エモ怖すぎる母親が話題の半自伝的漫画に見るリアル
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エモ怖すぎる母親が話題の半自伝的漫画に見るリアル

企画意図

「変わっている」と評される新聞の記者はどんな本を読んでいるのか、恥を忍んで公開してみます--という読書ログ。今回は、45歳・猫背記者が、漫画アプリ等で話題沸騰中の作品を読んでみました。毒親か、天然か、春のホラーか…。

笑顔が一番!?

 怖い漫画を読みました。先週、書籍化された「汚部屋そだちの東大生」(ぶんか社)。

 ヒロインは東大卒の描き手自身で、自らの母親との関係を漫画にしているんですが、このママが強烈すぎます。頑張って東大に入学し、楽しいキャンパスライフを夢見てウキウキしている娘にこの一言。

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ⓒハミ山クリニカ『汚部屋そだちの東大生』(ぶんか社)

 笑顔です。めちゃくちゃ怖いです。今風に言えばエモ怖い
 お次は小さいころのお話、習字や絵のコンクールに出す作品はママが勝手に作ってしまいます。その日は賞をもらい、ママはごほうびのケーキを買ってきてご満悦。でも、娘としては作品は自分で作りたいんです。しかも、そのチョコケーキだって毎回嫌いだって言ってるのにホールで買ってくる。思い切って反論したところ

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ⓒハミ山クリニカ『汚部屋そだちの東大生』(ぶんか社)

 やはり笑顔です。しかも、このケーキ、前出の大学の入学祝いのときも買ってきます。服だって、自分がかわいいと思うものを、娘の気持ちなど関係なく与えます。どうやら、子供への執着や愛情が異常で、常に自分の理想通りになっていないと気が済まないようです。困ったことに、理想通りにならなかったら、そこは都合良く解釈して逃げたり、直視しないことでスルーします。普段の生活もそうで、現実から逃避し続けたのでしょう、部屋はゴミだらけ。トイレは何年間も壊れたままです。娘が意を決して「一緒に掃除しよう!」と言っても

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ⓒハミ山クリニカ『汚部屋そだちの東大生』(ぶんか社)

 自分がため込んだのに、こんなふうに謎の〝変換〟をしてしまいます。ここでも笑顔ということは、もはや悪気もないのでしょう。怖すぎます。が、もっと怖いのは、この話が著者の「半自伝」、エピソードの9割以上が実話だということです。私は改めて「そうだ、そうだよな」と思いました。よく、「変人」と呼ばれる人がメディアに取り上げられることがありますが、そんな人よりもっともっと変わった人が世の中にはいるんです。

有名人に変な人は多いのか


 私は東スポの記者ですから、芸能人やスポーツ選手、評論家など、ちょっぴり変わった人を取材することがあります。とはいえ、「有名人には変な人が多いんでしょ?」と聞かれると、ちょっと違って、「変」のレベルで言えば、有名人以外の人の方がインパクトが強い場合が多いんです。事件現場の近隣取材で出会った地域でも有名な変わり者、コンビニの店長に聞いた変な客、ウソしかつかない風俗嬢…10年ほど前、知り合いのライターのお供で新聞では報じられないような小さな事件の裁判を傍聴していた時期も、多くの個性派を目にしました。例えば、今回の漫画と同じ「母親」で言えばこんな2人をよく覚えています。

 まずは、万引きで捕まった55歳の息子の証人として登場した83歳の母親。「この子はほ~んといい子なんですよ~。真面目に会社にも行ってまして、休んだのは…あ、この万引きで捕まったときだけなんです~、あははは~」と法廷でいきなり笑いはじめました。裁判官に怒られてもヘラヘラしていて、閉廷宣言後は「よ~っこらしょ、あ~、おなかすいた~」と楽しそうに退廷していきました。

 お次は、何度も覚醒剤で捕まっている35歳の息子に「お小遣いをくれと言われると断れないんです、大事な息子だから」と証言した母親。「息子さんはそのお金で覚醒剤を買っているんですよ!」と裁判官に強い口調で突っ込まれても「ですよね~」と笑いながら、「大事な息子のお願いですから断れなくて」と、かわいらしく舌をペロッと出しました。で、息子に向けてウインク

毒親なのか天然なのか

 場違いなことを笑顔で行う2人にゾッとしました。自分がやっていることがおかしいとは全く思っていません。見た目は普通なんです。でも、何かが狂っている。ただ、私はこの話を記事にはしませんでした。おかしい。怖い。それだけで終わってしまうからです。しかも一場面を切り取っただけです。記者として大変恥ずかしいですが、正直に言って、彼女たちを取材する勇気はありませんでした。

 その点、今回紹介した漫画は、しっかり取材してあるどころか、本人にしか知り得ないリアルさが詰まっています。その具体例の怖さは、ゼロからの創作では絶対無理だと思わせる怖さ。絵とかコマ割りとか、ずるいほど母親の怖さを際立たせるように描かれているのもあるのでしょうが、やはり現実は創作を凌駕します。出版社の自社サイト「マンガよもんが」はもちろん、LINEマンガで人気を博したのも納得です。

 ちなみに、最初は自らの状況をあきらめていたヒロインも、徐々に母親から逃れようと自らを奮い立たせます。読んでいると、めちゃくちゃ応援したくなります。母親の怖さが突き抜けているからこそ、ページをめくりながら「がんばれ!」「逃げろ!」と叫びたくもなりますが、とにもかくにも人間は怖い。だから面白いのかもしれません。

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