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止まらないっポテトチップス談義!稲田豊史氏と渡辺広明氏の〝2袋目〟

『ポテトチップスと日本人』(朝日新書)を上梓したライター・稲田豊史氏と流通ウォッチャーの渡辺広明氏と白熱スナック談義。紙面では全然収まりきらなかったので、残りのエピソードをを〝2袋目〟としてnote限定で公開します。

シュリンクレーション問題をどう受け止めるか

渡辺広明(以下渡辺) あらゆる商品の値上げが相次いでいる今、カルビーは6月1日納品分から値上げを発表していて、これで店頭で150~160円前後になる見通しです。稲田さんが本書で書いているように、1975年にカルビーは100円でポテチ市場に参入したから価格面では当時の1・5倍になる。2020年を100とした場合の消費者物価指数(持家の帰属家賃を除く総合指数)を見ると、75年は53・8で、こちらは約1・86倍に上がっているんですね。

稲田豊史(以下稲田) はい。でも内容量が変わっているからそれだけでは判断できません。「カルビーポテトチップス うすしお味」は発売当初90グラムだったのですが、現在主流の商品は60グラムと3分の2に減っています。もしも値上げ後の価格で90グラム入っていたと仮定すると、225~240円になるわけで、やっぱり高くなったな~と感じちゃいますよね。数年前のスーパーなら1袋88円とかで買えましたから。

渡辺 だからこそ値段を変えずに内容量を減らすシュリンクレーションを選択する企業が出てくるわけです。「ステルス値上げ」なんて言い方もされますが…(苦笑い)。

稲田 1袋90グラムが当たり前で育った僕らにとっては、60グラムだと物足りないんですよ。ほんとに開けたらすぐなくなっちゃうし、もう1袋開けるほどではないけど、もうちょっと、多分あと30グラム食べたくなっているんだと思います(笑い)。

渡辺 それはまだ稲田さんがまだ若いからじゃないですか? メタボで、脂っぽいものを受け付けなくなってきた僕にとって、容量が同じで価格がアップするより、シュリンクレーションのほうがありがたい。稲田さんもあと10年したら僕と同じこと言ってる気がします。

メタボを気にしている渡辺広明さん

20年前のコンソメパンチを覚えているか

稲田 コンソメにかんしては最近、Wパンチが2003年の発売当時のものと現行品が並んで売っていたので「カルビーも粋なことするな」と思って食べ比べてみたんです。

渡辺 何が違うんですか?

稲田 レシピが全然違うんです! 裏面の原材料名を見ても、2003年はチキンコンソメパウダーしか使ってない。今のコンソメWパンチはチキンコンソメとビーフコンソメの2種類が使われているんです。さらに一番大きいのが、今のコンソメパンチは梅肉パウダーが入っているところ。この梅肉パウダーは割と有名な話なんですけど、昔は使われていなかったんです。

左が期間限定の復刻版、右が現行品(提供・稲田豊史氏)

渡辺 ラーメンのWスープみたいになったわけですね。そして梅肉パウダーともまた日本人らしい「洋食の和食化」と言えそうです。

稲田 僕はこの20年間、Wパンチを食べ続けてきて、味がちょっとずつ変わっていることにはなんとなく気づいていましたが、こうして食べ比べしてみたら、思った以上にまったく違う味だったので驚きました。

渡辺 おお、懐かしい味を覚えていたわけですね。こんな味だった~って脳が思い出すことありますよね。

稲田 そうです。小学生のころとかだったらそういう記憶ってわかるんですけど、20年前、僕もとっくに大人になって食べているものですら、「昔のポテチはこうだった」となるくらい違う。それは逆に言うと、メーカーの努力なんですよね。その時代のメインターゲットの味覚に合うようにレシピをちょっとずつ変えている。

渡辺 若干反論があるとすると、当然企業努力もしているんですけど、会社の中で「そろそろ時代に合わせろ」と言い出す上司がいて、変わった部分もあるんですよ。配合のバランスを微妙に変えるとかは、おそらく正解がない世界だし、場合によっては今のやつより4年前が最高だった可能性もあるわけです(笑い)。

ポテチを語る稲田豊史さん

稲田 新旧Wパンチは、妻と一緒に食べ比べしたんですけど、ふたりとも圧倒的に2003年の味のほうが好みでしたね。「絶対こっちだよね!」って。しかしこの食べ比べ企画は貴重ですよ。極端な話、70年以上前に発売された日本初の国産ポテチ「フラ印」にしたって、今となってはどんな味だったのか検証のしようもないんですから。そもそも今の「フラ印」はカルビーの工場で作っているので、当時とはまったく違う商品ですし。

渡辺 限定商品も山ほどあるからから、多分日本ですべてのポテトチップスを食べてきた人っていないんですよね。

やっぱりNBのポテチを買いたい

渡辺 今、コンビニのスナック売り場はプライベートブランド(PB)が多数を占めていますが、稲田さんはぶっちゃけNBとPBどちらを買いますか?

稲田 NBしか買いません。PBってみなさん安いとか言うけど、何10円の差じゃないですか。ケチんなよ。軽自動車とフツーの自動車ならわかるんですよ。何十万円も違うから。でも食べるものをケチるなって僕は思うんですよね。主食の米もそうです。食事の中で、一番大事なのに、たかだが数百円をケチるなと。いい米食べようよと思って。

渡辺 わかります。僕はティッシュペーパーだったら「鼻セレブ」を薦める。だって100円違うけど、毎日使うものに100円払ったらいいじゃんって思う。(記者の目を見ながら)もう十分酔っ払っているのに「最後にもう一杯」ってレモンサワー頼んだりしてるほうがよっぽど高いんですよ!(笑い)。食品メーカーはNBを陳列して売ってもらうためにPBを作っていますが、PBの味がNBを超えることは絶対にありえません。

稲田 はい。期間限定フレーバーも多いですが、僕はじゃがいもの味をダイレクトに感じられるシンプルな味が好きですね。ほとんど塩で、たまにコンソメです。

渡辺 素材の味を試すならどの商品がいいですか?

稲田 それなら湖池屋の「じゃがいも心地」がオススメです。ポテチ玄人になると、菊水堂の「できたてポテトチップス」を推す人が多いですね。ジャガイモ、塩、油しか使ってないので、素朴の極みのようなポテトチップスです。鮮度にこだわっていて賞味期限は2週間しかありません。

渡辺 マツコ・デラックスが絶賛したことで有名になったやつですね。

稲田 そうです。1953年創業で埼玉県八潮市にある老舗。面白いのが、公式ホームページでも毎回味が違うところを認めているところ。「じゃがいもは、すべて国産で、九州、神奈川、千葉、茨城、北海道から主に仕入、品種は、ワセシロ、トヨシロ、農林一号、きたひめ、スノーデンなどを使用します。その為、一年中同じではありません。特に、産地間の差が大きいようです。 また、調味料を使わないため、味がストレートに出るようです。均一な食感になるよう更に努力致します」と正直に書かれているんです。

渡辺 ニッチな市場を掴んでいるんですね。1箱(12袋入り、3960円)は多すぎるけど、ポテチ好きには喜ばれそう。

稲田 みんなでオススメを持ち寄って少しずついろんな味を食べ比べるポテチ会は楽しいですよ。僕のこの本が生まれたのもポテチ会がきっかけでしたらから、ぜひ渡辺さんも遊びにきてください。(おわり)

note界隈では有名な話ですが、カルビーさんは「THE CALBEE」という公式アカウントでステキなコンテンツを発信しています。とても面白いのでこの機会にぜひご覧ください!(東スポnote編集長・森中航)


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