだなんてすごい、感心するしかない…。でもそれだけでは芸がなさすぎるので、NETFLIXの3つの戦略が東スポにどう応用できるのか勝手に考えてみました。

1.ネットファースト展開
以前は記事が紙面に載ってからネットで配信という流れでしたが、社内で見直しがあり、現在は出せるものは即時ネット配信が定着しています。ネットに先出しすることで、新聞の販売に影響が出るのではないかと懸念されましたが、ネットによる売り上げが大きく伸び、全体でプラスの効果をもたらしています。

2.ユーザー第一主義
これはおそらく、東スポでしか読めないオリジナル記事がどれだけあるかということになるかと思います。パッと思いつくのは岡本記者のプロレス記事。新日本プロレスの人気レスラー、グレート―O―カーン選手の試合結果によって極端にテイストが変わり、非常に強い中毒性があるとコアなプロレスファンから大好評なんです。しかし、すべての記者がこのような原稿を書けるわけではありませんから、オリジナル記事の増加には我々記者のレベルアップと有望な人材の積極採用が欠かせないでしょう。

3.ローカル発グローバル
オリジナル記事が増え、さらにクオリティーも上がれば、翻訳された記事を世界同時にネット配信することも技術的に可能になるかもしれません。目指せ世界の東スポ!

ただ私がより身近なヒントだなと感じたのは日本を世界の中のローカルと見なすのではなく、日本の中のローカル、つまり〝地元〟に目を向ける記事です。我々記者が「これはローカルすぎるネタだから書かなくていいや」と諦めずに書いてみる。既存のニュースバリューから少しだけ幅を広げて書いてみる。何だか仕事を増やして自分の首を絞めているような気もしますが、新聞業界の異端児としてやらなきゃいけないような気もします。

あ、机上の空論にならぬよう、NETFLIXも見てみます!(デジタル・事業室 森中 航)


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