性格がまるっきり違ったマレンコ兄弟【タイガー服部が語る強豪外国人#5】
みなさんご存じのマレンコ兄弟はタッグでも大活躍したし、シングルプレーヤーとしても超一流だ。2人とも玄人好みの関節技でファンをうならせていたが、性格はだいぶ違う。
オレは2人が10歳くらいの時にヒロ・マツダ道場で初めて会ったけど、第一印象は正反対だ。兄貴のジョーは男らしい奴で、お父さんのグレート・マレンコにいつもくっついていた。一方、ディーンは女々しいヘナチョコでお母さん子。いつも母親の陰に隠れていた。
関節技が得意だったのは2人とも父親と親交が深かったカール・ゴッチに指導を受けていたからだ。ただ、ジョーはゴッチが大好き、ディーンは大嫌いだった。だからディーンはゴッチの言うことなんて聞かなかった。
プロレス引退後の人生も違う。ジョーはプロレスとはほとんどかかわっていない。プロレスで得たカネを元手に薬品販売業を始めたら、これが大当たり。その後不動産業に進出して、今では地元の実業家で名士だ。
一方、ディーンは引退後WWEのエージェントになって、順調に出世。今や重役の一人で、道場でコーチもしている。昔から華やかなエンターテインメントが好きだったからお似合いの仕事なのかもしれないな。
ジョーは昔かたぎ。逆にディーンはさばけた男だ。共通点を探すと、2人は面倒見がいいってことにいきつく。
プロレス界の義兄弟
実業家として多忙な日々を送るジョーは、80歳になったかつての師匠ゴッチのアパートに行って身の回りの面倒を自らしている。食事や洗濯までしてね。なかなかできることじゃないし、本当に頭が下がる。昔からそうだったけど、一本筋の通った男気あふれるナイスガイだ。
ディーンも仲間から頼りにされている。特にエディ・ゲレロ、クリス・べノワ、デイブ・フィンレーからは信頼されていた。ディーンはユダヤ人、エディはメキシコ、クリスはカナダ、フィンレーはイギリスと出身はバラバラだけど、この4人の絆はプロレス界一強かった。残念ながらエディが他界して3人になってしまったけど、いわゆる義兄弟みたいなもので、一番上の兄貴がディーンだ。離合集散の多いプロレス界にあって珍しいことだ。
「この4人は運命共同体なんだな」と思わせることもあった。4人が一緒にWCWに上がっていた時、ディーンが中心になって4人で副社長のエリック・ビショフにギャラアップを要求した。いわば4人の“団交”だ。
交渉が決裂すると、4人は一緒にWCWを辞めた。裏切り者は誰一人出なかった。誰も4人の絆を切り崩すことができなかったんだろうな。
ジョーとディーンの性格は違うけどやはり似た者同士なのかもしれないな。