ご婦人に「ハウロングドーイングコメディアン?」と聞かれた話
じわじわと、確実に、売れ始めているような気がしないでもないドキュメンタリー芸人・コラアゲンはいごうまん。東スポにおける〝実録連載〟を復刻しています。
× × ×
もう10年近く前になるでしょうか。昼下がりの某ファミレスで食事をしていると、隣の席にいた60代ご婦人3人の会話が聞こえてきました。
「マイハズバンドイズセブンティーイヤーズオールド」
「セブンティー!? ルックヤング」
「アンビリーバボー」
明らかにネイティブではない英語です。
一緒にいた、お世話になってる先輩・水道橋博士と博士の友達Iさんも興味津々。仕事の都合で1人だけ先に店を出ることになった博士が去り際、僕にささやきました。
「なんで英語なのか聞いといて」
えーっ!
突然の指令にひるみましたが、やるしかありません。ありがたかったの道場主にして格闘家のIさん。オバサマとの世紀の一戦を前に、セコンドとして助言してくれました。いきなり隣の席から話しかけない(相手が構えるから)、そして相手のルールを尊重する…。
そこでまずはトイレに行き、戻ってくる時にご婦人方の右から回りこんでさりげなく一撃かましてみました。
「エクスキューズミー?」
すると1人のご婦人が「アーハン?」。受け入れたー! どうやら皆さん、英会話教室の仲間で、練習をしているとか。なので、その後の僕との会話も終始英語です。
「アイアムコメディアン ドーユーノーミー?」
すると全会一致で「ソーリー」。片言で「知らない」と言われる新感覚の屈辱…しかし、ある1人が励まそうとしてくれました。
「ドントウォーリー ドリームズカムトゥルー」
夢はかなう…でも、それっていつやねん!と僕は「ウェン?」と聞きました。すると「アズスーンアズ」…英語の使い方はともかく、お恥ずかしい話ちょっとグッときた僕は声を震わせながら「リアリー?」。ご婦人が力強く「プロミス!」。僕、「サンキュー!」。歓喜した次の瞬間、事件は起こりました。」と聞かれ、僕が「トエンティーセブンイヤー」言うたら「27年もやってるの!」と急に日本語が! ルールを忘れるほど衝撃的やったんか!
で、えらいもんで「ドリームズカムトゥルーオッケー?」と再確認すると、返ってきた答えは「…メイビー」。オバサマの申し訳なさそうな表情に軽くヘコんだ昼下がりでした。