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キレやすいのは高校時代のイジメのリバウンドのせいだ【豪傑列伝#2】

この男が暴走モードに突入すれば、誰も手がつけられない。昨年9月、雷陣明を一時意識不明に追い込み、後楽園ホールに救急隊が駆けつけた“事件”はいまだ記憶に新しい。雷陣の張り手に激高すると強烈なビンタで反撃。気がつけば、意識を失った雷陣の後頭部を何度も踏みつけていた。

【諏訪魔の話】誰もが持っている防衛本能が働いただけだ。でも雷陣がああなった時、本気でムカついていたのは確か。先にアイツのいい一発が入ったからな。そもそもオレに「リングでは相手を殺(や)るつもりでいけ」と教えたのは(自分を全日プロへスカウトした)馳(浩)さんだよ。

2008年9月、非情な攻撃で雷陣を失神させた試合は忘れられない

暴走ぶりは入団後に始まったワケではない。中央大学卒業を控えたある日、レスリング部のコーチを務めていた諏訪魔がとんでもない暴挙に出る。練習中に後輩部員に暴行を加え、この時も救急車が駆けつける大騒動となった。

【諏訪魔の話】そいつはオレが言うことをなかなか思うようにできなくて、イライラしちまった。今思えば、オレが大人げなかった。レスリングは口で教えたぐらいでできるもんじゃない。でも当時は「本当に情けねえ野郎だな!」としか思えなかった。結果的に頭突きとエルボーを食らわせた。そいつは吹っ飛んで後頭部から壁にぶつかった。手足をピクピクさせながら倒れて、床には(直径)1メートルくらいの血の海ができた。さすがに殺しちまったかと思った…。

TARU(左)と本紙カメラマンにも手を出す極悪非道な諏訪魔(2006年8月、新潟)

幸い、命に別条はなく数日間の入院を経て退院。後遺症もなく結婚して平穏な日々を送っているという。ただ、諏訪魔の性根はそう簡単には変わらない。32歳となった現在もささいな出来事でプチ噴火を繰り返す。

【諏訪魔】最近はムカついても人に当たらず、物に当たるように気をつけている。イライラするタイミングはオレでもあまりよく分からねえんだよ。この間も知り合いに「おいしいギョーザの店がある」と紹介されて、車で食べに連れて行ってもらった。でも、オレには全然ウマくなかった。キャベツ入りのギョーザは許せないんだよね。皮の食感もイマイチだった。ウマかったのはラー油だけだよ。

そんな不満を車中でぶちまける諏訪魔に、同乗したカズ・ハヤシ、近藤修司が冷ややかな視線を向けたのは言うまでもない。それにしても、諏訪魔がここまで短気になった原因はなにか? 諏訪魔は高校時代に受けたイジメが原因と分析している。

【諏訪魔の話】オレはもともと荒くれ者に見られるような人間じゃなかった。暴走族に入っていたワケでもないしね。だから先輩に目をつけられてイジメられた。このイジメの“リバウンド”のせいだと思う。人間って極限まで追い詰められると「自己主張しないと潰される」と思うようになる。これはやられた人間にしか分からない。それがいつの間にか、自分の思い通りにならないとカチンとくるようになっちまった。要するに、今キレやすいのはわがままになったせいだろうな。

一方で、理不尽にも込み上げる怒りは諏訪魔にとって不可欠なものでもある。諏訪魔は「なにかにムカムカしていないと練習もできない」と言い切る。諏訪魔の未来はいかに理性を保ち、自分をコントロールできるかにかかっている。

※この連載は2009年4月~2010年3月まで全33回で紙面掲載されました。東スポnoteでは当時よりも写真を増やしてお届けします。

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