箱根に眠る埋蔵金!金山奉行の横領金は存在するのか
夢のない時代だからこそ、こんな夢も見てみたい--。埋蔵金の第一人者・八重野充弘氏のコラムを復刻です。
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神奈川県を代表する埋蔵金伝説が、大久保長安の黄金だ。江戸時代の初め、徳川幕府の初代金山奉行を務めた長安が、佐渡や伊豆の金山から掘り出した金の一部を横領し、埋蔵したというのである。
長安の不正が発覚したのは、彼が69歳で病死した後のこと。屋敷を調べると、黄金70万両のほか、大量の銀貨などが出てきた。さらに、長安が明の王と手を結び、徳川家康の六男の松平忠輝とともに、幕府を倒す計画を立てていたことを裏付ける文書と、その資金とするための黄金の埋蔵場所を示す秘文書が見つかったのだ。
怒り狂った徳川家康は、長安の遺体を掘り出して磔にし、箱根仙石原を探させた。文書には、「仙石原から南へ数町行った、富士山のよく見える場所に生える、黒い花の咲くツツジの根元」と書かれていたからだ。
家康の探索は失敗に終わり、以後、江戸時代に数度、明治以降もたびたび探索が行われたが、誰一人成果を上げた者はいない。そのうち、埋蔵金詐欺師たちにとっては格好のネタとなり、にせものの文書や絵図が出回るようになった。ここ30年ほどは挑戦者が現れていないが、川崎市在住の初老の男性が筆者を訪ねてきて、埋蔵場所を突き止めたので、発掘の許可を得るにはどうしたらいいかという相談をもちかけてきたこともある。
有数の観光地である仙石原で、富士山が見えるのはごく限られた場所。また、黒い花の咲くツツジが実在するはずはないので、その言葉をどう読み解くかがカギになるが、男性は「謎を解いた」と自信満々であった。問題は、その場所が国立公園内の国有林であることだ。許可を得るのはかなり難しい。だが、可能性はゼロではない。