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リアカーでダンボール回収業体験 面接合否の仰天基準

 じわじわと、確実に、売れ始めているような気がしないでもないドキュメンタリー芸人・コラアゲンはいごうまん。東スポにおける〝実録連載〟を復刻しています。

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 あんなシュールな面接は初めてでしたわ。ダンボール回収業の体験取材をしたときの話です。

 ご存じない方もいると思いますが、大量のダンボール積んでリアカー引くおっちゃんの姿は関西では日常。聞けば、回収業社の面接に合格した者のみリアカーを貸してもらえて働くことができるとか。がぜん興味が湧いてきた僕は、某回収業社に向かいました。

 面接官の質疑は志望動機でも職歴でもない。若干睨みをきかすと一言。「自分、絶対リアカー返すかー!」。キョトンとしつつ「…返します」。すると「おめでとう」。これで合格か~い! 合否の分かれ目は「借りたら返すか」。しかも口約束。どんな面接やねん。

 というわけで日本一性善説な?面接を経て合格を勝ち取った僕は「古紙、アルミ缶も可」と説明され、午後から電気街に放たれたんですが、これが予想以上に難儀でした。どの店にダンボールをお願いしても「朝出した」「間に合ってる」。意地になって3時間50店以上回るものの、収穫ゼロなんです。

こんな感じでした

 そんな中、精も根も尽き、ここでダメならもう諦めようと入ったのがY車輌(運搬用一輪車等販売)。奥で一人書類に目を通すフジテレビ三宅アナ似の男性に力なく頼みました。「回収業の者ですが、ダンボールいただけませんでしょうか」。すると男性、僕の憔悴しきった顔をじーっと見ると「あるだけ持っていき~」。神や! ついにGETや~!

 そればかりか「新聞も欲しい?」「アルミもいっとく?」。ことアルミ缶に至っては開封前の缶ビールをわざわざ中身出して渡してくれました。素性と体験取材やったことを伝えると「そうかいな。てっきりスランプに陥ったベテランかおもた」。丁重にお礼を言い、店を後にしたわけです。いや~、諦めんかったら誰かが助けてくれるもんやなぁ。回収業社に戻り換金したら965円の稼ぎでした。

 ちなみに内訳は1キロあたりダンボールが9円、古紙やアルミ缶が8円でした。さらににちなみにですが、この回収業社には2年に1度、契約更新があるそうです。聞くんでしょうね、「自分、次の2年もリアカー返すかー!」って。

◆コラアゲンはいごうまん 1969年生まれ。自ら体験した出会いやエピソードで観客に爆笑と感動を与える実録ノンフィクション芸人。著書に「実話芸人」(幻冬舎文庫)。

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