「おばあさんでもアイアン・メイデンみたいな音に対応できるのは日本ならでは!」【マーティ×島倉りか対談/中編】
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「おばあさんでもアイアン・メイデンみたいな音に対応できるのは日本ならでは!」【マーティ×島倉りか対談/中編】

 前編にたくさんの「スキ」ありがとうございました。世界的ギタリストのマーティ・フリードマンと昭和歌謡好きで知られるBEYOOOOONDSの島倉りかとの対談はまだまだ続きます。今回、りかちゃんが薦めるのは1980年代半ばに大人気だったチェッカーズ。マーティさんがいつになく厳しめの反応を示した理由とは…。(企画構成・アラフィフ記者F)

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マーティが厳しめの反応…そのワケは?

 ――改めて島倉さんご持参のレコードを見て、気になる人は

 マーティ ん~、聖子ちゃんしか知らないです。

 島倉 チェッカーズはどうですか?

チェッカーズ集合

 マーティ 僕はよく知らないですが、ROLLYさんが詳しかったですよ。この前、ROLLYさんとやってるユーチューブの「ROCK FUJIYAMAチャンネル」で、「うっせぇわ」(Ado)とチェッカーズの曲を強引にマッシュアップしたんです。楽しかったです。

 島倉「ギザギザハートの子守唄」(1983年)ですか?「うっせぇわ」の最初の方に出てくる「ちっちゃな頃から優等生」の部分で、「ギザギザハート――」の「ちっちゃな頃から悪ガキで」を思い出したんです。この歌詞はチェッカーズかなとピンときました。

 マーティ その曲です! よくすぐにわかりましたね。

 ――直後に「ナイフ」が出てくるのも共通してますね。島倉さんが生まれる17年前の曲ですが…

 マーティ よくわかりますね。ROLLYさんと一緒にやったマッシュアップ…(ユーチューブを探す)。これ、見てください。

 島倉(動画を見ながら)すごい! マッチしてますね。

 ――島倉さん、ちゃんとチェッカーズの歌詞に反応してましたね

 マーティ 詳しさにビビっちゃいます(笑い)。でも話がススムじゃん。どういう曲が好きなんですか?

 島倉 メンバーが作詞作曲するようになってからの曲で、「Jim&Janeの伝説」(88年)が好きです。

 ――作詞・藤井郁弥、作曲・鶴久政治。私はリアルタイムで聴いて、いまだに好きな曲です。名曲だと思います。

島倉 この歌詞は80年代の青春のイメージです。私、「ホットロード」という漫画が好きで、バイクに乗っている若い子たちの話なんですけど、昭和ってああいうキラキラしたイメージがすごくあるんです。今にはない文化に憧れてます。

 ――郁弥さんはまさにその「ホットロード」を参考にして詞を書いたそうですね。聴いてみましょう(曲を再生)

 マーティ うーん、時代を感じますね。80年代の日本のポップスは、今より洋楽の影響が非常に大きいんです。この曲もほとんど日本の味がしないです。言い方悪いけど、適当に当時アメリカではやった曲のイメージもらったり、影響されたり、音の作り方をパクったりした感じがあります。そこにちょこっと日本の味が入ってる感じです。

 島倉 そうなんですか。

 ――なかなか厳しい評価です。もう一曲、メンバーが作った「I Love you,SAYONARA」(87年、作詞・藤井郁弥、作曲・大土井裕二)はどうでしょう。これも名曲だと思います(曲を再生)

 島倉 今日聴いてきました。すごくいい曲ですよね。サビのメロディーが好きです。

 マーティ この曲も時代を感じますね。80年代のアメリカンポップスのメロディー、楽器の編成、歌い方です。当時、全世界この音でした。日本の味は僕には全く伝わらない。印象が非常に薄いです。でも当時聴いたら、印象が全く違うと思います。個人的な感想ですが。

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 ――マーティさんのお口に…いや、お耳に合わないですね

 マーティ 日本ならではのおいしさがないからです。今のJ―POPは、すごく“にほーん”です。例えば「うっせぇわ」はメロディーが超日本ぽい。マイナーコードのセンスとか、海外には全くないものです。

 島倉 80年代と今では、音楽の方向性が違うんですね。

初期の曲には〝日本の味〟を感じる!

 マーティ 最近の日本の音楽のセンスって、60年代、70年代ぐらいに戻ってる感じなんですよ。当時の演歌とかポップスとか、ダークなメロディーがあったじゃないですか。このダークさはアメリカ人は味わったことないんです。

 島倉 それが日本独特の“味”につながってるんですね。

 マーティ 日本には民謡とか民族音楽にさかのぼる、悲しい気持ちが出るメロディーセンスがあります。いまのJ―POPはそういうメロディーセンスがはやってると思います。さっきのチェッカーズの曲は、そういうダークさが全くないじゃん。

 島倉 確かに!

紙面掲載5島倉

 ――そう言われると、洋楽っぽいというのがよくわかります

 マーティ 演奏は素晴らしいですよ。これはスタジオミュージシャン?

 ――いえ、本人たちです。特にドラムの故徳永善也さんとベースの大土井裕二さんのコンビは高く評価されていました

 マーティ セッションプロみたいな演奏ですよ。才能を感じます。

 ――中期はマーティさんの好みじゃなかったですが、初期はどうでしょう? まずは初ヒット曲「涙のリクエスト」(84年)です

 マーティ(出だし部分で)これは少し日本を感じます。なぜかというと、50年代のモチーフをその時の最新の音の編成で作るのは、昔から続く日本のやり方です。BEYOOOOONDSの「ビタミンME」も50年代モチーフのポップじゃん。ハッピーなモチーフだから個人的にすごく好きなんですけど、80年代の洋楽にはこのモチーフがあまりなかったんですよ。特にアップテンポは。

 ――サビが心地良くて印象に残ります

 マーティ サビは超日本的です。この曲、いまカバーしても全然違和感がないでしょ?

 島倉 2016年にカントリー・ガールズがカバーしました。

 マーティ ハロプロでやってたんですね。その前に聞いた自作曲は、今カバーしたらちょっと微妙です。

 ――次はデビュー曲「ギザギザハートの子守唄」(83年)。マーティさんが「うっせぇわ」とマッシュアップした曲ですね

 マーティ とても日本的です。メロディーセンスが他の曲と違うと思いません? 軍歌流してるトラックから聞こえてきそうじゃん。このメロディーを譜面に起こすと、昔の軍歌に近いと思います。

ギザギザハート

 ――確かに、郁弥さんは「演歌か」と言ったとか。続いてチェッカーズ最大のヒット曲「ジュリアに傷心」(84年)です

 マーティ これはとても日本的ですね。特にキメです。こういう「ダダダダ」というキメは超日本を感じます。海外ではそんなにキメが入らないですし、合いの手も日本ほどないです。それにしても、不思議だと思いませんか?

 島倉 なにがですか?

 マーティ 最初に聴かせてくれた2曲と、今の3曲、同じアーティストと思えないほど雰囲気が違います。

 島倉 確かに! 気にせず聴いてましたが、言われてみればそうです。中期の曲はアメリカチックでおしゃれ。初期の曲は“キレ”があって耳に残りますね。

 ――初期曲と中期曲の最大の違いは作家です。今聴いた初期の3曲は全て作曲・芹澤廣明氏。作詞は「ギザギザ――」が康珍化氏、他の2曲は売野雅勇氏という、多数のヒット曲を生み出した方々です。では芹澤氏が中森明菜に提供した曲を聴いてみましょう

中森明菜「少女A」の歪んだギターソロは米国ではNG!?

 ――チェッカーズ初期のヒット曲を手掛けた作曲家・芹澤廣明氏は、中森明菜がブレークした大ヒット曲も手掛けています。中森明菜の曲は聴いたことありますか?

 島倉 よく聴いてます。

 マーティ 彼女が(松田)聖子ちゃんの「瑠璃色の地球」をカバーした歌が大好きですよ。聴いて感動しました。とてもすてきで、聖子ちゃんの本人バージョンより若干好きです。

 ――聖子バージョンは1986年(昭和61年)、明菜バージョンは2002年(平成14年)発表です。なお聖子さんのデビューは79年、明菜さんは数々の人気アイドルを生んだ「花の82年組」のひとりです

 島倉 聖子さんと明菜さんって、昭和のころはライバル的な存在で、競い合うようにヒット曲を出してたんですよね。

 マーティ「瑠璃色――」を初めて聴いた時は、まだ日本のことをよく知らなかったから、ライバルだと知りませんでした。ライバルの曲をカバーして、感動的な歌にするのは本当に素晴らしいです。

 ――明菜さんがブレークしたきっかけは、大ヒットした2枚目のシングル「少女A」(82年)。その作曲者が芹澤さんです。聴いてみましょう

少女A



 マーティ この曲、とても日本っぽいです。なぜかというと、最初から20秒以上ギターソロじゃん。ソロ歌手の曲でこんなにギターの存在感があるのは日本だけです。向こう(米国)ではあり得ないです。

82年の中森明菜

 ――実は芹澤さんはもともとギタリストです。作曲家になる前はスタジオミュージシャンとして活躍していました

 島倉 あ、このイントロにはそういう背景もあるんですね。

 マーティ この曲もそうだし、アイドル曲でもよくギターソロが入るじゃないですか。海外の人に「なんで日本の曲はギターの存在感がこんなにあるの?」ってすごく聞かれるんですよ。それにこの曲、ギターの音が歪(ひず)んでるじゃん。これ、アメリカ人として不思議でしょうがないですよ。

 島倉 そうなんですか?

 マーティ 向こうはアイドルの曲に歪んだ音は絶対に入っていません。歪んだ音はハードロックとメタル専門。向こうでは歪んだギターの音はノイズだと思われているんです。残念ですけど。

 島倉 日本ではなぜ受け入れられているんでしょう?

 マーティ これは持論だけど、日本には昔から三味線があったじゃないですか。三味線って歪んだ音が出るんです。歪んだギターの音がアイドルの歌に入ってもおかしいと思われないのは、三味線を通してそういう音に慣れていたからだと思います。遺伝子に刻まれているのかもしれない。おばあさんでもアイアン・メイデンみたいなギターの音に対応できるのは、日本ならではです。

 ――リアルタイムで気にせず聴いていましたが、「少女A」のイントロからそんな日本の特性が読み解けるとは! 島倉さん、「チェッカーズ論1」からのお話、いかがでしたか?

 島倉 チェッカーズの自作曲がアメリカの80年代の曲の影響をすごく受けているというお話だったんですが、自作シングル路線になる直前の曲が「Song for U.S.A.」(86年)というアメリカへの憧れを歌った作品なんです。

芹澤氏と売野氏

左から芹澤廣明氏、売野雅勇氏

 ――作詞・売野雅勇&作曲・芹澤廣明コンビがチェッカーズに提供した最後のシングルです。マーティさんは芹澤さんの曲から“日本”を感じていましたが、芹澤さんは実は洋楽が大好きで、米国に憧れていました。その思いを売野さんが詞にしたそうです

 島倉 そのころの日本人がアメリカに憧れていたことが、歌詞からも曲への影響からもわかるって、後から聴く私たちにはとても興味深いです。歌が時代を包んで今に届けてくれてますね。(後編につづく)

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しまくら・りか 2000年8月20日生まれ。東京都出身。19年にBEYOOOOONDSとしてデビュー。ユニットCHICA#TETSUのメンバー。最新シングルはオリコン初登場1位の「激辛LOVE/Now Now Ningen/こんなハズジャナカッター!」。
マーティ・フリードマン 米国・ワシントンDC出身のギタリスト。1990年から2000年までメガデスに在籍。04年から拠点を日本に移し幅広いジャンルで活躍している。「紅蓮華」などをカバーしたアルバム「TOKYO JUKEBOX3」が発売中。


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ありがとうございます
東京スポーツ新聞社の紙面で過去に掲載された連載がまとめて読めたり、ココだけしか読めないコンテンツがあったりします。できる範囲で頑張ります。