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M-1グランプリ決勝審査員を「やりたくない」と言っていたノンスタ石田の採点が楽しみになってしまった…

いよいよ今週末の22日(日)にM-1グランプリ2024が開催されます。記念すべき20回目のM-1はすでに決勝進出者が発表され、昨年覇者の令和ロマンが史上初の連覇を達成するか注目を浴びています。師走の風物詩となった漫才コンテストを心待ちにしている人も多いことでしょう。

審査員も発表されました。芸能活動休止中の松本人志は参加せず、山田邦子もサンドウィッチマン・富澤たけしも不在。中川家・礼二、NON STYLE・石田明、ナイツ塙、海原ともこ、博多大吉、アンタッチャブル・柴田英嗣、笑い飯・哲夫、かまいたち・山内健司、オードリー・若林正恭の9人という顔ぶれで、アンタ柴田、かまいたち山内、オードリー若林の3人は初めて審査員に選ばれました(文中すべて敬称略)。

ノンスタ石田はM-1グランプリ2015(優勝はトレンディエンジェル)以来、2回目の審査員を務めます。2010年以来5年ぶりの復活となった2015年大会はアンタ柴田を除く歴代チャンピオン9人が審査員となった例外的なものでした。リニューアルされたM-1について石田は著書『答え合わせ』の中でこう振り返っています。

 M-1は、もちろん今でも競技色は強いし、スベるときは容赦なくスベります。ヒリヒリするところも健在だけど、以前とは打って変わって、バラエティ色もかなり強くなっている。
 それが「漫才とは何か」「漫才とはこうあるべし」みたいな感覚からの〝規制緩和〟にもつながって、かつて「じゃんけん大会」だったM-1が、今のような「超多様な大会」になる1つのきっかけになったんやと思います。

石田明『答え合わせ』(2024年、マガジンハウス新書、90p)

こちらの本はノンスタ石田が考える「漫才論」「M-1論」「採点論」「コンビ論」「未来論」からなる5章で構成されていて、お笑い好きじゃなくても始終面白く読むことができます。

ちなみに今年10月に発売された同書の中で、ノンスタ石田は準決勝の審査員ならやってみたいけど、決勝の審査員については「やりたいとは思いません」と断言していました!

 やりたくない理由は単純です。出場者が「この人に審査してもらいたい」と思う歴代チャンピオンのなかで、僕はかなり下のほうに位置するだろうという自覚があるから。多くの芸人はブラックマヨネーズとかフットボールアワーに審査してほしいはずです。

石田明『答え合わせ』(2024年、マガジンハウス新書、107p)

当然、謙遜もあるのだとは察しますが、この本をすべて読んだ私はむしろ逆で、「ノンスタ石田の採点が楽しみ!」と思いました。

というのも石田は「採点論」の中で、「面白さ」「真新しさ」「技術」「M-1らしさ」「笑いの量」という5つの採点基準で各20点ずつをわけると明確に示しているからです。「『面白さ』と『笑いの量』は違うんかい!」というツッコミが飛んできそうですが…まぁ読めばわかります。

2020年チャンピオンのマヂカルラブリーは、「真新しさ」に「技術」も伴っていて、あのめちゃめちゃな光景が不思議と目に浮かぶ感じを出せたから、優勝できた。強いて分析すると、こういうことやないかなと思います。

石田明『答え合わせ』(2024年、マガジンハウス新書、126p)

5カテゴリーの合計が高くなると、ブラックマヨネーズ(2005年優勝)やチュートリアル(2006年優勝)みたいな「総合力による勝ち方」になります。

石田明『答え合わせ』(2024年、マガジンハウス新書、128p)

本当は「技術」を磨いて笑いを取るほうが簡単なはずです。だけど「技術」をつけずに笑いをとったほうが、面白さそのものは勝るのも事実。面白さに全振りのコンビ、たとえばトム・ブラウンやランジャタイを見ているとそう思います。

石田明『答え合わせ』(2024年、マガジンハウス新書、129p)

たとえお笑いについて真剣に考えたことがないとしても、なんとなくわかる気がしませんか? 加えて、すべてのコンビに絶対的な点差をつけるべきというポリシーも非常にわかりやすくていいと思います。

M-1はお笑い芸人にとって人生を左右する大会です。NON STYLEでいえば〝イキり漫才〟という形を捨て、石田が太ももをひたすら叩く反省ボケをM-1専用に用意して2008年大会で優勝の栄誉を掴みました。本書のタイトルが『答え合わせ』であるように、12年ぶりにM-1ネタをやってみた2人のYouTubeを見たら目頭が熱くなりました。

「笑い」は人が生きる上で欠かせないもの。記者の仕事をしている私も「面白い原稿が書けるようになりたい」と思ってプロの漫才を文字起こししたことがあります。そうして、文字にしても面白いものと文字にすると面白さが失われるものがあることに気づきました。

面白さはどこに消えたのでしょうか?

いきなり消えるなんてめちゃくちゃ怖いじゃないですか?

でもまぁ一番怖いのはこのnoteにオチがないってことですね…(とろサーモンに敬意を表して終わります)   (東スポnote編集長・森中航)

カッパと記念写真を撮りませんか?1面風フォトフレームもあるよ