「大阪スポーツ×HYDROGEN」超異色コラボの舞台裏
2021年11月、大阪・大丸心斎橋店1階のイベントスペースのショーケース上に大阪スポーツの〝紙面〟がずらりと陳列された。ここはイタリア高級ファッションブランド「HYDROGEN」の期間限定ポップアップショップ。「DUVETICA×HYDROGEN」のダウンコートは定価15万円もする。でもその真下で大スポの原色見出しが躍動している…。私はその光景を忘れることができない。東スポの歴史を変えた瞬間だった。(営業局販売部・藤井亜衣)
東スポに入って10年超、キラキラが不足していた私
母がインポート服のセレクトショップを営んでいることもあり、私は子供のころから大の服好きで、ファッション誌の制作にあこがれていたこともあった。どちらかと言えばキラキラ系女子だったと思う。
ところが、大学時代にギャンブル(パチンコ→スロット→競馬)にハマったのを機にスポーツ紙ばかり読むようになり、就職活動のときには迷いもなく愛読紙・東スポの門を叩いていた。
入社後すぐに関西支社(大スポ)の制作部へ配属され、紙面のレイアウトをしたり記事に見出しをつけたりする仕事をして10年以上。魅せ方を学び、自分が制作したモノが世に流通することは喜びだったし、仕事には満足だった。でも、どこかでキラキラが不足しているような気もしていた。
ひらめきから生まれた〝シンデレラストーリー〟
そんなある日、社内の先輩から「メディアラボに参加してみない?」と声をかけられた。若手社員を中心に新聞の未来を探っているそうで、そこでニュース媒体としてではなく個人の思い出を記録するオーダーメイド的な新聞のサンプルを作りが始まっていた。ブライダルや子供の運動会、入学式やペットなどさまざまアイデアがあったが、私は自分の趣味でもあるゴルフをきっかけにアマチュアコンペの結果を伝える一面を作ってみることにした。
家業の関係で、私は休日にアパレルの新作展示会によく足を運ぶ。老舗商社の三喜商事を訪れ、社員の方々と雑談しているときにふと閃いた。
「御社のゴルフコンペにどうですか?これは単にスコアを報じた紙面ですけど、御社なら『本日のベストドレッサー賞』的な感じで着こなしにフォーカスするのもアリですよね」
サンプルを見せながら、私はその場でとっさに思いついたアイデアも加えてアピールした。自社で取り扱う「HYDROGEN」のウェアを日頃から愛用しており、なおかつゴルフ場で異彩を放つ〝オシャレおやじ軍団〟と呼ばれる方ならわかってくれるかもしれない。
「なるほど。ベストドレッサー賞ですか…」
うーん、イマイチだったのかもしれない。このご時世、ゴルフコンペに大きな予算をかけないのも無理もないか…と思ったときだった。
「これ、内輪のコンペなんかじゃもったいないですよ。ウチのポップアップイベントでノベルティーにしません?HYDROGENのときがいいですね。誰か一人をベストドレッサー賞に選ぶわけではなく、お客様ひとりひとりがベストドレッサー。それぞれにパーソナルな新聞を作るんですよ!」
私は一瞬、その言葉の意味がわからなかった。ポップアップ!? ってことは百貨店? そんなところに私の制作物が並ぶのか!!
忘れていたキラキラ系女子の興奮が一気に蘇った瞬間だった。落ち着いたミセス向けのブランドがスポーツ紙とコラボすることはイメージしづらい。でも〝攻めのブランド〟HYDROGENなら大スポにマッチする気がする。きっとうまくいく。
私は普段、原稿を書くのが仕事ではないので、先輩記者にサンプル原稿を依頼。スポーツ新聞記者が書くファッション原稿がどんなものになるか予想もつかなかったが、数日後に私の手元に届いたのは、「商品を試着したお客様が、当日飛び入りで参加したファッションコンテストで優勝し、世界中のメディアから引っ張りだこになる」というスーパーシンデレラストーリーだった。
これを自分の名前と写真で作られた人は、どんなに興奮するだろう。まずは三喜商事の担当者、大丸心斎橋店のショップ店長、そしてデザイナーのアルベルト・ブレーシさんの3人をモデルにレイアウトを作ってみることにした。
どちらの社のカラーを前面に出すかという点で悩んだが、HYDROGEN風のイケてるポスターなら百貨店に並んでも誰も驚かない。やはりここは大スポの一面テイストをベースにしたほうがレア感が増すはず。そこにHYDROGENの近未来的な雰囲気を織り交ぜて、完成!
遂に迎えたイベント本番、大スポフィーバー!
イベント本番は超満員で大盛況。特に長年のHYDROGENファンの方々が、ショーケースのサンプル紙面を見て「何やコレ!?」と興味津々で撮影に臨まれた。購入品を着用した姿を撮影させてもらい、アンケート用紙にはコーディネートのポイントなどをお客様自身に書いていただいた。私はそれらを材料に紙面制作に取り掛かったのだが、みなさんのコメントが関西ノリで実に面白く、それでいて本当に洋服を愛しているのが伝わってくる写真だった。その人に似合うフレーズを原稿の中にちりばめ、キマって見えるレイアウトや見出しを考えた。まるでサプライズプレゼントを用意するような気持で、作っている時間は私がドキドキだった。興奮状態で進めたからか、あっという間に全員分のノベルティーが完成した。
三喜商事に紙面データの納品を済ませ、私の〝初企画〟は無事終了。お客様のもとにデータが届き一週間ほどたったころ、心斎橋店の豊田店長が電話やLINEで直接お客様から聞いた感想をまとめて、私に送ってくれた。
喜びにあふれたコメントばかりで、この仕事を始めてからこんな言葉を見るのは初めてだった。ここまで褒められちゃっていいのだろうかと正直かなり浮かれた。大成功だ。
次はアナタの企業とコラボ!一緒に新しいモノ作りませんか?
私は今月の人事で、営業局販売部に異動になった。新聞の発行部数や流通ルートなどを管理する仕事で、制作一筋だった私には慣れない内容ばかりで苦労している。幸い、上司は私がメディアラボでの活動を続けることを認めてくれた。今までとは違うスキルを身に付け、新しい環境だからこそ生まれるアイデアを模索し、さらに進化した企画を作りたい。
次はアナタの企業と電撃コラボ!!一緒に新しいモノを作りましょう。