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奥深きレゲエの世界「絶対に『これええやん』となるのがある!」

 レゲエセレクター(=レコードやCDをかける人)のレッドスパイダーが11月11日にアルバム「変エルノ詩」をデジタルリリースした。同インタビューではアルバム制作のエピソードやユーチューブチャンネル「ズンズンチャンネル」エピソードに加え、レゲエ界の発展について「レゲエといえばマリファナのイメージがどうしてもあるが、大きな仕事をするためにはクリーンにしていかなくてはいけない」と持論を熱く語ってくれた。(文化部・田才亮)

まずはニューアルバムの話から!

変エルノ詩

――アルバムタイトル「変エルノ詩」について教えてください

 アルバムのタイトルがなかなか決まらなくて。なんか、こう「カエルスタジオ」名義の作品は何回か出しているんですけど、いま所属しているアーティストが前に出るという作品をやるパターンは初めてだったんで。まあ、「カエルスタジオ」に所属しているアーティストの作品やし「カエルのうたが聞こえてくるよ」みたいなノリっすね。
「カエル」=「世の中を変える」という意味も。三木君(三木道三、現・DOZAN11)が名付け親らしいんですね。だから「オレらも音楽で世の中を変えられたらいいよね」という意味も込めてます。

――先行公開された曲「麻の中の蓬」は亡くなられた先代社長への想いが

 亡くなった時になんか、こう、ちょっと何というんかな。社長業を離れていた時期があって。そろそろ戻るわ、みたいな時期に他界して。社内的には〝くらった〟というか。「もう一回頑張りましょか」という時期だった。その流れで亡くなったんで、いろいろ決めていたこともずっと「どうするの?」とふわーっとしていた状態が1年続いた。会社がどうなんねん?とか。
 個人的にも曲を作りたいなと思っていたけど、20年以上付き合いあったんで、そういうの一番嫌がる人やった。追悼ソングとか「そんなんいいねん」という人だった。参加アーティストはほとんど売れる前からの知り合いというか、世話になっている人ばっかり。それぞれ、みんな、想いがあったんかなと思います。

――アルバムコンセプトは

 アルバムは「とりあえず一枚だそうと」。所属アーティストのAPOLLO、KENTY GROSS、NATURAL WEAPONとみんな個性が強いんでね。みんなのバランスを取るのが大変でしたね。4曲目の「GAL BODY GOOD」とか、KENTYが本領発揮できたんじゃないかと思いますね。
 いつになるか分からないですけど、ライブでやったら盛り上がる感じで作るというか。
「麻の中の蓬」がアルバム締めくくりの曲かなと思ったんですけど、でもそれで終わったら、ちょっと悲しすぎるな。と
 それで「前に進もうよと」という意味を込めて「YOLO」を入れました。

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KENTY GROSS

――大勢のアーティストが参加する「COULD YOU BE LOVED」は豪華な曲に

「COULD YOU~」はもともと入れる予定はなかったんですけど、ライブで盛り上がるんですよ。レゲエのイベントって、最後にラバダブ(=複数のアーティストによるフリースタイルのマイクリレー)があるんですけど、そういうのを感じてほしいですね。大阪にはいっぱいおるんです、まだまだいいアーティストが。ただ、大阪って、まだまだ音楽するには不利な面がいっぱいあるんです。でもそういう時代でもないし、大阪からでも発信できる時代やろうなと。それでユーチューブチャンネルを毎日やろうと思ってやってます。

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NATURAL WEAPON

YouTubeでバラエティーをやる理由

――そのチャンネルでバラエティー企画をやりだしたきっかけは

「歌ってみたシリーズ」とか「DUB一発録りシリーズ」が需要があるのは分かっているんですけど、あんまり、自分的にああいうのをやっちゃうとシンドイんです。その「気晴らし感覚」でやっているのもあるんですね。ぴゅーっと街ブラ行ったり、音楽のまったくないのをやるのは、チャンネルをずっと続けるポテンシャルをキープするためにやっているというのもあるんですよ。もちろん、数少ないレッドスパイダーマニアはそういうのも見てくれるんですけど、再生的にはアーティストと絡んでいるほうが伸びるという傾向が出ているんですけど、とりあえず続けないと意味ないなということで、(企画を)ハメてますね。

――バラエティー企画をやることで、アーティストのまた違った一面を見ることもできるのは楽しい

 確かに「思っていたのと全然違う」みたいなんは、よく言われますね。ライブはイケイケでMCとかでもガツンと言うタイプなんで。(自分は)結構「怖い人」と思われがちなんで。(笑い)。ギャップがあると思いますね。

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――企画をやることでファン層も広がりがありますか?

 そうですね。レゲエってまた特殊なジャンルでもあるんですよ。専門用語も多いし。結構、深いところから浅いところまでいろいろなタイプがあるんで。ライトユーザーが見やすくするのも結構大事なんかなと思います。やっぱり「歌ってみた」シリーズというのは人気なんです。ライトユーザーがガーッと入ってきて、そこから「レゲエってなんやろ?」と、興味を持ってもらえる。どんどん、掘ってくれるタイプ(自分から情報を探す)もいるんですけど、いきなり専門的な話すると「レゲエってムズイ」ってなるパターンもあるんで。バランス良くやることが大事かなと思います。
 結構、音楽離れていた人たちとか、青春時代にレゲエを聴いていたけど、家族ができたりとか就職して、離れていた人とかも、帰ってくるきっかけになってるっぽくて。もともと、(自分は)ユーチューブとか、そういう活動をしてなかったんですけど、なんか、やって良かったなと思います。

――バラエティー企画から専門的な企画までやる理由は

 やっぱり最終的にはレゲエやレッドスパイダーのイベントに行ってみたいと思ってもらえるように。イベントでは濃いところから浅いところまでやっているんで。なんか、初めから浅いところばかり見せて、いざイベントに来たら、ちんぷんかんぷんなられても困るというところもありますし。
 出演してもらっているアーティストに関しては、身内周りで固めているというか、仲ええところや大阪勢に出てもらっているというのもあるんです。いじったりとか、普段からのやりとりのまんまをやっているんです。「ズンズンチャンネル」って、台本全くないんです。打ち合わせもゼロなんですよ。いきなりカメラ回すんです、何も決めんとフリースタイルでやるんです、対談の時も。だからアーティストとかも「もうカメラ回すの?」って感じなんですけど、まあ、いつもの感じでしゃべっていたら、プライベートなところってお客さんもあんまり見ることないんで、それがいいんかな?って感じです。イベントでもそういうスタイルなんです。そのノリをそのままユーチューブでやっている感じですね。「風俗行ってやってたやろ!」って。

――吉本新喜劇さんとのコラボは

 ユーチューブやる前に、新喜劇とコラボやらしてもらっていたんです。そこからご飯行ったりとか付き合いがあって。この事務所が新喜劇の劇場に近いというのもあって。芸人さんたちもほとんど、この周りに住んでいるんです。ほんで、道でも会うみたいな。それで「ユーチューブ出てください」みたいな。イベントとかも結構遊びに来てくれてたりするんですね。その流れでやったみたいな感じですね。また新喜劇コラボをやっていきたいですね。

――音楽という軸がぶれないから、面白さも増大するし、音楽の良さも数倍かっこいい気がします

 そこを感じていてくれたらうれしいですね。例えば「KENTY GROSS」っていうアーティストがいるんですけど、ホンマにあほなことをむちゃくちゃするんです。下ネタもするし。でもそれって、いわゆる(レゲエの本場である)ジャマイカに近いというか。本質に近い部分があって、そこが日本ではまだまだ見られていない気がするんです。ジャマイカのスタイルに一番近いであろうKENTY GROSSの日本語でのパフォーマンスを見ると「お笑いの人」「下ネタ言う人」というふうに捉えられているので、もうちょっと「レゲエってこうやで」という活動はしていかないとあかんのかなって思ってます。

レゲエを広めるためには、「レゲエ=大麻」のイメージを払拭するしかない

――今後、レゲエをどういうふうに広めていきたい?

 変な話、レゲエってメディア関連がめちゃくちゃ弱くって。タレントやアーティストの数でいうたらめちゃくちゃおって。面白いやつもうまいやつもおるんですけど、まだスポットが全然当たり切れていないんで。そういうスポット浴びれる場所を増やしていきたいですね。

――レゲエ文化は日本で広まっている

 いや、まだまだ全然です。動画でも話しているんですけど、社会的にレゲエって大麻のイメージがめちゃくちゃ強いじゃないですか。日本では法律的にアウト。でも、正直な話、全員がしていないと言ったら、してないとは言えないんで。

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――ジュニアさんは日本ではアウトで自分はやっていないと動画でも何回も宣言している

 その中で「誰がしてる、誰がしてない」というのは分からない。例えば大きいビジネスの仕事となった時にはトラブルの可能性を相手先は考えちゃうだろうし。そういうところをどうするべきか考えているところですが、最近のヒップホップは「薬物バンザイ!」みたいなんもめちゃくちゃ流行っている。だから、どこが正解なのか分からなくなってきましたね。
 社会に出ている人からすれば「犯罪やん」っていうだけの話ですしね。ただ、(ジャマイカをルーツに持つ)レゲエは切っても切れへん話というか関係性というか。ジャマイカでは解禁になって。以前には解禁目指す歌とかもバンバン出ていたし。それで「レゲエ人=大麻をやっているんじゃないか」とか。そこは「みんながみんなやっていないからね」というのはもっとやっていかないとと思っています。レゲエ界でもその辺を話すのはタブーになってますね。企業とかはなかなかやりにくいと思います。議論が全然進んでいないんですね。レゲエ界の中でも偏っているやつは偏っているし。絶対吸わないって主張する人間と真っ二つになっているんです。

――つまり、そこから議論が進んでいない?

 オレはどっちでもいいと言えばどっちでもいいんですけど、ただ、大きい仕事をすんねやったら「大麻をやめるしかない」んです。ほかの人にも迷惑がかかる恐れがある。そこは「大人としてきっちりするべき」と思いますね。そこがまだまだ、足の引っ張り合いみたいなところもありますし、そういうのもあるなかで、もっとレゲエ界が大きくなってほしいというのもありつつ、そういうところもクリーンにしていかないといけない。ホンマにいざ、存在が大きくなってきた時につぶされやすいというのはあるかな、と。

――個人的には大麻に関係していた過去は否定はしないという立場ですが、これから業界のことを考えるなら、ある程度売れたらやめるべきだし、仲間に後ろ指さされても自分を強く持つマインドになればいいと思っています

 やっぱりアンダーグラウンドからメジャーに行くと「セルアウトしやがって」と批判するやつもいて。オレはそういうのをキモッ、と思ってます。「そもそも、みんな、売れたいと思ってないん?」と。ユーチューブやりだした時も「お前、ユーチューブやんのけや?」という批判もあったんすよ。ただ、時代もあって、ツイッターとかインスタグラムだけじゃ宣伝も厳しいし。やったら、おいしい面も見えて。これまで離れていたお客さんが戻ってきたりとかもあったんです。それをいま、レゲエのやつらも実感しているんです。結構、レゲエも保守的なやつが多いんです。自分の理解できへんものは一回否定する人が多いんですかね。

――ユーチューブバラエティー企画でオススメを教えてください

カブトムシを食うた回」があるんですけど、それがびっくりするぐらい再生数が少なくて!「あれだけまずいもの食うてアカンねや、むちゃくちゃまずかったんやけど」と(笑い)。だから、芸人さんってホンマ大変やなあと思わせてもらいましたね。勉強させてもらいました。どんだけつらい思いしても、見る人が求めてなかったら全然アカンと。ああいうのが再生数増えてほしいですけど、なかなか難しいですね。

 あと「TAK―Z」っていうアーティストがバク転ばかりする回あるんですけど、最後、テーブルの上でバク転して、すごいこけ方してケガする回があったんです。それもね、関係者、「AK-69」とかまでリツイートしていたんですけど、再生数伸びずで。あんまり体張っても意味ないんだなと思いましたね(笑い)。

1曲だけ聞いて「レゲエ嫌い」にならないで!

――東スポnoteを読んでくれた方にメッセージをお願いします

 ユーチューブでは音楽的に言うと、幅広くやってます。いきなり深いのを見ろ!と言っても浅い人からしたら難しいやろうし。いろいろ見てもらって、ホンマにいろんなタイプのレゲエがあるんで、1曲聞いて、「レゲエ嫌い」というのはやめてほしいですね。ホンマに絶対、はまるところあるやつやから、それがオレがどう出せるか。

 イケイケなのが好き、まったりしたのが好き、重たいのが好きと、音楽ってホンマに好みあるし、なかなか、これを見ろとは言えないですね。でもレゲエには全部あるんで。

 ただ、絶対に「これええやん」となるのが絶対にある。多分、視聴者からしたら一発で「当たり(好みの音楽)」を引きたいと思うんですね。だから、オレがユーチューブでどれだけそこに近づけるか、ということだと思うんですけどね。難しいですね。その人の音楽背景もありますしね。

 よく言われるんですよ「レゲエ初心者なんで、おすすめのレゲエを教えてください」と。オレは「オレが薦めているから、レゲエええやん」という形を取りたくなくて。ホンマに自分がええ、と思って聴いてもらうのが、長く聴いてもらえると思っているので。そっちのほうが心に響くと思うので。
 
 おすすめを聞かれたときは「いままでどんな音楽聴いてたん?」と聞いてから、そこから近いものを薦めてますね。レゲエ好きな人があんまり知らない人に「これええから聴いてー!」って薦めても、逆にマイナスプロモーションになる可能性もあるので。だから、(好きなものに出会ってもらうために、きっかけとなる)メディアが少ないっていうのがマイナスなんかなと思いますね。
 
 自分で「これはちゃう」と思ったらまた違うやつを見てもらって。ただ、ひとつきっかけできたらグイグイ行けると思うんですよ。レゲエもスキル的にもすごいやつおるし、キャラクター的にもおもろいやつがいっぱいいるんですよ。ただ、そこがメディアにアピールできていないんで、とりあえず、オレらがチャンネルを頑張るしかないですね。

――最後にひとこと

 ユーチューブだけではレゲエの良さって伝えられないんですよね。ユーチューブ見て「レゲエって面白いかも」と興味持ってくれた人がおったら、ダマされたと思って、ホンマに1回イベントに来てほしい。特にオレのイベント。絶対にハメますから! 間違いなくハメます! オレもこの世界で20年以上やっているんですけど、ユーチューブやるまではホンマに〝現場主義〟でやってきた。その流れで武道館ワンマンできるようにまでなったんです。要は「ジュニアの現場オモロイ!」というリピーターが多かったんですよね。だから、それだけオレは現場オモロイと自信あるんです。だから、ちょっとでもレッドスパイダーに興味あったら、1回来てみ?って感じです。貢ぐぐらいお金を使うと思いますよ!

レッドスパイダー・ジュニア 大阪府出身。1995年に活動開始し、レゲエセレクターとして日本武道館ワンマン公演を実現させるなど、レゲエ界で不動の地位を築いている。アルバム「変エルノ詩」は所属事務所「カエルスタジオ」に所属するディージェイ(Dee Jay=歌い手)のAPOLLO、KENTY GROSS、NATURAL WEAPONとの4人で制作。芸能界でもファンが多い。

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