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声を出しちゃいけない場所で!伝説の余興

 自らの体験談を漫談にする唯一無二のドキュメンタリー芸人コラアゲンはいごうまん。芸人だけに、余興の仕事も数多くこなしてきたのですが、とんでもない〝場〟に呼ばれたことも…。

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 年末進行でお仕事がしんどい方もいるかと思いますが、もしそうだとしてもご安心ください。僕なんかもう毎月しんどいです。というわけで、今回はトホホだった余興の話を。

 普通、余興先で多いのは結婚式や遊園地ですが、その日はウソみたいな現場やったんです。20年ぐらい前、当時まだ全く無名の猫ひろし、ウクレレえいじ(芸人)、僕の3人が向かった先は横浜の某サウナ。「こちらがライブ会場になります」と支配人が指さす方を見てア然としました。薄暗い仮眠室やったんです

 館内着を着た数十人のお客さんがリクライニング倒して目にタオルあてて気持良さそうに寝てる…どう考えても迷惑やろ! しかもパンチパーマの人が多い上に、トップバッターが僕でした。

 お金をもらう身ですからやるしかありません。震える足で、切り込み隊長になるべく勢いよく飛び出して「はいどうもー!」。すると1人のお父さんが半目開けてこう言いました。

「兄ちゃん、静かにしぃ~

 もっともや。僕もいろんなヤジを聞いてきましたけど、仮眠室で騒いだら「静かにしぃ~」って、ごくごく当たり前ですやん。

 で、丁重に謝って、声のトーン落としてライブ再開。これがもう、クスッとも笑わん。それどころか目を覚ました人から順に睨まれる中、漫談を10分ですよ、10分。高温の水蒸気を浴びるサウナのロウリュより汗噴き出しましてん。なんとか耐えて僕の漫談終わる頃には全員起床してました。

 で、神は時に無慈悲な演出を好まれるんですね。寝てるとこを起こされたお客さんの怒りが沸点に達した状態で、「猫ひろし! 猫ひろし!」ですから。ついに最前列の男性が「ぶっ殺すぞ!」と。ネタ中もヤジの嵐で「やめろ!」「帰れ!」。年配の方に至っては「日本の恥部じゃの」ときました。まあ、後にカンボジア人になるねんけど。

 もちろん、ウクレレえいじも惨敗。3人肩落として楽屋で帰り支度してたらドアが開かれ、支配人がやってきてこう言いました。

「まもなく2ステージ目になります」

 ウソやろーー! 1回目と2回目の間はわずか15分。同じメンバーが同じお客さんに同じヤジを飛ばされる…ウソみたいなこの余興のギャラは交通費込みの2000円でした。

◆コラアゲンはいごうまん 1969年生まれ。自ら体験した出会いやエピソードで観客に爆笑と感動を与える実録ノンフィクション芸人。著書に「実話芸人」(幻冬舎文庫)。2024年1月24日、東京・内幸町ホールで単独ライブ「〝コラアゲンはいごうまんが語る、笑いと涙の人生劇場〟Vol.5」を開催する。

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