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後藤洋央紀 おじいさんの幽霊に一発張り手するも「当たりませんでした…。」【豪傑列伝#17】

 心霊現象に興味を持つ人間は星の数ほどいれど、実際に100か所もスポットを回る度胸の持ち主はそういない。新日本プロレスの荒武者・後藤洋央紀は、そんな男の一人だった。ある究極体験をするまでは――。

【後藤の話】とにかく怖いことが大好きでした。小学校の頃からテレビで心霊現象の特集番組を見ては「俺も見てぇ」って思っていた。それが高じて大学生の時から心霊スポット巡りを始めたんです。

怖いもの知らずの後藤だが、ある超常経験から心霊スポット巡りをやめた….

 “デビュー戦”は愛知県豊田市の旧伊勢神トンネル。トンネルの中に入ってクラクションを3回鳴らすと霊が寄って来るということで有名な場所だった。

【後藤の話】何も起こりませんでした。見たいとは言いつつも、もともと幽霊を信じてなかったんで、ますます恐怖心はなくなりましたね。気付けば心霊スポット巡りを繰り返し、合計で100か所くらいは行った。

 そんな心霊スポット通の後藤でも忘れられない場所が、富山県にある廃屋旅館だ。「肝試しに向かった女性が失踪した」「関係者が自殺した」などというウワサが絶えない恐怖の場所である。

【後藤の話】(国士舘大レスリング部時代の)2000年の富山国体の時に行って、懐中電灯を手に屋上まで制覇しました。確かに雰囲気はあった。やけに涼しいし、歩いてる時も建物の中の遠くから時々「ドンッ」って音が聞こえたりする。でも、心霊現象はなかったですね。

 しかし、そのしばらく後に悪夢に襲われる。ある日、大学の寮で昼寝を決め込んでいた後藤は、急に金縛りにあって身動きが取れなくなった。すると…。

【後藤の話】お経が聞こえてきて、目を横に向けたら白装束の知らないおじいさんが立っていた。「うわぁ~!」って思った後、何とか金縛りから解放され、部屋を出ようとドアの前まで行ったら、横におじいさんが立ってて。ビックリして一発張り手したんですけど、当たりませんでした…。

 転機は突然訪れた。なぜか富山国体の後から左肩を脱臼しやすくなり(01年の)新日入団1年目、練習中に完全に肩を壊してしまい、退団を余儀なくされた。治療も兼ねて地元の三重・桑名に帰郷した時、同期の柴田勝頼が知り合いの(整体の)先生を紹介してくれた。そこで衝撃的な言葉を聞く。

【後藤の話】何も言わないうちから先生が「心霊スポットで遊んでたでしょ? 左肩に幽霊がついてるよ」って言うんです。勝頼も「先生が、原因が幽霊って言うのを初めて聞いた」って驚いていた。肩はすぐに除霊してもらって、それ以来問題ないです。

 この一件以降、後藤は心霊スポット巡りをやめた。新日に再入団してからは上昇気流に乗り、昨夏はG1制覇IWGP王座も遂げた。災い転じて福となす、という最たる例かもしれない。

G1を制覇した後藤は賞金を手に喜んだ(2008年8月、渋谷)

※この連載は2009年4月~2010年3月まで全33回で紙面掲載されました。東スポnoteでは当時よりも写真を増やしてお届けします。


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