TikTokで話題沸騰の恋愛小説を読んでみた。
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TikTokで話題沸騰の恋愛小説を読んでみた。

企画趣旨

他紙とは違う切り口が求められる東スポ記者はどんな本を読んでどんな発想をしているのでしょうか? そんなテーマで始めた「東スポ読書部」ですが、前回の赤メガネ記者が〝超大作〟を書き上げたもんだからハードルが上がり過ぎてしまったようです…(でも先輩、ありがとうございました!)。東スポ記者なら誰もが落語を書けるわけではありませんのであしからず。というわけで、今回は言い出しっぺの私みずから読書ログを書き連ねます。(デジタル・事業室 森中航)

TikTokerの才能にビビる

 noteをご覧のみなさんは動画投稿アプリ「Tik Tok」はご存じですよね? 私は最初、「若い女の子が踊っているのを見て何が楽しいんだ?けっ…」と思っていたんですが、何日か見続けていると面白いことに気づき、1か月も経つと「Tik Tok」の中で流行している音楽を口ずさめるようになり、3か月後にはティックトッカー(=ユーチューバー)の才能に感嘆するようになりました。

 とにかく15秒(複数動画をつなげば最大1分)という短時間で「伝える」ための工夫がすばらしい。音楽はもちろん、カメラワーク、アングル、企画力も化け物なんじゃないかと思う人がゴロゴロいます(踊っているだけの動画もありますが…)。なかでも毎回感心するのが「世界一のゆっけ、」さん(フォロワー約32万人)。お酒飲んでゴハン食べるだけのいわゆる日常ログ中心の動画ですが、たとえばサイゼリヤでマグナムワインを飲む動画にこんなナレーションがつきます。

イタリアン居酒屋サイゼにて/イタリア人のように直球ストレートで白ワインと愛を確かめ合う昼下がり (中略)鉄板の上で熱く焼かれたハンバーグの有り様はコロッセオを想起させる/ハンバーグ界の「グラディエーター」 /トレビの泉追加します~/ローマの休日でアン女王が恋に落ちたあの瞬間と/同じくらいの幸せを享受している気がするぞ/このままオードリー・ヘプバーンになりたい/ピザの斜塔ことソーセージピザ/どストレート垂直なうまさ/この後マグナムの二日酔いで死んだ

 初めて文字起こししたけど、こうして並べて見てもやっぱりワードセンスがすごいですね。白ワインをトレビの泉ってなかなか書けないですよ。もはや「文学」なんじゃないかという気すらしてきます。

恋愛小説はいつの時代もすごい

 前置きが長くなりました。こうして近頃、Tik Tokに感心しきりの私が「何かないかな~」と書店をブラブラしていると見つけました。「Tik Tokで話題沸騰!40万部突破!!涙が止まらない、切ない恋の物語」という帯をつけた文庫本を!

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 普段は恋愛小説を読むことなんてない私ですが、「Tik Tok」を見ている若い人たちが絶賛しているなら読んでみたいという一心で読んでみました。ネタバレは申し訳ないので、文庫本の裏側のあらすじだけを引用しますね。

美容師の美咲に恋をした晴人。彼女に認めてもらいたい一心で、一度は諦めたカメラマンの夢を再び目指すことに。そんな晴人に美咲も惹かれ、やがて二人は恋人同士になる。しかし、幸せな時間は長くは続かなかった。美咲は、人の何十倍もの早さで年老いる難病を発症してしまったのだった。老婆になっていく姿を晴人にだけは見せたくないと悩む美咲は……。桜のように儚く美しい恋の物語。


 おおお、甘酸っぱ~い。背中がもぞもぞするくらいに恋のお話。こんなまっすぐな恋愛小説を読んだのはいつ以来だろう…、と過去を振り返っていたら気づきました。2000年代前半に大ヒットしたセカチュー(=『世界の中心で、愛をさけぶ』)以来ではないかと。

 あの時代にはいまあい(=『いま、会いにゆきます』)もあったし、『恋空』、『Deep Love』に代表されるケータイ小説もありました。若い方はご存じないかもしれませんが、瀬戸内寂聴さんが「ぱーぷる」名義で『あしたの虹』なんて本を書いていましたからね。ヒットした恋愛小説はもれなくドラマ化や映画化などメディアミックスされて、調べてみたらセカチューの映画主題歌は平井堅さんの「瞳をとじて」、いまあいにはオレンジレンジの「」、恋空にはミスチルの「旅立ちの唄」という名曲まで生まれていました。恋愛小説すごい。

「結末がわかっていても面白い」の優位性

 すごいすごい言ってるだけじゃ芸がないので、自分なりに「何がすごいのか」をちょっと考えてみました。先に引用した『桜のような僕の恋人』のあらすじってほぼすべてのストーリーが書いてあるんですよね。「桜のように切ない」って表現は恋人の死の暗喩でしょうから、つまり結末がわかっていても読み進められるという魅力が備わっているのです(※あらすじ読まない人は除きます)。

 そしてTik Tokの世界でも、「世界一のゆっけ、」さんのようにだいたいどうなるかわかっているけど最後まで見てしまうコンテンツに人気が集まっている気がするのです。ある意味「水戸黄門」的というか「暴れん坊将軍」的というか、ついつい目を奪われてしまうあの感じです。逆に「この後、衝撃の展開が…」「まさかのラスト」といった具合に、予測不可能な方向に引っ張るCMまたぎ的な手法はTik Tokにも見られますし、ドキドキハラハラが好きな人もいるのでしょうが、長期的にファンを増やすという意味では後者よりも、「結末がわかっていてもおもしろい」ことのほうが重要なんじゃないかなと思った次第です。

 良かったらみなさんが今、癖になっているティックトッカーをコメント欄で教えてください。

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