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マダムに注意され一念発起!〝昭和マナー〟を修正したジジイ

 各地のマージャン教室や大会に参加している「雀聖アワー」の福山純生氏が、オジサンオバサン、ジジイババアの生態をリポート。「東スポ」で人気を博した長寿連載をnoteでも大公開!

東1局

 コロナ前の話である。御年69。以前勤めていた職場の仲間とゴルフ、からの麻雀。月に2度、そんなゴールデンコースを満喫していたヤマちゃん。骨粗しょう症、排尿障害、前立腺肥大だので、徐々に仲間が集まりにくくなってきたのだが、本人はいたって元気。健康診断では「申し訳ないが、お役に立つことはありません」と医者から謝られたほどである。

 時間を持て余し、悶々としていた折、地元の行政が主催する区長杯麻雀大会の存在を知り、いそいそと参加。得意の攻撃スタイルで、鼻息荒く役牌を仕掛けた矢先、同卓していた50代とおぼしきマダムから「発声してください」と注意された。仲間内でしかやっていなかったので、無発声が癖になっていたのだ。

 素直なヤマちゃんは、詫びた後にバカでかい声で「ポイ!」と発声。すると女性が大笑い。「ポイ!? 牌はゴミではありませんよ」。赤面したヤマちゃんだったが、ここからがすごい。

 マダムに笑われたことで一念発起。我流で覚えてきた麻雀をきちんと覚えようと、生まれて初めて入門書を購入。「ワシら団塊世代ではポイ!かトイ!だったけど、いまはポン!に統一なんだのぉ」と嬉しそうに報告してきた。さらにマナーもきちんと身につけたいと、麻雀教室へ。

 教室の平均年齢は50代で、女性が8割以上。そんな中、強打、引きヅモ等のオーバーアクションから発声まで、ヤマちゃんはあらゆる部分を矯正してのけた。今では教室スタッフとなり、初心者を教える側になっている。

「麗しきマダムのおかげで、改めて麻雀の虜になりました。ワシは65歳で再婚した歌手の布施明と同い年。だから諦めてはおらんのです」

 結婚には縁がなかったと語るヤマちゃん。

「それにしてもあのマダム、薔薇より美しい人だったのぉ」

 再会に想いを馳せ、ヤマちゃんの精進は続く。

発声は忘れずに

東2局

 誰もがトップになれる可能性を残したまま迎えた最終局。

 目下4着は御年73の政吉つぁん。前職は公務員だったが、力士さながらの恰幅のよさから、専務と呼ばれているジジイである。北家の政吉つぁんがトップになるためには、現トップの東家から6400点以上の直撃か、ハネ満ツモが条件。

 政吉つぁんの配牌は、123か234の三色同順とイーペーコーが狙えそうな好配牌。しかもドラの二萬を2枚持っている。どちらかの三色を確定できれば、リーチをした時点で跳満が見えている。

 固唾を飲んだ政吉つぁん。「もらった!」とばかりにほくそ笑み、腹太鼓をポンと叩いた。奥行きのある実に小気味のいい音だ。

 大会では手牌に関連することは言えないが、おならやゲップ等、体から出る音については厳密な規制があるわけではない。しかし、捕らぬ狸の皮算用。70歳を迎えたばかりの南家・ハツ江バアさんの配牌もよかった。2000点以上をアガればトップが見える条件の中、役牌の対子が2組あり、トイトイも狙えそうな配牌。ハツ江バアさんは親の第1打の1筒をポン。親の第2打は1筒をツモ切り。政吉つぁんの123の三色の夢は、あっという間に潰えた。政吉つぁんは悔しそうに腹太鼓をポンと叩いた。しかしまだ234の三色の可能性がある。親の第3打は4筒。これもハツ江バアさんがポン。政吉つぁんは234の三色も厳しいと悟ったのか、腹太鼓をポンポンと2回叩いた。

 そうこうしているうちにハツ江バアさんにテンパイが入り、政吉つぁんが打った白にロンの声。トイトイ白で5200点。腹をポンポンポンと3回叩き、ボディランゲージで心情を表現する政吉つぁん。自慢の腹太鼓は、小気味のいい音色から空虚な悲しい音色に変化したのだった。

◆福山純生(ふくやま・よしき)1970年、北海道生まれ。雀聖アワー主宰。全日本健康麻将協議会理事。健康麻将全国会新聞編集長。好きな役はツモ。


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