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プロ転向1年で羽生結弦が成し遂げたハンパないことベスト3

「みなさんの応援の力の中で、羽生結弦としてフィギュアスケートを全うできるのが本当に幸せです。プロのアスリートとしてスケートを続けていくことを決意しました」

 2022年7月19日。フィギュアスケート男子で五輪2連覇を達成した羽生結弦がプロ転向を表明。次なる一歩を踏み出した〝唯一無二〟のスケーターを1年間取材してきた中で、衝撃を受けたのは一度や二度ではない。数を挙げればキリがないのが正直なところなので、プロ転向から1年のタイミングに合わせて「印象に残った出来事トップ3」を東スポらしい視点から振り返っていきたい。


第3位 八戸公演のために走った〝羽生新幹線〟

 第3位は昨年11、12月の初単独アイスショー「プロローグ」だ。同11月の横浜公演前に周辺取材を敢行。東京駅では羽生の巨大広告の前で多くのファンは記念撮影を行い、開演前には周辺施設のトイレにも長蛇の列ができていた。「たった1人でここまでのファンを動かすのか…」とすごさを再認識したのもつかの間、同12月の八戸公演は想像を簡単に超えてきた。

 八戸公演の開催にあたって、東北新幹線を管轄するJR東日本は増便を決断。同社の担当者は「今回の羽生選手のアイスショーなど、大規模なイベント開催時は総合的に判断して、増員が見込まれる場合は、このようなケースもある」と説明してくれた。さらに八戸駅には羽生がディズニーの人気キャラクター「くまのプーさん」好きで知られることから、構内で「くまのプーさん」のラベルが貼られた飲料水が販売。ある店員は「羽生選手のアイスショーに合わせて入荷しました。多くのファンが購入してくれている」と反響を語っていた。

 他にも八戸駅構内の観光案内所に多数のファンが並んでいた。窓口の方に事情を聞いたところ「八戸駅にはロッカーがそんなにないので、みなさん荷物を預けに来ていた」と解説。待合室のスペースが狭いことから構内には約60のパイプ椅子が置かれ、多くのファンが一休み。同駅の関係者によると、八戸公演のために設置されたという。

 通常の八戸駅ではありえない光景。大手イベント会社の関係者が「1人で公演を行うのはすごいと思う。ほとんど記憶にないし、スポーツではなおさら記憶にない」と笑うなど、リンク内外で人々を驚かせていた。

第2位 スケーター史上初の東京ドーム公演

 第2位は今年2月に東京ドームで開かれたスケーター史上初の東京ドーム公演「GIFT」だ。昨年12月に東京ドームでの公演を発表後、一部から「本当に満員になるのか」との声もあったが、チケットは完売。当日は3万5000人が来場し、羽生の一挙手一投足を見守った。チケットがない一部のファンも公式グッズを購入するために来場。公演が始まると、会場周辺の施設に移動し、ライブ配信を視聴する行動を取っていた。ちなみに余談ではあるが、公式グッズは事前販売の段階で売り上げが数億円に到達した。

 しかも全国各地の映画館であったライブビューイングでは、地元・宮城の2か所の映画館だけでなく、都内6か所の映画館も満員御礼となった。ある映画館の担当者は「公演開始前から公式グッズを求め、ファンが来場していました」とコメント。映画観賞時には必要ないオペラグラスも夕方の段階で売り切れた。他にもディズニー公式動画配信サービス「ディズニープラス」での国内独占ライブ配信や海外でのグローバルライブ配信(中国本土、北朝鮮を除く)なども通じて、多くのファンが雄姿を見守った。
 
 なぜ、次々と規格外のプランを実現できるのか。別のイベント関係者は「羽生選手は企業や広告代理店から本当に人気が高いです。必ずと言っていいほど、我々の想定する数値を上回ってくれるので」と分析。実際に「グローバルで発信力があるので、中国の大手企業も羽生選手と契約を結びたいと考えている声もあった」との証言を聞いたこともある。

 現場で取材させてもらえたおかげで数々の歴史的事象を目撃してきた。わがままを言うとまだまだ書き足りないのが本音。ただ、字数の関係を考慮して第1位に移りたいと思う。


第1位 仰天の経済効果176億2300万円

 栄えある第1位は「ケタ違いの経済効果」だ。プロ転向1周年のタイミングに合わせ、山口大学経済学部の加藤真也准教授に経済効果の算出を依頼。加藤ゼミの学生と共同でプロ転向1年におけるデータを分析。過大な数字にならないように、10日間かけて丁寧に解析したところ、わずか1年で日本全体にもたらした経済効果は何と約176億2300万円だったのだ。

 アイスショーは1年間で5興行(単独含む)に出演した。チケット収入、光熱費、会場費、人件費、グッズ費、協賛金などを条件によって細かく分類。詳細な数字が不明な部分は類似データと比較して試算したところ、約126億2200万円にも上った。CM・広告は化粧品大手のコーセー社など10本(短期、長期含む)に起用された。CM出演料は年間契約料1本1億円、1クール契約料1本6500万円と仮定。さらにスポンサーからの支援金などを加えて試算したところ、約21億3800万円に。書籍・雑誌・写真集については、販売後2か月の総売り上げを軸に試算。掲載スペースの大きさによって数値を分けるなど、過大評価にならないように調整したとはいえ、単純な売上高は約15億円に及び、人件費なども合わせると経済効果は約28億6300万円となった。

 より細かい数字を集めれば、数字はもっと大きくなるだろう。それでも、ゼミ生の1人は「試算する前は100億に届くか届かないくらいだと思っていた。フィギュアスケートの競技人口は決して多くないので、悲観的に思っていた部分もあったが、いざ分析をしてみると100億の数字には全然収まらなかった」と仰天。実際に数字を出したことで〝ハンパなさ〟はわかりやすく伝わったのではないだろうか。 

早くもプロ1年目が終了した。2年目を迎えるにあたり、羽生は自身のツイッターでこう決意をつづっている。

 たった1年で衝撃の事実が多数明らかになった。2年目はどんな奇跡が起きるのか。不安と楽しみが交差した気持ちになっている。とはいえ、羽生だったら今後も私たちを魅了してくれる。1年間の取材で確信に変わった。(運動二部・中西崇太)

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