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「空手の練習をするぞ」なんて言い出してドアをボコボコにして…【タイガー服部が語る強豪外国人#4】

手のつけられないイタズラコンビ

 手のつけられないイタズラコンビだったのがダイナマイト・キッドデイビーボーイ・スミスだった。

 オレのマユ毛をそるなんて序の口。並の悪ふざけじゃなかった。やられた相手にはホント同情するしかない。

キッド(右)とスミスのコンビはブリティッシュ・ブルドッグスとして一世を風靡した

 一番ひどかったのが〝ビッグ事件〟だ。やられたヤツの名前は失念してしまったけど、200キロぐらいある超大型レスラーだ。ここではビッグという仮名をつけておこう。

 キッドとスミスはある日、ビッグを都内のステーキハウスに招待。オレも同行することになった。狙いはビッグへのイタズラだ。そんなことは夢にも思わないビッグは巨体にあらん限りのビールとステーキを詰め込んだ。

 そいつがトイレに行って席を外した時、キッドとスミスは自分たちのカバンの中をモソモソ。取り出したのは薬で、ビッグのグラスの中に入れた。

 オレは「下剤かな」って思ったけど、もっと恐ろしいものだった。

 何と睡眠薬。効果テキメンでビッグはすぐにグースカと寝込んでしまった。

 かといって置いてけぼりにしてカネを全部払わせるわけでもない。優しくホテルの部屋まで送り届けた。

 さてここからが本番だ。ビッグを素っ裸でベッドに寝かせたキッドとスミスは、自前のイチモツを出した。オレが「エッ」と思った瞬間、何と2人は眠れる巨人に小便をかけたんだ。オレはあぜんとしたよ。しかも2人「空手の練習をするぞ」なんて言い出してドアをボコボコにして行ってしまった。


 あわれなビッグ。次の日に話をしたら、小便をかけられたことは知らなかった。もちろん言えるわけがない。しかも後日、巡業中のバスでドアの弁償代を請求されてビッグは途方に暮れていた。キッドとスミスはそいつを尻目に何食わぬ顔で週刊誌を読んでいたよ。とんでもない野郎どもだ。

プロレスにかける情熱はすさまじかった

 ほかのイタズラもハラハラものだ。巡業中に同僚の部屋の鍵穴にチューインガムとツマヨウジを入れて“監禁”したこともある。外国人の世話役だったオレは「これじゃ試合に間に合わない」と焦ったもんさ。

 スーツケースをチェーンでグルグル巻きにして開けさせなくしたこともあったし、中にある背広をハサミでズタズタにすることもザラだ。スーツで帰る外国人レスラーも多いから、彼らにとっては天敵だった。

ブルドッグを連れて入場するスミス(手前)とキッド(1987年2月、米ロサンゼルス)

 イタズラばっかしで手が焼けたけど、2人のプロレスに注ぐ情熱はすさまじい。常に120%の力を出して、手を抜くなんてあり得なかった。あんなに元気なイタズラ小僧コンビだったのに、スミスは亡くなってしまったし、キッドは車イス生活…。つくづく残念だ。

※この連載は2006年4月9日~5月まで全6回で紙面掲載されました。東スポnoteでは写真を増やしてお届けします。


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