【ダイアモンド✡ユカイ×森重樹一 対談・後編】
「レッド・ウォーリアーズ」のボーカル、ダイアモンド✡ユカイと「ZIGGY」森重樹一が日本のロックを語る対談企画。前編ではジュリーとショーケンへの愛を爆発させた2人だが、話はまだまだ止まらない。ロックンロールの本質が何かをとことん語ってくれました。(企画構成=どんぴしゃ世代F)
<前編はこちら>
「アイドル」だけでは語れない新御三家
ユカイ 森重はジュリーのこととなると熱く語るね。研究家気質だからね。
森重 俺は勉強家じゃないから研究ってわけじゃないよ。ただ感覚で「なるほどね、これいいね」って俺の中に入ってくる音楽の、その入ってきた理由を知りたいだけ。ジュリーとショーケンに関しては、なぜ愛されたかの構図をどうしても知りたかった。
ユカイ 研究家だよ。だから「GLORIA」は売れるべくして売れたんだよ。歌謡曲もポップスもちゃんと研究してたから。
森重 歌謡曲を表面的なもので片付けちゃダメだよね。ユカイ君とも話をしたけど、そんなもんじゃないよ。
ユカイ 前回、新御三家の話が出たけど、新御三家も音楽的にはすごいよ。「アイドル」という視点だけでは語れない人たちだよ。
独自の世界を築き上げた郷ひろみ。左は野口五郎、右は西城秀樹
――念のため、新御三家とは1970年代にトップアイドルだった郷ひろみ、西城秀樹、野口五郎の3人のことです。
森重 一人ひとりが今でもすごい。郷さんなんてしっかり独自の世界を築き上げてるものなぁ。
ユカイ 西城さんと野口さんについていうと、実はロックへの強い思いを持った人なんだよ。西城さんはデビュー前にバンド組んでドラム叩いてた人でね。アイドルとしてデビューした後、サポートバンドにギタリストの芳野藤丸さんたちを起用した。後に「SHOGUN」を結成した人。
――松田優作主演ドラマ「探偵物語」(79年)のオープニング&エンディング曲の!
ユカイ そう。藤丸さんは高校時代に米サンフランシスコを放浪して、ヒッピーコミューンにも出入りしていたような、本場を知ってる人でね。ギターがめちゃカッコイイ。
森重 うまいよね。売れっ子セッションミュージシャンだったよね。
1978年後楽園球場で熱唱する西城秀樹
ユカイ 西城さんが「ロッド・スチュワート・アンド・フェイセズ」武道館公演(74年)を見に行った時、前座のジョー山中さんのバンドでギター弾いてたのが藤丸さん。そのプレーを見た西城さんが、後日自ら「バンドをやってほしい」と藤丸さんにお願いした。俺、家に遊びに行って話したこともあるんだけど、西城さんはそういうロック志向の人なんだよ。
――西城さんのライブアルバム「ビッグ・ゲーム’79」を持っているんですが、キッス、クイーン、ロッド・スチュワート、さらにキング・クリムゾンの「エピタフ」まで歌ってて驚きました。
ユカイ バンドメンバーの影響もあったと思うけど、そのラインアップにもロック志向が表れてるね。西城さんは時代が違えば、ZIGGYやレッズみたいなバンドをやっていたと思うよ。
森重 ロックバンドという選択肢がない時代、プロとして歌うなら歌謡曲の歌手になるしかなかった。それで大きな成功を収めたんだからね。今、そのすごさがわかるね。
ユカイ 野口さんも、最近お近づきになって、知れば知るほど驚いた。70年代から卓(ミキシング・コンソール)を自宅に買い込んで、ミックスを自分でしてたんだ。楽器もできるから、自分でドラム叩いて、ギターとベース弾いて、歌も入れて、それを自分でミキシングする。卓までいじれるなんて、こんなオールマイティーなミュージシャン、いないよ。最新の卓も知り尽くしてる。それぐらいすごいの。
ギターを弾く野口五郎(1982年)
――野口さんのそういう側面は全く知りませんでした。
ユカイ よっちゃん(野村義男)がアイドルからギタリストとしてのし上がったけど、野口さんはよりマニアックでオールマイティー。
森重 ラリー・カールトン(ジャズ、フュージョン界の大物ギタリスト)とか、そっちの世界にどっぷりハマって、そういう音楽を作られてた時期もあったね。
ユカイ 野口さん、ギターめちゃうまいからね。
森重 新御三家はアイドルから身を成した人の方法論。ジュリーの方法論は、自身がいたバンド「ザ・タイガース」から来てるから、バンドに置き換えられる。
ユカイ やっぱりさ、ロック=バンドなんだよな。
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