「僕に宿題を出してください」ボードを持って街に立ったら…
じわじわと、確実に、売れ始めているような気がしないでもないドキュメンタリー芸人・コラアゲンはいごうまん。東スポにおける〝実録連載〟を復刻しています。
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ボディーブローのように徐々に効いてくるキツさでした。以前所属していたワハハ本舗の演出家・喰始(たべはじめ)から「何を体験するか一般の方に宿題を出してもらえ」という宿題を出された時のこと。指示通り「僕に宿題を出して下さい」と書いたボードを持っていろんな街に立ってみました。
冷ややかな視線を浴びる恥辱感に加えて渋谷では屈辱感。ボード見て寄ってきた女の子たちが「カメラのシャッター押して」「荷物見てて」。さらには「笑わせて」。何が悔しいて、緊張のあまりスベり倒しました。
巣鴨は孤独感。年配の方が素通りしていきます。
新橋は侮蔑感。酔っ払いに絡まれた揚げ句、中には「まともになれ」という人生規模の宿題を出す人も。つくづく思いました、売れなカスやな、と。
で、あきらめてボードをしまおうとした時、1人のおとなしそうな若い男性が近づいてきました。「あの~コラアゲンさんですか?」「えっ? はい」「ファンです! 大ファンです! いつも見てます」。聞けば彼、A君は数少ない僕のテレビ出演をすべて見てたんです。感極まった僕はSL広場前でA君を抱きしめました。そして事件は起こりました。
談笑していたところ、ボードを見たリーマン軍団が「写真、この人に撮ってもらおうよ」。もう慣れてたんで撮ろうとした次の瞬間でした。A君が入ってきたんです。
「あんたら、この人誰か分かってんの?」
「誰?」
「コラアゲンさんだよ!」
「…誰?」
A君、傷口広げてる…。さらに、十数人いる皆さん一人ひとりに聞きました。
「この人知らない?」
「知らない?」
「知らないの?」
答えはこうでした。
「知らん」
「知らない」
「知るもんか」
もうたくさんや!
最後に、あるリーマンがA君に問いました。
「じゃあこの人テレビで見れるの?」
人間、肝心な一言を言い間違えることってあるんですよね。「僕は見た」って言おうとしたA君がこう言い間違えたんです。
「僕には見えた」
…特殊能力か!