アニメ「ウマ娘」で描かれたキタサンブラック〝謎の大敗〟を「東スポ」で振り返る
アニメ「ウマ娘」第10話の前半はトレセン学園と地域の合同イベント。盛り上がる人たちを見て「日本中にお祭りウェーブを起こす」と決意を新たにしたキタちゃんことキタサンブラックはトレーナーさんに凱旋門賞に挑戦したい意向を伝えます。この年の初めにはなかったプランです。史実ではどうったのか。宝塚記念時の状況とともに「東スポ」で振り返ります。(文化部資料室・山崎正義)
前回のnoteで書いたように、史実でも、もともと陣営はハッキリと海外挑戦を口にしていませんでした。しかし、大阪杯と天皇賞・春の強さがシャレになっておらず、挑戦への空気と現実感が濃くなり、天皇賞の2週間後、JRAから発表された凱旋門賞への登録馬にはその馬名が…
ただ、まだ「行く!」とは言っていません。宝塚記念の前に管理する清水久トレーナーはこのような言い方をしていました。
ちなみに陣営は、9月9日に行われるアイリッシュチャンピオンステークス(愛チャンピオンS)というアイルランドのGⅠにも登録していました。大阪杯のVで優先出走権を得ていましたし、欧州では凱旋門賞の前哨戦的な位置づけになることも多いので選択肢のひとつに入れていたのでしょうが、いずれにせよ本丸は凱旋門賞だったはずです。とはいえ、まずは宝塚を勝ってから。正直、〝ここでは負けられない〟というメンバーでした。
毎度のことながら◎ズラリではないのは、本紙が本命馬を負かす馬を探す記者が多い新聞だからで、単勝オッズはこのぐらい抜けていました。
キタサンブラック 1・4倍
シャケトラ 8・5倍
サトノクラウン 9・0倍
サトノダイヤモンドがいなかったことも大きいですが、大阪杯と天皇賞・春のレースぶりを見れば当然の数字。レース前にファンがイメージした翌日の新聞の見出しはおそらくこうでしょう。
「次は世界だ」
「さあ凱旋門賞へ!」
「サトノダイヤモンドともに日本馬悲願の初制覇へ」
が、アニメで描かれた通り、キタサンブラックは大敗します。これもアニメ通り、シュヴァルグランが意表をつく逃げの手に出て、キタサンブラックは3番手。絶好位だったのですが、いつものように4コーナーをすーっと回っていけず、直線を向いても伸びず、馬群に沈みました。
勝ったのはサトノクラウン。前年、香港でGⅠ馬となり、年明けの京都記念を完勝した後、大阪杯で6着になったことで3番人気に甘んじていましたが…。
悲願の国内GⅠ初勝利!
はい、大変めでたいのですが、競馬場内の雰囲気はかなり微妙でした。〝壮行レース〟的な目で見ていたファンたちは
「え?」
「え?」
「どうした?」
といった感じ。競馬ですから人気馬が敗れることは多々ありますが、かなり死角がなかった馬ですし、常に一生懸命で大敗することがほとんどなかった馬ですから、キツネにつままれたような気分でした。展開の紛れで2着や3着に負けたとか、そういうレベルじゃない、大きく離された9着――
〝ポカン〟としたファンの脳裏によぎったのは不安です。
「まさか…」
「ケガじゃ…」
「故障したんじゃ…」
しかし、すぐに無事が確認されます。ただ、無事だったからこそ、負け方が謎すぎました。翌日の本紙は、競馬面ではなくニュース面を使っています。ある意味、〝事件〟だったのです。
見出しにもあるように「謎」でした。武豊ジョッキーも首をかしげるばかりで、敗因についてはズバリ
やや重の馬場が関係していたのでは?という声にも「馬場は大丈夫だったし、そもそもそんなに悪くなかった」。シュヴァルグランにハナを叩かれたことに関しても「レースの進め方は悪くなかった。状態も決して悪くなかったし、不利もなかった」。清水トレーナーも敗因を特定できませんでした。
確かに3コーナー手前でサトノクラウンが急に背後にやってきてプレッシャーをかけてはきました。しかし、「競る」まではいかないものでしたし、そもそも、似たようなプレッシャーは今までに何度も受けて、はじき返していました。というわけで、やはり、こうです。
原因不明
謎の大敗
なぜ負けたのか
アニメではキタちゃん自身も分からない様子でした。
「どうした…」
「どうしたんだ、キタちゃん!」
大波乱の後、キタちゃんがどうなっていくのかは次回を待つほかありませんが、エンディング直前にアップで映されたウマ娘がどんな動きを見せるのかにも注目です。何せ、似たような境遇を味わっていますから。
2年前
同じ宝塚記念
1・9倍
ダントツ人気
それを豪快に裏切る
謎の大敗
ゴールドシップ!
実は凱旋門賞も経験しているゴルシ!
キタちゃんを助けてあげて!