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僕を1日署長にしてください

 じわじわと、確実に、売れ始めているような気がしないでもないドキュメンタリー芸人・コラアゲンはいごうまん。東スポにおける〝実録連載〟を復刻しています。

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 実は警察にお世話になったことがあります。13年ほど前、ある町での独演会前日、主催者からマストでお願いされたご当地ネタを作るべく地元を奔走するも収穫ゼロ。泣きそうになりながらトボトボ歩いていると、目の前に警察署が…。そこで僕、くだらんことを閃いてしまったんです。

 意を決し、飛び込み営業がごとく警察署に乗り込むと、案内された一室でお願いしました。

「僕を1日署長にしてください」

 芸能人の1日署長は、普通は警察署に頼まれてやるもの。対応してくれた警務課の男性、パッと見50代、寡黙なゴリラ風のAさんも「自ら売り込みにくる芸能人を初めて見ました」と半笑いで無理だと言います。とはいえ、門前払いしなかったAさんに一筋の光を感じた僕は、なんとか風向きを変えようと持ちネタの体験談をしゃべってみました。反応は…ナシ。しかし、帰り際、もう一ネタ付け加えたことで奇跡が起こりました。

「あと、矢沢永吉さんのバックコーラスもしたことありまして…」

 ヤクザも宗教も全く食いつかんかったAさんが永ちゃんばりに眉間にシワを寄せ、アヒル口にして、ゆっくり人差し指を僕に向けると「グレイト!」というではありませんか! そう、矢沢さん信者やったんです。

「1日署長の件、上司にかけあってみます」

 マジか!

 急転直下の展開で署長室に通される僕。Aさんの気持ちに応えるべく勝負に出ました。「署長、今からネタをやります。おもろかったら1日署長にしてください。はい、どうも~」。

 やってみたらこれが意外とウケたので、興奮気味に聞きました。「署長どうでした?」「おもしろい!」「ホント?」「こんなに笑ったの久しぶり!」「では1日署長にしていただけますか?」「今年はもう決まったんだよね」。先言ってくださいよ~。

 しかし、縁というのはすごい。なんと1か月後、交通安全のイベントにゲストとして呼んでいただきました! 朝から昼まで交通安全を訴える…Aさんのおかげで1日署長ならぬ〝半日署長〟を体験できたのでした。

 コラアゲンはいごうまん 1969年生まれ。自ら体験した出会いやエピソードで観客に爆笑と感動を与える実録ノンフィクション芸人。お笑いライブに加えて企業、医療、学校等で講演活動中。著書に「実話芸人」(幻冬舎文庫)。


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