第2話の前に!アニメ「ウマ娘(3期)」第1話の史実を「東スポ」で深掘り!
先週、ついにスタートしたアニメ「ウマ娘 プリティダービー Season3」。今週の第2話を前に、第1話をおさらいしつつ、史実と照らし合わせてみました。〝競馬の東スポ〟はキタサンブラックが走った皐月賞とダービーを、そしてアノ馬の強さをどう報じたのか。キタちゃんの今後に関して、キーになりそうな学級委員長の存在と合わせてまとめてみましたので、第2話を味わうスパイスになれば幸いです。(文化部資料室・山崎正義)
ドゥラメンテ
第1話最大のサプライズと言えば、ドゥラメンテの登場でしょう。ある程度は予想されていましたが、オープニングが皐月賞のレースシーンだったので、いきなり「出たか!」で、先行して踏ん張るキタちゃんを軽々とかわしていった様子は、まさに史実通りでした。
注目していただきたいのは4コーナーです。アニメでも、内にいたドゥラメンテが突然、弾かれるように大外に吹っ飛んでいく様子が描かれましたが、あれもまた史実通り。実際のレースでも大きく外にヨレたので、ファンは「あっ!」となりました。
「弾き飛ばされた?」
「斜行?」
「アクシデント?」
軽くヨレたどころではなく、ギュイーンといった感じで制御不能になったように見えたので、「こりゃ無理かな」と思った人も多かったはず。しかし、それぐらいハデなものだったのに、そこからゴールに向けてギュイーンと伸びて突き抜けてしまったのですから、2度ビックリ。誰もが呆気にとられるほどの強さで、翌日の東スポは終面(裏1面)を使って、そのドタバタ劇を報じています。連続写真がなかなか分かりやすいです。
初めての右回りとファンの大歓声でヨレてしまったとのことでしたが、他馬を妨害したとして鞍上のM・デムーロ騎手が9日間の騎乗停止になったぐらいで、かなりのアクシデント。一方で、そんな大暴れがあってもなくても、負けようがなかったんじゃ?というほど、最後の脚は他馬とは一線を画すものでした。本紙の大ベテラン、40年皐月賞を見てきた渡辺薫記者も「皐月賞史上最大の切れ」と舌を巻いたとも書かれているのですが、では、なぜ、こんな強い馬が3番人気だったのでしょう。馬柱を確認してみると…
はい、◎もあるものの、△としている記者もいて、完全に評価が分かれています。理由はやはりレースで現実のものとなった気性に起因していました。新馬戦で2着となった後、未勝利、セントポーリア賞(今で言う1勝クラス=出世レースとして知られる)を圧勝して「クラシック候補!」となっていたのに、続く共同通信杯(GⅢ)で引っ掛かり、2着に敗れていたのです。そこから皐月賞へはぶっつけで、陣営からも「気性が…」という不安の声が上がっていたことで、このような評価(印)になったんですね。ファンのとらえ方も。
「才能はすごそうだけど、まだまだ若い」
「アテにならなそう」
「小回りの中山競馬場も合ってなさそうだし」
だったからこその3番人気でした。ちなみに1番人気が、アニメにも登場しているサトノクラウンで、勝ち方は地味ながらデビュー3連勝で弥生賞を勝ち、サトノ家悲願のGⅠ制覇を狙っていました。同じくデビュー3連勝でスプリングステークスを勝っていたキタサンブラックが4番人気で、前述の共同通信杯でドゥラメンテを下したリアルスティールが2番人気。結果としては、2着にリアルスティール、3着にキタサンブラックが入るのですが、ドゥラメンテとの力の差は相当あるように見えたため、ダービーでの印はこうなります。
単勝オッズ1・9倍の圧倒的1番人気。レース結果はアニメ通りです。
完勝――
しかも、優勝タイムはキングカメハメハとディープインパクトが記録した2分23秒3を0・1秒上回るダービーレコードでしたから、翌日の本紙はこうなります。
日本で走れば3冠確実!
凱旋門賞でも勝負になる!
はい、キタちゃんが戦っていたのは、これぐらい強い馬だったんですね。私も長年、競馬を見ていますが、あのドゥラメンテの皐月賞とダービーはそれぐらい強烈でした。しかも、この馬、血統もすごい。お父さんは前出のキングカメハメハ。お母さんはエリザベス女王杯を勝っているアドマイヤグルーヴ(父はサンデーサイレンス!)です。
その母、つまりドゥラメンテのおばあちゃんは、ウマ娘でもおなじみのエアグルーヴ。オークスはもちろん、天皇賞・秋も勝っている女帝です。
なんならひいおばあちゃんのダイナカールもオークス馬ですから、日本が誇るスーパー牝馬の流れを受け継いでいるわけです。今回、公表されたウマ娘・ドゥラメンテのプロフィールの文面にもしっかり反映されています。
ある意味、宿命を背負いまくっているキャラとも言えますね。また、アニメではまだほとんどしゃべっておらず、ストイックにも見えるのですが、せっかくなので第1話でも表現されていたお茶目な部分にも触れておきましょう。既にネット記事等でご存じの方も多いかもしれませんが、ダービーのレース前の彼女、なんか歩き方がぎごちなくありませんでしたか? 脚をやたら高く上げて…そう、実はあれも史実通り。私も皐月賞のパドックで不自然なほど脚を高く上げるドゥラメンテを見て正直、驚きました。まあ、それを吹き飛ばすほどレースでも驚いたのですが、単なる面白い癖なのか、気合を入れているのか、集中するとああなるのか、一部では「馬は緊張するとそういう歩き方をする」という意見もあるので、あれだけの暴れっぷりで荒々しい走りをする馬が実は緊張していたと聞くと、なんだかほっこりもしますよね。
というわけで、たった2つのGⅠ結果を伝えただけでも、キタちゃんと同世代のドゥラメンテがとんでもない化け物だったというのがお分かりになったと思います。ダービー後の競走生活はネタバレになるので触れませんが、種牡馬になって、タイトルホルダーやスターズオンアース、そしてそして今週の秋華賞で牝馬3冠の大本命に推されているリバティアイランドも輩出しており、名門の血とそのポテンシャルがしっかり受け継がれているのは嬉しい限り。リバティアイランドにいたっては、まさに化け物の可能性もあり、楽しみで仕方ありません!
サクラバクシンオー
もう1頭、第1話で注目しておくべきはサクラバクシンオーかと思います。言わずと知れた元気印、トレセン学園の学級委員長がキタちゃんにこう話しかけるシーンがありました。
実はバクシンオーとキタちゃんの絡みは初めてではありません。ゲーム1周年を記念して公開されたスペシャルアニメの中で、入学したばかりのキタちゃんに、バクシンオーはやはり話しかけているのです。
2頭の間にある〝何か〟-―はい、これはもう明らかで、実は史実では、キタサンブラックの母父がサクラバクシンオーなんですね。というわけで、第1話の会話に話を戻すとバクシンオーはこうも言っていました。
なるほどですが、忘れてはいけないのはその後の言葉。
そう、バクシンオーは稀代のスプリンター。1400メートルですら「長い」馬でしたし、産駒もスピードタイプばかりです。そんな馬が、距離適性で重要とされる母の父にいるということは…2400メートルのダービーで先行したものの直線でパッタリ止まったキタちゃんが秋になって戦うべき相手とは…負けるなキタちゃん! 第2話が楽しみです!