口だけジジイにノールック打法!卓上は今日も面白い
東1局
「麻雀は攻めてなんぼ。オンナはすぐ鳴いて安くアガるか、ベタオリするからイヤなんだよね」
御年71。時代錯誤も甚だしい女性蔑視の間抜けなジジイが、大会で同卓した折に、私にそう語りかけてきたことがある。ちょうど女性活躍推進法が成立したころの話で、そんな時代に何をのたまうのか。しかも、卓上は年齢、性別、職業など一切関係ない神聖な場。同卓者には40代のマダムと50代のご婦人がいるっていうのに…。
東1局。ドラは發。9巡目にジジイが切った發を東家のご婦人がポン。ドラを切ったぐらいだからテンパイか? 親にも打てないが、ジジイには一牌たりとも甘い牌は打たぬぞ…と思いきや、親の現物を中抜きするジジイ。なんだなんだ? 鳴かれたらからベタオリか⁉ まあいい。他人の打ち方をとやかく言っても始まらない。ご婦人はツモアガり、4000(点)オール。
続く1本場。ドラ中。ジジイは私の切った8筒をポン、2索を両面チー。「中が暗刻なのか」なんて考えていたら、ジジィは10巡目にドラをツモ切りした。その打牌に対して、南家のマダムからポンの声。ジジイの食いタン仕掛けが露わになってしまった。
その後は一打一打ビビりながら切るジジイ。攻めてなんぼどころか、ベタオリした揚げ句、マダムに満貫を直撃された。その後もマダムのメンホンイッツー、ご婦人の純チャン三色に打ち込んだジジイは点棒を貸してくれと小声でお願いしたものの「貸してくれ? 人にものを頼むときは貸してくださいでしょ!」なんてご婦人に言われる始末。何をやってんだか。
東2局
相手や場所を見ずに繰り出す「ノールックパス」。1980年代以降、アメリカのプロバスケットボールチームで大活躍したマジック・ジョンソンの得意技である。
麻雀に「ノールックパス」はないが「ノールック打法」なるものは存在する。勝手に命名させていただいたこの打法は、打ち手自身がロンされる可能性を感じる牌を切るとき、顔をそむけて打牌する動作のことを指す。恐怖心から逃れたい心理が動作に表れるのだ。
御年72。「ノールック打法」を多用するトシさん。ブティックを経営していたので、服装にも気配りのあるお洒落ジジイである。
南3局。親番はトシさん。西家のご婦人が、13巡目に国士無双をテンパイした。待ちはドラの中。14巡目、中を切ればトシさんも平和一気通貫テンパイ。中は場に3枚切れ。国士無双を警戒しつつ、あわよくば中を雀頭にしようと考えていたので、手牌に残っていたのだ。
息を飲むトシさん。しばしの少考後、落ち着きのないハトさながらに顔をそむけながらのリーチ宣言。だがしかし。ご婦人からロンの声はない。それどころか、下家のよく鳴くジジイから「チー!」の声。「とりあえず一発だけは消しとくか」なんてのたまっている。
中に対してチー⁉ 異変に気付いたトシさん。そむけた顔を戻し、穴があくほど手牌を凝視している。よく見ればリーチ宣言牌として出したのは中ではなく九萬。顔をそむけながら打牌した折に、一気通貫の出来メンツから九萬を切ってしまったのだ。痛恨の誤リーチ。流局後、罰符を受け取ったご婦人から怒りの一言。
「あんた長生きするよ。きっと。でも今度やったら塩まくよ!」。
恥ずかしさのあまり顔から耳まで真っ赤なトシさん。ピンクのシャツとのコーディネートが実に鮮やかだった。