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五輪の性別チェックで医師の父が経験した苦い記憶

 性は生なり!  性の多様性が重要視され、パリ五輪でもアーチェリー、陸上4×400メートル混合リレー、男女混合競歩、柔道混合団体など、男女が力を合わせて競う種目が増えました。けれど、ほとんどのスポーツ競技は基本的に男女で分けられています。いまさらですが、それはどうしてなのか?

混合4×100mリレー決勝で8位の日本。泳ぎ終わりオーストラリアの選手と抱き合う池江璃花子(2024年8月、パリ、カメラ=菊池六平)

 私の亡き父の熊本悦明は「生物学的な男女の運動能力を考慮して公平性を保つため。特に男性ホルモンのテストステロンはスポーツ能力に深くかかわっていて、意図的に筋力の増強のために使用すればドーピングと罰せられる。スポーツ競技での男女の区別は社会的なジェンダー平等論とは別次元の話」と言っていました。

 かつてはセックス・チェックがオリンピックをはじめとする国際スポーツ大会で行われていました。それは医師のいないローカルな地域では、お産婆さんが生まれたばかりの赤ちゃんの外性器をぱっと見て「オチンチンがない」と、その子を女と判定してしまうケースがあったからです。もちろん、本人は女性として成長します。思春期になると、不完全ながらも持っている睾丸からテストステロンが分泌され、体力は平均女性より高く、運動能力にも優れて、スポーツ選手として頭角を現すようになる人も出てきます。

1972年札幌五輪の開会式

 父は1972年札幌冬季オリンピックでセックス・チェックの責任者を務め、女性選手のインターセックス(男性半陰陽)ケースを1例発見し、練習中に転倒したと出場停止するように宣告することに…。その苦い記憶から、「男と女は単純に2つに分けられない」と性ホルモン研究を続けたのでした。

熊本美加(くまもと・みか)医療ライター。男性医学の父・熊本悦明の二女。男女更年期、性感染症の予防と啓発、性の健康についての記事を主に執筆。


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