海外修行中に寝坊して第2試合をメーンにした蝶野正洋【豪傑列伝#1】
プロレス界において「遅刻王・蝶野」の存在を知らない者はいない。毎度のように約束の時間に遅れておきながら、何食わぬ顔で現場に姿を現す横顔には、なぜか風格すら感じられる。そしてまた本人もそれを自覚しているため、余計にタチが悪い…。
笑い事ではない。インタビュー、記者会見、公開練習…。ありとあらゆる行事に遅刻してくる蝶野には、多くのプロレスマスコミが恐怖を覚える。インタビューに何と6時間以上も遅刻をしたという「武勇伝」がささやかれる蝶野には、別名「蝶野時間」と呼ばれる摩訶不思議なシロモノがあり、会社側から蝶野にのみ集合時間が1~2時間早く伝えられているということがある。
そこまで自己分析できているにもかかわらず改善が見られないのは、完全に開き直っているからなのか? 修行時代、オフにドイツに行こうとしたところ飛行機に乗り遅れるなど、蝶野の遅刻は公私にわたっている。さらに決定的なことに、海外武者修行中には試合そのものにまで遅刻、キャンセルしたことがあるという。
反省の色が全然見られないまま淡々と語っていた蝶野だが「遅刻王」返上のメドは立っているらしい。かつては完全な夜型人間だった蝶野も、2006年に待望の第1子が誕生してからは、親として自然と規則正しい生活を送るようになったというのだ。「そりゃ80年代、90年代はひどかったかもしれないけど、オレの場合、10年おきに少しずつまともになってるんだ。2010年にはまっとうな人間になれてるんじゃないかな」と語る蝶野。全プロレス関係者が、そうなることを心から祈っている。
※この連載は2009年4月~2010年3月まで全33回で紙面掲載されました。東スポnoteでは当時よりも写真を増やしてお届けします。