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私たちは〝成功〟の最短ルートばかりを探しがちなのかもしれない

新入社員の私はただいま研修中。つい先日、先輩記者の森中さんの取材に同行することになりまして、対談のテーマとなる稲田豊史さんの著書『映画を早送りで観る人たち ファスト映画・ネタバレ―コンテンツ消費の現在』(光文社新書)を拝読しました。結論からいうとめちゃくちゃ刺さった!!(新入社員・浅井万咲)

今回は新入社員が〝体験入部〟で書いてくれました!

私たちは「間」を楽しめない!?

私自身は映画を早送りで観たことはない。だが家で映画を観ているとかなりの高頻度でスマホをいじってしまう。本のタイトルにある〝映画を早送りで観る人〟は私のような若者、いわゆるZ世代が統計的に最も多いそうだ(多いといっても約半数ほどなので、詳しく知りたい方は本書を読んでみてください)。

なぜ早送りするのか? 本の中で、早送りで観る人たちは間を楽しむ必要性や面白さを感じていないと説明されるが、その心理は私もほとんど同じ。知りたい情報は簡単に得られるし、友達と永遠につながっていられることに慣れてしまっているから、変化の少ない画面を見ると退屈に感じて仕方がないのだ。製作者の作った「間」を隙間時間だと感じ、そこはスマホを触って別の情報を詰め込もうとしてしまうのだから、本当に申し訳ない見方をしてしまっているのだろう。ちなみに本書には私を超えるツワモノ、もはやその視聴スタイルで本当に理解できるんだろうかって思う人たちもゴロゴロ紹介されている。

終始穏やかな表情で話されていた稲田さん

Z世代のプレッシャーを〝見える化〟されてホロリとしてしまった

稲田さんはZ世代の生きづらさに焦点を当ててくれる。特に同年代の他人の成功ぶりを簡単に見ることができるSNSに何かしらの要因があるんじゃないかと取材されたところに心を揺さぶられた。

実際、勝手に流れてきた容姿端麗な同世代の女の子の写真を見て落ち込んでしまう子はかなり多く、ルッキズムがどれだけ問題視されていても「かわいくないとダメ!」と思っている子が年々増えてしまっているようにも感じる。それに加えて「普通じゃダメ!」と個性を求められる世の中は相当なプレッシャーだ。当たり前だと思っていたことを本を通じて客観的に見直すことで、自分たちはこんな状況で頑張っているんだ…とホロリとしてしまった。同時に、稲田さんの本を読んだ人生の先輩方がちょっとでもZ世代の境遇を理解してくれたら、みんな生きやすくなるのかな~とも思った。

初めての取材で優しく話してくださった渡辺さん(左)と稲田さん

いつか寄り道回り道を楽しめるように

稲田さんと渡辺さんの話を聞いていて、一番記憶に残ったのは、回り道が必ずしも無駄ではないということ。私たちZ世代は自分の描く成功の最短ルートばかりを探してしまいがち。でも、回り道をしても自分の納得する未来にたどり着くことはできるし、その途中で培われたものは大切なことだ、価値観を広く持つことは大事だよと教えていただいてハッとした。自分の好きなことばかり追い求めたり、インフルエンサーの発言を丸々信じてしまったりする〝偏り〟に気づけたからだ。

本を読んで、お二人の話を聞いて、偏りのあった頭が多少均等になった気もする。倍速視聴が悪なのか、善なのかは答えの出ない問題で、そんな内容について自分で考えること、人の意見を聞いてみることはすぐに答えが出なくても楽しいんだと初めてそんな感覚になった。あせらずできることを地道に努力して、いつか立派な新聞記者になれたなら――。

Z世代のみなさんもそうでないみなさんもぜひ本書を手に取って、新しい自分に出会ってみてください。Z世代の私ですら自覚したことのない〝若者あるある〟に対して綿密に深堀りされていて、本当にめちゃくちゃ刺さった!

2人の対談記事はコチラから


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