「ちゃぶ台返し世界大会」前回優勝者に弟子入りして挑戦
1月の独演会を成功させたコラアゲンはいごうまん。じわじわと、確実に、売れ始めているような気がしないでもないドキュメンタリー芸人の〝実録〟を復刻しています。
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世の中にはいろんな世界大会がありますが、岩手県矢巾(やはば)町で行われる「ちゃぶ台返し世界大会」をご存じでしょうか。ちゃぶ台をひっくり返してその上にのった玩具のホットドッグをいかに遠くに飛ばせるかを競います。陸上競技はピストルの号砲で始まりますが、ちゃぶ台返しは割烹着を着たお母さん役のおばちゃんの「お父さんやめて~」という懇願で始まるんです。
参加したのは2012年。ワハハ本舗の演出家・喰始(たべ・はじめ)から「何かで優勝せよ」と指令を出されていた僕は、第6回ちゃぶ台返し世界大会当日、会場の野外ステージに自信満々で待機しておりました。なぜなら、クソ真面目な僕は前回優勝者に弟子入りし、最高の仕上がりで乗り込でいたからです!
自信の理由はそれだけじゃありません。司会者が参加者全員に事前取材をするんですが、僕はこのコーナーで書いているようなトホホな半生を伝えていました。すると迎えた本番、呼び込む時、こう紹介されたんです。
「この方は芸人さんで、元相方は雨上がりの蛍原さんだそうです。元相方が活躍する中、彼は今何を思いちゃぶ台を返すのか!」
観客の皆さんから励ましの拍手。お母さん役のおばちゃんに至っては例の懇願する台詞のとこで「お父さん頑張って!」と応援までしてくれました。そう、〝場の空気〟は完全に僕のもの。みんなが後押しする中、魂を込めてでちゃぶ台を返したんです。
前回優勝者の指示は完璧でした。ちゃぶ台は縦30センチ横40センチの四角形で上にトースト、コーヒー等、いろいろな玩具がのっていますが、ホットドッグ以外は記録に関係ない…コツはちゃぶ台を90度回転させて、ホットドッグを手前の端にもってきてひっくり返す。すると40㌢の助走がつくぶん有利やと…。
「それー!」
アドバイス通りにやってみると、玩具のかたまりが勢い良く飛んでいきました。その日の最高記録4メートルをはるかに超え、8メートル付近にまで。
「やったー!」
歓喜しながらフと足元を見た僕。そこにはホットドッグがもの悲しげに転がっていました。記録は40センチで最下位。僕の結果はトホホでしたが、こんなユニークな大会をいまだに続けている矢巾町、最高!