アルコールには決して強くはない。しかし、どれだけ飲んでも記憶をなくしたことが一度もない――。“酒豪”でありながら、柔道の頂点を極めた男がいる。バルセロナ五輪男子78キロ級金メダリスト・吉田秀彦だ。現在は格闘技界を支える吉田の意外な一面を探った。
吉田の酒豪伝説は、明治大学卒業後から本格化する。吉田の先輩でバルセロナ五輪71キロ級金メダリスト・古賀稔彦氏らを中心に明大や日体大、日大などの柔道OBで通称「酒遊会」を結成。主な活動内容は柔道の強化合宿のハズだったが…。
驚くべきは、学生時代の吉田は、ほとんどアルコールを口にできなかったことだ。グラス1杯のビールで顔は赤くなり、強烈な睡魔に襲われたという。しかし、先輩の命令には絶対服従の体育会系にあって、特別扱いなど許されるハズもなかった。
苦手だった酒を克服した吉田は、いつしか「酒遊会」の中核メンバーに昇格。合宿中、1日6時間以上にも及ぶ猛特訓に耐えられたのも、練習後の息抜きがあったからこそだ。
当然、泥酔したメンバーがトラブルを起こすことも多かった。路上での喧嘩や、電話ボックスにいた見ず知らずの男性に突然、消火器を噴射した不届き者もいた。吉田自身が身元引受人として警察署に出頭したこともあるのだとか…。それでも、吉田は当事者にならず記憶をなくしたことも一度もないという。
プロ格闘家に転向したとはいえ、吉田は低迷が叫ばれる昨今の日本柔道界が気がかりでならない。最後に吉田は自身の体験を踏まえて破天荒なアドバイスを送った。
※この連載は2009年4月~2010年3月まで全33回で紙面掲載されました。東スポnoteでは当時よりも写真を増やしてお届けします。