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「この芸名では100%売れません」と言われた

 じわじわと、確実に、売れ始めているような気がしないでもないドキュメンタリー芸人・コラアゲンはいごうまん。東スポにおける〝実録連載〟を復刻しています。

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 20年前、とあるライブ後のことです。お客さんの一人、自称数学博士のYさんに「報告したいことがある」とお茶に誘われました。そして、温水洋一似のYさんは、当時の僕の芸名「コラーゲン配合マン」という文字を紙に書くと、こう言い切ったのです。

「この芸名では100%売れません」

「これは安っぽい姓名判断じゃない。数学博士として、数字を扱うプロとして、統計学上この画数は100%売れない。しかも80%早死にする

 い、嫌やわ…。

 同席していたワハハ本舗の演出家・喰始(たべ・はじめ)が爆笑しながら打開策を聞くと、Yさん今度は「コラアゲンはいごうまん」と書いて、「この画数なら200%売れます」。200%って何やねん。胡散臭いし断ろうとしたところ、喰さんが「改名します」と即答してしまったんです。

 こうして鶴の一声ならぬ喰の一声で改名したものの、全く売れることなく4年が過ぎたころでした。僕は、驚愕の事実を知らされます。

 あの日以来、久しぶりに楽屋を訪ねてきたYさん。なにやら平身低頭、謝りはじめました。

「気にせんといてください。売れないのは僕のせい。Yさんが弾き出した画数が外れたんじゃないですよ」。

 そう恐縮する僕に、Yさんは言いました。

「違うんです。画数を数え間違ってたんです」

 えーっ! 数学博士が画数を数え間違えるなんてことが…しかも、「コラアゲンはいごうまん」は人を100%不愉快にする画数らしい…。落胆する僕にYさんはこう続けました。

「今からでも遅くない。芸名を白黒鼠(しろくろねずみ)にしてください。300%売れます」

 いやいや、もうええですよ。しまいには「コラアゲンはいごう米(まい)にしたらJAから仕事が入ります」と、クライアントまで絞りこんでくださいました。結局、何度も変えるのもおかしいので現在まで改名はしていませんが、皆さん、不愉快になってませんよね?

 コラアゲンはいごうまん 1969年生まれ。自ら体験した出会いやエピソードで観客に爆笑と感動を与える実録ノンフィクション芸人。お笑いライブに加えて企業、医療、学校等で講演活動中。著書に「実話芸人」(幻冬舎文庫)。

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