見出し画像

空欄にあてはまる日本語を考えなさいって言われたら…

すし(SUSHI)、天ぷら(TEMPRA)といえば日本が世界に誇る和食ですよね。同時に外国の方にもそのまま通じる(英語になった)日本語でもあります。3つめが空欄なので、ここに何か思いつくワードをちょっと想像してみて入れていただきたいのですが、みなさんは何が思い浮かびましたか?

私がなぜこんな質問をしているかというと、最近読んだ本のあちこちに、海外でもそのままで意味が浸透しつつある日本語が出てきたからです。


Karoshi

まずは先日紹介した『疲労とはなにか』という新書。冒頭にこんな一文がありました。

疲労についての研究は日本が世界で最も進んでいる、その証拠に「過労死」は英語でも“Karoshi”のままで通用する、という話が、疲労に関する本にはよく書かれています。

近藤一博『疲労とはなにか すべてはウイルスが知っていた』(ブルーバックス、2023年、3p)

マジかよ…過労死ってそのまま通じるのかと驚きました。でも、「すし・天ぷら・過労死」の3点セットはちょっと格好が良くありません。なんか胸を張れない気がします。

Kaizen&Kanban

お次はこちら。

『日本企業はなぜ「強み」を捨てるのか』の中では、日本式経営がいつの間にかメイド・イン・アメリカになってしまい、再度逆輸入される状況が示されているのですが、こんなくだりがありました。

実際に「経営技術の逆輸入が起こっている」という認識は、日本企業が絶頂期にあった1980年前後の日本企業において中核として働いていたという方には、なかば常識としてとらえられていることもある。そういった方々は、日本の経営技術がアメリカに摂取される場面を自らの目で見てきたためだ。カイゼンという日本語が世界のビジネスシーンにおいて一般的な単語になり、世界語としてオックスフォード現代英英辞典に収録されたのもこのころである。

岩尾俊兵『日本企業はなぜ「強み」を捨てるのか』(光文社新書、2023年、28p)

「すし・天ぷら・改善」もイケるというわけです。トヨタ系列で働いている友人に聞いてみると、「それなら、『改善』だけじゃなく『かんばん』も通じるんじゃないか」と言います。なるほど、必要な物を必要なときに、必要なだけ作って運ぶ仕組みを指す「かんばん方式」もまた世界中でThe Kanban Methodして広く学ばれているのです。「すし・天ぷら・かんばん」、さきほどより悪くはありませんが、おまじないようの何度口ずさんでみてもしっくりきません(苦笑)。

Ninja&Hentai

すし、天ぷらに続くもうちょっと響きのいい言葉が存在しないのか、しばし考えました。

そういえば『人生がときめく片づけの魔法』を世界中でヒットさせた近藤麻理恵さんはお名前自体(KonMari)が片づけを意味するなんて話もありました。ケニア人のワンガリ・マータイさんが広めたMottainaiなんかも当てはまりそうですね。外国の方はNinjaとか大好きですし、日本刀をイメージしたKatanaというすばらしいバイクもありました。あ!エレキギターのエフェクターメーカー「BOSS」では「技 WAZA CRAFT」シリーズが大好評だそうです。

エロの分野でも日本が誇るものがあります。私は東スポが誇る男セン面(=Hなページです)の担当もしたことがあるので、一般の方よりも少しだけエロ知識が豊富なのですが、実は「Hentai」「Bukkake」も世界で通じる言葉です。とはいえ、「すし・天ぷら・変態」の並びは褒められたものではありませんし、誰かに怒られそうなので封印します。

WAGYUMAFIA

少し脱線しましたが、ぴったりなワードを『ウルトラ・ニッチ』という本の中で見つけました。

著者は、ニッポンの和牛を世界へ!をコンセプトに結成された「WAGYUMAFIA」を主宰する浜田寿人氏。ダイヤモンド社の土江さんから献本してもらったのでなんとなく読んでみたのですが、WAGYUMAFIAの命名にかんする記述がとても興味深いものでした。

 ずっと考えていて突然、思い浮かんだのが、「WAGYUMAFIA」でした。これは僕が考えた造語です。先にも少し触れていますが、アメリカでは、ペイパルをやめた人がペイパルマフィアと呼ばれていました。アマゾンをやめた人は、アマゾンマフィアと呼ばれています。
 マフィアというと、昔のイタリア映画のようなネガティブなイメージがないわけではありませんが、ここでは「強い絆を持った仲間」といった意味で捉えられています。ただ、普通に「FRIEND」「FAMILY」といった言葉では、どうにも弱いし、ちょっとニュアンスが違う。そこで「MAFIA」という言葉が使われたのだと思うのです。

浜田寿人『ウルトラ・ニッチ―小さく始めろ!ニッチを攻めろ!』(ダイヤモンド社、2024年、249p)

私はまだWAGYUMAFIAのお店に行ったことはありません(ポテチは食べました!)が、初めて聞いたときから物騒な名前だなと思っていました。ただそれも織り込み済みだったそうで、「ダサいものというのは、わかりやすいのです」と言い切ってしまう潔さに感動しました。あくまで「WAGYUMAFIA」はひとつのワードであって、「WAGYU MAFIA」という二語ではないというのも納得。興味のある方はぜひ本書をご覧ください。

堀江貴文氏と浜田寿人氏(2023年12月)

さて、私は「すし・天ぷら・和牛」が食べたくなってきたので、そろそろ帰ります。(東スポnote編集長・森中航)

この記事が参加している募集

読書感想文

みんなにも読んでほしいですか?

オススメした記事はフォロワーのタイムラインに表示されます!

カッパと記念写真を撮りませんか?1面風フォトフレームもあるよ