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世界一のデブ兄弟がナイアガラの滝で叫んだ【プロレス語録#5】

 2人合わせた体重は600キロ超! 世界一のデブ兄弟として知られたマクガイヤー兄弟(カナダ)。このセリフは、兄であるビリー・マクガイヤーが、新婚旅行先の米国・オンタリオ州のナイアガラの滝で夫人にささやいたものだ。ビリーは同年の5月27日、カナダ・モントリオールの教会でダニエル夫人と挙式。元ショーダンサーであるダニエル夫人の体重は、わずか44キロ。ビリーのわずか7分の1にして、体重差276キロだ。なれそめは兄弟がプロレスデビュー前、クラブでトランペッターをしていた時期に、同じ店でショーダンサーとして働いていたのがダニエル夫人で、そこで2人は体重差を超えた恋に落ちたのだとか。

自慢のおなかで星野勘太郎を圧殺するビリー。彼を超える超アンコ戦士は出てこない

 本紙通信員、そして弟・ベニーの目前でノロケまくるビリーは「ワイフの方から私にラブしたんだよ」「要するにピンピンときたんだよ、ハートに。オレは太っているので心臓までなかなか届かない。やっと2か月前に届いたんだよ。それでプロポーズしたらOKだ」「ワイフが私みたいなデブで、私と同じように大食いだったら破産するよ。ワイフは私の7分の1しか食べないし、ちょうどいいんだよ。エッヘヘ」などと、300キロオーバーの恋愛論&夫婦道を力説する。

食事を楽しむマクガイヤー兄弟(78年6月、サンフランシスコ)

 当時のマクガイヤー兄弟はプロレスの他にトランペッター、シャンソン歌手としても活躍。多才ぶりを発揮しており「まあ私は、1か月の食費の10倍以上は稼いでいるから問題ないんだ。エッヘヘ」と続けている。

 下世話になるが、体重差276キロの“夫婦生活”とは、一体どんな感じだったのだろうか?


 今年5月、ドラディションの藤波辰爾社長が、ウルティモ・ドラゴンの招きで二十数年ぶりにメキシコ遠征を行い、現地でも大きな話題となった。

 これは31年前、メキシコ修行中の藤波と異例の一騎打ちをした直後に“仮面貴族”ミル・マスカラスが思わず吐いてしまった貴族らしからぬセリフだ。この「若造」とは藤波のことだ。

 当時のマスカラスは全日本プロレスの看板外国人選手。一方、藤波はまだ無名の存在だった。4月に米国からメキシコに渡り、レイ・メンドーサ、マスカラスと並ぶ現地の英雄、ドクトル・ワグナーと引き分けた藤波は、現地で一躍、注目の的となる。

1970年代、鮮やかな空中殺法で日本列島をわかせたマスカラス

 藤波の活躍に目を付けたマスカラスが、プロモーターに「あの若いのはなかなかやるな」と言ったことから、6人タッグ戦での対戦が実現。試合はすさまじい大乱闘の末、ノーコンテストに。怒り狂ったマスカラスが一騎打ちを要求し、5月12日、グァナファートで「マスカラスVS藤波」の一騎打ちが実現した。

 結果は意外なことに、藤波がマスカラスの覆面に手をかけ、ロープに首を引っ掛けて殴る蹴るの暴走で反則負け。冒頭のマスカラスのセリフは試合直後のもので「機会があったら、もう一度やる」と続けている。

 マスカラスは藤波戦から約3か月後、全日本プロレスに来日。8月25日の東京・田園コロシアム大会でジャンボ鶴田のUNヘビー級王座に挑戦。名勝負を繰り広げ、この年のプロレス大賞ベストバウトを受賞している。

 藤波が凱旋帰国を果たし「ドラゴンブーム」を巻き起こすのは、この1年後のことだ。

6人タッグでマスカラスを攻める藤波(77年4月、メキシコ・アレナ・トルカ)

※この連載は2008年4月から09年まで全44回で紙面掲載されました。東スポnoteでは写真を増やし、全22回でお届けする予定です。

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