情報過多の時代に、記者も磨くよ〝選球眼〟
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情報過多の時代に、記者も磨くよ〝選球眼〟

東スポnote

何でも野球にたとえるオジサン

日本ハムの新庄剛志監督が就任会見で言った「ビッグボス」が話題ですね。スポーツ紙のニュースを見ていると毎日どこかが「新庄ビッグボス」を報じていて、これはもはや流行語なんじゃないかという気がしてきます。

カウンタックを降り立った新庄ビッグボス(21年11月、札幌ドーム)

さて私の上司、つまりマイビッグボスはもともとプロ野球の取材記者だったこともあり、あらゆることを野球でたとえます。確実に仕事をすすめたいときは「送りバントで」、私が取材に出かけるときには「思いっきり(バットを)振ってこい」といった感じです。特にお酒が入るとこの傾向が顕著で、一緒に飲みに行くと〝何でも野球でたとえるオジサン〟が陽気に打席に立たない日はないと言っても過言ではありません。「いっそのこと〝何でも野球でたとえるオジサン〟としてnote用に記事を書いてくださいよ~」とお願いしているのですが、忙しくてつい忘れてしまうようです(苦笑)。

情報の〝選球眼〟ってなんだ?

つい先日のこと、書店を歩いているときに『情報の選球眼 真実の収集・分析・発信』(幻冬舎新書)という本に出会いました。「選球眼」という単語だけでかなり野球の匂いがします。そして、帯には「釣り球フェイクには手を出さず、好球チャンスは見逃さない。」との文字が躍っていますし、ルビの振り方も含めてこれはもう完全に野球ですよね。試しにウラスジ(=本の裏に書いてある内容紹介文)も読んでみましょう。

手を出すべきではない虚偽情報が世の中には無数に存在する。経営や投資において、フェイクや誤報を元に判断を下せば損失は免れない。だが、一方でスイングをしなければ利益を掴めない。ビジネスでは正しい情報が10あっても、大成功に結び付くのはたった1つ。トッププレイヤーでも1割以上の成功を得るのは困難だが、彼らはその10の好機を見逃さずにバットを振り続けている。本書では投資家である著者が、自ら実践する情報の収集・活用法を指南。真実を見極める眼と、利益を最大化する思考力を養う一冊。

やはりちょいちょい野球が出てきてますね。これなら読みやすいかもしれないと思い、買って読んでみると……中は意外に広岡達朗監督並みの〝管理野球〟でした。

〝監督〟は二次情報、三次情報ではなく情報の発信元に会うことで、情報の価値は100倍になるとした上で、

 価値ある源泉情報を得るために人と会う。その際に参考となる考え方があるので、紹介します。ストラクチュアル・ホールというネットワーク理論です。
 ストラクチュアル・ホールは早稲田大学ビジネススクールの入山章栄教授が、人脈作りを説明するときによく用いています。ビジネスの世界では多数の業界やコミュニティが存在しますが、その境界をつなげる情報の交差点であると、説明できます。

『情報の選球眼』48ページ

おっしゃっていることは身にしみてわかりますが、新聞記者の私ですらキーマンを直接取材することは難しいと感じますし、ましてや何でも聞けるような関係を維持し続けることはもっと大変です。でも〝打席〟に立たなければヒットはおろかフォアボールで出塁する可能性もゼロのまま。もっと先まで読むしかありません。

 アメリカ経済について深く知りたい場合には、WSJを、同じく、イギリスの経済について深く知りたい場合にはFTを、日本経済について深く知りたい場合は日経新聞を。私たちにとって重要性が高い3国すべての経済情報を知りたい場合には、3紙すべてを購読する必要があります。そしてもちろんWSJやFTは英語の原文で読むことで、より真実に近い情報を得ることができます。
 加えて、シンガポールの状況など、アジアの情報をより深く知りたいときは、Nikkei Asiaを読むのも良いでしょう。

前掲書、97ページ

正直言って、ここで「〝監督〟厳しすぎるよ~」と心が折れそうになりました。複数の情報源を確保して、比較した上で自分なりの仮説を立てることはとても大切ですが、英語を原文で読んだらきっと日が暮れると思ったからです(苦笑)。

しかし、この本の〝9回裏〟(?)に思わぬ展開が待っていたのです。

本音のディスカッションに最適な場所は居酒屋

「活用できなければ情報に価値はない」と銘打たれた第4章で、「待ってました!」と言いたくなるくらいの得意球が飛んできました。意識が高くてついていけないよと思ってた〝監督〟のまさかの一面を知ることができたのです。対話を重ねることで情報をブラッシュアップさせると説いた上で、

 その中で個人的にひとつおすすめしたい方法は、リアルな場でカジュアルに議論することです。お酒が飲める方には飾らない居酒屋でもいいかもしれません。忌憚のない意見交換ができます。また、それまではまったく関係のない人物を、たまたま知人が連れてきてつながっていくこともある。(中略)
 特にディスカッションをメモすることはしませんが、気づきを得たポイントは御礼メールやチャットとともに後でまとめておきます。たとえばリアルな飲み会の後であれば、帰りの電車やタクシーの移動中でもメールを作成します。大事なのは、すぐに行動することです。相手にとっても、何が気づきになったのかを知ると、話した甲斐があったということにもなります。

前掲書、201ページ

好球必打!今まで難しいことばかり言う〝監督〟だと思っていましたが、やっぱり飲みに行くし、飲みにケーションも重視してくれることがわかり、親近感がわきました(笑)。

今シーズン、セパ両リーグを通じて最も多い106四球を選んだ村上宗隆(21年12月、神宮)

ところで、〝監督〟の本業は投資家だそうですが一体どんな人物なのでしょうか? 最後の最後で、著者情報を見て納得しました。

山本康正 一九八一年、大阪府生まれ。東京大学大学院で修士号取得後、三菱東京UFJ銀行(現・三菱UFJ銀行)米州本部に就職。その後、ハーバード大学大学院で理学修士号を取得し、グーグルに入社。大企業の幹部に対し、テクノロジーを活用したビジネスモデル変革等のDXを支援する。現在はベンチャー投資家として活躍。日本企業やコーポレートベンチャーキャピタルへの助言等も行う。また京都大学大学院総合生存学館特任准教授や、プロ野球のパ・リーグをデジタル技術等で支援するパシフィックリーグマーケティング株式会社にて、テクノロジーアドバイザーなども務める。

※太字は筆者

そう、プロ野球にかかわるお仕事もされていたのです!やっぱり野球って奥が深いんですね~。私も少しずつ選球眼を磨いていきたいと思います。(東スポnote編集長・森中航)

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