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美婆女の赤!麻雀版〝ルージュの伝言〟

 プロ雀士より面白いのがジジババ雀士。各地のマージャン教室や大会に積極的に参加し、ジジババたちの元気すぎる姿を目の当たりにしている「雀聖アワー」福山純生氏が、その生態を明かします。

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東1局

 美そのバァさん、御年79。真っ赤なジャケットに身を包み、真紅の口紅で現れる。指先にも気を配り、マニキュアももちろん赤。だからといって、カープ女子というわけではない。単なる麻雀好きな御婦人。

 バアさんがよく参加する大会は5半荘。朝10時から夕方4時過ぎまで。したがってランチタイムがある。昼食にはカツ丼、カツカレー、カツサンド等、ゲン担ぎ要素があるものを好んで食っている。ランチタイムが終わると、毎回口紅を付け直す。いくつになっても女性は女性。美魔女ならぬ、美婆女といったところか。

 厚生労働省の発表によると、2020年の日本人女性の平均寿命は87・74歳で、男性の81・64歳を大きく上回る。部屋着のような格好で現れ、ゴルフ帽で寝グセをごまかすジジイに比べると、若さの秘訣は人に見られていることを意識するかしないか。そんなことも関係あるのかもしれない。

 ただそのバアさん。誰かのリーチが入ると、指で口を押さえる。困ったときのクセなのだが、そうすると指に口紅が付く。その指で牌を触る。牌に口紅が付く。やがてその牌がいろんなところに紛れ込んでいく。ときに三元牌の白を中と見まごうこともあるほどだ。

 竹の牌を使用していた頃、牌に傷や印をつけて判別する《ガン牌》なるものができる打ち手もいたことを考えれば、まさか、バアさんも…。だが、大会で好成績を収めたことは皆無。考えすぎか。ちなみにバアさんの好きな牌も聞いてみた。赤牌でもなく中でもなくはつ。何かと考えすぎたようだ。

東2局

 麻雀に興ずる愛すべきジジババ。趣味は麻雀だけなのかと思いきや、二刀流も少なくない。ジジイはゴルフや散歩。バアさんはカラオケとの二刀流が多い。

 これはコロナ禍前の話だが、御年81、2歳年上の姉と一緒に、小学生時代から牌と戯れているバアさんと話したことがあった。雀歴70年。姉も健在。

「以前は週7日、麻雀だったんだけど、70歳の時に大腿骨を骨折したの。でも知らないうちに骨がくっついて。だから退院してからは麻雀は週5日に減らしたの

 真顔で話すバアさん。大腿骨骨折からの復活。驚異の自然治癒力もさることながら、聞き捨ててはならない。週7日から週5日というくだり。週休2日であれば公務員の勤務時間と変わらない。

 それはさておき。麻雀をやらない2日間の過ごし方を聞いてみた。「週に1度はカラオケよ」。唖然とする私にこう畳み掛けてきた。「カラオケっていいわよ。アタシね。10年前からカラオケ教室に通ってるの。それから風邪ひいてないんだから。10年間1度も」。

 習い事ときたか。しかもカラオケにそんな効能があったとは。「どんな曲を習われているんですか?」「それがね。はやりの曲を歌わせてくれないのよ。先生が好きなよく分からない歌ばっかり」「ちなみに、はやっている曲って?」「ほら、あれよ。はやってるじゃない。舟歌よ。八代亜紀よ。けっこう難しいけどね」

 はやっている…。いずれにせよ、麻雀5日+カラオケ1日=週6日稼働。風邪をひく暇は確かになさそうだった。

◆福山純生(ふくやま・よしき)1970年、北海道生まれ。雀聖アワー主宰。全日本健康麻将協議会理事。健康麻将全国会新聞編集長。好きな役はツモ。


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