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2016年の春競馬!アニメ「ウマ娘」5話の史実を「東スポ」で!

「ウマ娘」のアニメは史実をしっかり反映しているといわれます。紙面も写真も持っている「東スポ」でそれを証明しつつ、最新話を待ちましょう。今回は第5話を振り返ります。(文化部資料室・山崎正義)

ダイヤちゃん

 いきなりダービーの直線から始まった第5話。皐月賞で1番人気ながら3着に敗れたサトノダイヤモンドが巻き返しとサトノ家の悲願に向けて疾走していました。まずはあのダービーの馬柱から確認しておきましょう。

 構図としては「3強+1」。伏兵だったもののフロックとは思えない圧巻のパフォーマンスで皐月賞を制したディーマジェスティが3・5倍の1番人気。その皐月賞で不利がありながら3着に入ったサトノダイヤモンドが3・8倍の2番人気で、2着だったマカヒキが4・0倍の3番人気となりました。3頭にほぼ差はなく、ディーマジェスティの1番人気は絶好枠を引き当てたぶんと蛯名正義ジョッキー悲願のダービー制覇を応援する票も入っていたと思われます。で、5・5倍が皐月賞で2位入線→5着に降着となっていたリオンディーズ。気性に不安を抱えていたものの素質では負けておらず、3頭からそれほど差のない4番人気になりました。レースはアニメで描かれたように、最後の最後、サトノダイヤモンドとマカヒキの一騎打ちになります。馬群をこじ開けるように抜け出してきたマカヒキにダイヤモンドが食い下がり、迫っていくのです。

 ほぼ並んでゴール。結果は写真判定の末、ハナ差でマカヒキに軍配が上がります。その差は…

 8センチ!

 2400メートル走ってたった8センチでサトノ家の悲願がするりと逃げていったダイヤモンド。アニメではレース後、ダイヤちゃんの蹄鉄が外れているシーンがしっかり描かれましたが、これもまた史実通りで、向こう正面あたりで左後ろ脚が落鉄していました。

 記事では管理する池江泰寿調教師がこう話しています。

「前(脚)もつらいが、後ろは推進力の源だからね」

「(ウサイン)ボルトも裸足では走れないでしょ? 残念です」

 悔しかったに違いありません。一生に一度しかないダービー。しかも、サトノ家の悲願もあったのに…これでもくじけずに前を向くダイヤちゃんには本当に頭が下がります。記事内でも陣営が「この馬はもっと良くなる」という秋を待ちましょう。

 ちなみに、このダービーのアツい叩き合いは、ルメール騎手(ダイヤモンド)と川田将雅ジョッキー(マカヒキ)によるものでした。今年、白熱のリーディング争いを繰り広げている2人が互いを称え合った〝ゴール後〟も非常に美しかったです。

キタちゃんVSドゥラメンテ

 一方、天皇賞・春で菊花賞に続くGⅠ2勝目を挙げたキタちゃんは、宝塚記念で同期の怪物・ドゥラメンテと対戦することになりました。皐月賞、ダービーで完敗した相手は、その後、ケガで戦線離脱。4歳になって復活し、まずは中山記念を楽勝します。

 結果記事で注目してほしいのはオーナーサイドのこのコメント。

「秋は凱旋門賞へ行かねばならない馬」

 はい、「行きたい」じゃなくて「行かねばならない」というのが、「敵は日本ではなく世界」というレベルの馬だということを表しています。加えて、行くのが宿命、そういう使命を持った馬なのだとも読めます。少し前にこのnoteで書いた通り、ドゥラメンテの血統は、日本が誇る最強牝馬の系譜でもありましたから、その血が世界で通用することを証明しなくてはいけない存在だったのです。だから、中山記念の後、ドバイシーマクラシックで2着に敗れたときはかなり悔しかったはずし、レース前に落鉄して裸足のままで走った結果(それでも2着!)ですから「秋に凱旋門賞でリベンジ」「今度こそ世界一だ!」という思いは相当強くなっていたでしょう。

 そんな中で出走する宝塚記念が〝通過点〟扱いになってしまうのも、つまりはアニメのドゥラメンテがそういう態度になってしまうのも仕方ないとも言えます。日本の競馬ファンもレベルが違うことは理解しており、だからこそ、宝塚記念の単勝オッズは海外帰りなのに1・9倍という数字になりました。前年後半に休んでいて、この年、国内で1回しか走っていないため、ファン投票は6位だったのに、単勝は頭ひとつ抜けていたのですから、誰もが力を認めていたんですね。

 5・0倍の2番人気に支持されたキタサンブラックの印がそうでもないのは、天皇賞・春の逃げ切りが天才・武豊ジョッキーの腕によるもので、「本当に強いわけじゃないのでは?」という声も少なからずあったからでしょう。ただ、このレースでキタちゃんはしっかり強くなっていることを証明します。楽に逃げたわけではなく、向こう正面まで後続に突かれるようなキツイ展開で、1000メートル通過59秒1は力のいるやや重馬場ではかなり速い部類。キタちゃん以外の先行馬が総崩れになるような厳しいレースの中、最後の最後まで抵抗した3着は力がないとできる芸当ではありません。

 もちろん、そのキタちゃんを早々に交わし、8番人気ながら勝利を飾ったマリアライト(アニメではリバーライト)も素晴らしいのですが、ファンをハラハラさせたのはドゥラメンテの走りでした。道中は中団の内。4コーナーで進路がなくなり、外に持ち出すのに苦労する様子に誰もが「ヤバイ!」と感じたはず。しかも外に持ち出した後、すぐには伸びてこないのです。デムーロ騎手が追って追って追って、最後の最後に猛追――。

 ゴールの瞬間の競馬場内に上がったのは、歓喜や祝福の大歓声ではなく、「あ~」という声やザワザワでした。ファン投票1位のキタサンブラックが勝ったなら〝祭りだワッショイ〟といった感じで盛り上がったでしょうがそうではなく、ドゥラメンテが凱旋門賞が楽しみになるぐらいの豪脚を見せてくれたわけでもなかったからです。特に皐月賞やダービーのドゥラメンテの異次元の走りを覚えていた人にとってはやや物足りなく映りました。

「海外帰りで調整が難しかったのか…」

「仕掛けが遅れたせいか…」

「でも…」

「そんなものを吹き飛ばすぐらい強いと思っていた」

「怪物だと思っていたのに…」

 そんな感情。ただ、だからこそ、残念なのに納得しました。ゴール後、鞍上のデムーロ騎手がドゥラメンテを止め、馬から降りたのです。

「故障だ!」

「大変だ!」

 場内に上がる悲鳴の中で「そうだよな」と思った人もいたに違いありません。

 普通ならもっと伸びたはず。

 ぶっこ抜いたはず。

 負けるわけがない。

 何かのアクシデントがなければ、ドゥラメンテが負けるはずがない!

 そう思ったのです。実際はゴール後につまづいて滑り、「左前脚ハ行」という診断結果がレース後に発表されたのですが、アニメで描かれたように、走っている途中に何かしらの異常が起きていた可能性も否定できません。そう考えたくなる馬、普通なら負けない馬、ドゥラメンテはそれぐらいの馬でした。

グル姉

 ドゥラメンテがエアグルーヴのことを「グル姉」と呼んだこともネットで話題になりました。これも少し前のnoteで書いた通り、実際は姉さんではなく、おばあちゃんです。ちなみに母アドマイヤグルーヴもエリザベス女王杯を勝った名馬、ひいおばあちゃんもオークス馬。まさに最強牝馬の系譜で、そのドゥラメンテを父に持つリバティアイランドという3冠牝馬が、キタサンブラックを父に持つイクイノックスとジャパンカップで戦うなんて楽しみで仕方ありませんし、父親同士が同級生だというのも面白いですよね。


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