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「あざとさ」はもう女子だけのものじゃないみたい

テレビ朝日の「あざとくて何が悪いの?」が好調だ。公式Instagramのフォロワーは21.1万人、TikTokのフォロワーは12万、YouTubeのチャンネル登録者数も8万人を超えている。2月19日に放送された回ではM-1チャンピオンの錦鯉が出演し、これまた話題に上がっていた。

「あざとい」という言葉がこれほど日常的に使われるようになったのはこの番組の功績と言っていいだろう。そして書店にも『「あざとい」伝え方入門』(日経プレミアシリーズ)という新書が並べられていた。田中みな実さんや弘中綾香アナの写真こそ使われていないが、このタイトルはあざとくヒットを狙っている気がしたので思わず手に取ってみた。(東スポnote編集長・森中航)

著者の山本御稔みとし氏はプレゼン技術向上やビジネスマンのための確率・統計基礎セミナーなどを手がけるコアコム研究所の代表で、大学でも教鞭をとっている。そんな方がなぜ「あざとい」に注目するのだろうか?

今、私たちの伝え方に新たな進化が見られる。それは、本書のタイトルに含まれる「あざとい」だ。「あざとい」ってズルいとか、性悪とか、ごまかしのような感じはあるが、あざとさがあるから伝え合いができるのだ。コミュニケーションを継続させるために伝え方を進化させた――それが「あざとい」伝え方なのだ。
 というわけで、筆者としては〝「あざとい」は進化の過程〟だと考える。そのあざとく進化する伝え方を、心理学、行動経済学といった学問分野とこれまでの社会人としての経験をもとに記すことにした。

山本御稔『「あざとい」伝え方入門』(日経プレミアシリーズ、2021年、5ページ)

田中みな実が定義した「あざとさ」とは…

フリーアナウンサーの田中みな実

実際、田中みな実さんが番組内で「あざとい」の定義に言及した際には、「人間関係・上下関係を円滑に進めるための技法」としており、著者とかなり同じ方向を見ていることがわかる。同じ情報でも伝え方ひとつで受け手の印象がガラリと変わることは結構あるようだ。

 認知心理学で面白い実験がある。1日は24時間だ。そのうち8時間を睡眠に充てる。食事は1回1時間として3時間。風呂、掃除などに2時間かけるとすれば合計13時間となる。それでは「残りの11時間はすべて企業勤務にしましょう」と提案すると、大半の人は拒否するだろう。「長すぎる。もっと短くしてほしい」
 なぜ拒否するかと言えば、実験の状況は1日すべてを勤務に充てている、つまり走り続けていると考えるためである。睡眠、食事、風呂などの当然必要な13時間は休憩ではなく、人間として必須の時間であり、走っていることとほぼ同じ感覚の時間なのだ。

前掲書、18ページ

 だからこそ「勤務時間は11時間。残りの13時間はあなたの自由です」と提案したほうが拒否感は薄れるという。「いやいや、そもそも11時間も働きたくないよ!」とツッコミを入れたくなるが、1日の半分以上が自由に使えると思ったら何だか気が楽になった気がするから不思議だ。

7割は打てないけど、3割打ったらすごいバッター

同様のケースは野球でも起こっている。一般的に打者は3割打つことができればすごいと称賛されるが、逆に言えば7割は打てないのが現実だ。だからこそ7割打てないことに目を向けるのではなく、3割も打てることをアナウンスし、「この人なら打ってくれるはず」という期待を盛り上げていくという。

 マイナス面だけ伝えたところで、萎縮するだけだ。プラス効果アナウンスにより、企業内でも「勝てる、勝っている」という自信が生まれ、勤務することに花が咲く。

前掲書、22ページ
事例が豊富でとても読みやすい!

もう「あざとさ」はモテの道具だけでもないし、女性だけのものではないようだ。

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