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あのエンディングの史実は?アニメ「ウマ娘」を「東スポ」でおさらい

 アニメ「ウマ娘」への伴走を続けている当note。前の週の史実を「東スポ」紙面と写真を使って振り返ることで、最新話がより面白くなれば幸いです。さらなる飛躍を目指すキタちゃんことキタサンブラック、悲願のGⅠタイトル、サトノ家の悲願に向けてクラシックに挑むダイヤちゃんことサトノダイヤモンド。リアルはどうだったのでしょう。(文化部資料室・山崎正義)

キタちゃん

 菊花賞を勝ち、有馬記念で3着。さらなる飛躍を期待されたキタサンブラックが自らの決め手不足に悩むシーンから始まったのが先週の第4話。確かに史実でも古馬初戦の大阪杯(まだGⅠではなくてGⅡ)で、逃げて2着に敗れています。

 このレースから鞍上を任された天才・武豊ジョッキーが絶妙なペースで逃げたものの、勝ち切れず…実際のところは、武豊ジョッキーのスローペースを見越し、差し馬・アンビシャスを2番手につけた横山典弘ジョッキーのファインプレーに敗れたのですが、決め手がなさそうなのは分かりました。というわけでアニメでは猛特訓が始まり、そこにスペシャルコーチとして登場したのがミホノブルボンです。いや~、いたんですね、こんな適役が(笑)。血統も地味で短距離向きだったのに、栗東トレーニングセンターの坂路で鍛えまくり、〝距離の壁〟を次々とクリアしていった名馬です。2歳の頃から、通常1日に2~3本登るのが普通なのに4本!

 練習はウソをつきません。戸山為夫調教師自らが「根本はスプリンター」と口にしていたのに、2000メートルの皐月賞を完勝。

 400メートル伸びたダービーも2着に4馬身差をつけて逃げ切ります。

 で、秋になってさらに鍛えられたブルボンは3000メートルさえもこなすのです。最後の最後にかわされて三冠は逃しましたが、見事なレースぶりでした。

 ブルボンを破った生粋のステイヤー・ライスシャワーが今回のアニメでキタちゃんのトレーニングに料理係で参加しているのも競馬ファンにはたまりません。で、キタちゃんは1か月の合宿を経て、天皇賞・春に向かったのですが、驚くことにそのレースの模様はアニメ本編ではなくエンディングの静止画によって明らかになりました。先頭を走るキタちゃん。応援する仲間。さらに、キタちゃんがギリギリ先頭でゴールしたかと思われる画像が現れます。そのとき、キタちゃんと競り合っている外のウマ娘の衣装をご確認できる方はぜひ。史実の天皇賞・春でキタちゃんとハナ差の接戦を演じたカレンミロティックの勝負服がしっかりイメージされています。

 改めてこの天皇賞・春の馬柱をご覧いただきましょう。

 実はキタちゃん、大本命ではありませんでした。そもそもこのレースは主役不在で、前年の有馬記念を勝ち、年明け初戦の日経賞も勝って1番人気に推されたゴールドアクターさえ単勝オッズは3・8倍というビミョーな数字。キタサンブラックもまだ実力を認められていたわけではなく、4・5倍の2番人気で、おそらく有利な最内枠と武豊ジョッキーでなかったら5倍は超えていたはずです。アニメでも登場する3番人気シュヴァルグランが6・4倍で続き、5番人気のサウンズオブアースでさえ10倍を切る8・3倍でしたから、完全に混戦。で、そんな中、キタちゃんは天才に導かれ、またまた絶妙な逃げを見せるのですが、13番人気のカレンミロティックに乗った勝負師・池添謙一ジョッキーがそのペースを読み切り、3番手から直線早々、キタちゃんに並びかけます。

 並ぶどころか交わす…

 キタサンブラックを買っていた人は「ダメだ…」と思ったはず。一度は完全に前に出られました。しかし、ここからがすごかった。

 食らいつき…

 食らいつき…

 差し返すのです。この根性勝利への執念こそ、ブルボンとの猛特訓を乗り越えて培われたものだったと思うと、このゴール前の写真は本当に感慨深いですよね。

ダイヤちゃん

 キタちゃんが特訓半ばでくじけそうになったとき、もう一度立ち上がれたのは、ダイヤちゃんの皐月賞を見たからでした。史実ではあの年、サトノダイヤモンドは1番人気でクラシック1冠目の舞台に立ちました。

 前年の朝日杯フューチュリティステークス(GⅠ)をわずかキャリア2戦で制し、前哨戦の弥生賞で2着だったリオンディーズ、その弥生賞を勝った3戦3勝のディープインパクト産駒・マカヒキとともに構図は3強。ダイヤちゃんも3戦3勝だったとはいえ、きさらぎ賞からのぶっつけ本番でしたからやや不利かと思われたのですが、フタを開ければマカヒキ3・7倍、リオンディーズ2・8倍を上回る2・7倍に支持されたのですから、いかに期待されていたか分かります。しかし、アニメで描かれたように、直線を向いたところで、内から寄られてしまうのです。

 リオンディーズが外に斜行し(降着処分)、4番人気のエアスピネルを弾き、その外にいたダイヤちゃんも弾かれてしまいます。なんとか態勢を立て直して追い込んだものの、結果は3着――

「やっぱりジンクスが…」

 はい、もちろん、そんな声は上がりました。ただ、当時の感覚だとそこまでその声は大きくなかったように思います。正直、ダイヤちゃんはじめ、ゴチャついた人気馬を尻目にディーマジェスティという8番人気馬が強烈なぶっこ抜きを見せており、まともでも勝てたとは思えなかったからです。だからこそ、アニメでもダイヤちゃんは不利を敗戦の理由にせず、こう前を向いたのでしょう。

「実力が十分にあれば覆せたはずです」

「日本ダービーを見てください」

「私の名前はサトノダイヤモンド」

「ダイヤモンドは最上の輝きを放つ至宝。どのような困難にも砕けることはありません」

 さあ、いよいよダービーです。


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