最終回はテレサ・テン、寺尾聰、尾崎豊を一気に語ります!【マーティ×島倉りか対談/後編】
世界的ギタリストのマーティ・フリードマンと昭和歌謡好きで知られるBEYOOOOONDSの島倉りかとのスペシャル対談もいよいよラスト。りかちゃんが持参したレコードの中から昭和を彩った名曲を語り合ってくれました。マーティさんの鋭い分析も加わって最後まで目が離せません。(企画構成・アラフィフ記者F)
カーペンターズに歌わせたいテレサ・テン
――島倉さん、次はどなたのお話をしましょう
島倉 テレサ・テンさんはいかがですか。
マーティ 定番曲がありましたよね?
島倉「時の流れに身をまかせ」(1986年)ですね。
マーティ それです! 中国に行った時、どこに行ってもその曲の中国語バージョンが流れてました。
島倉 日本の方じゃなかったですよね?
――台湾出身で、香港(当時)、シンガポール、タイなどアジア各地で人気でした。74年(昭和49年)に一度日本デビューし、諸事情あって一度日本から遠ざかり、84年に「つぐない」で日本再デビュー。「時の流れに――」は再デビュー3枚目の大ヒット曲です。聴いてみましょう
マーティ この曲の作曲家は日本人ですか?
――作曲は三木たかしさん、作詞は荒木とよひささんです。再デビュー以降、このおふたりの曲がしばらく続きました
マーティ これ、カーペンターズがやったらすてきだと思います。
島倉 あ、確かに! すでにボーカルのカレンさんは亡くなられましたが(83年没)、聴いてみたかったですね。
来日会見したカーペンターズ(74年5月)
マーティ カーペンターズ、好きですか?
島倉 はい、好きです。洋楽は好きな歌手の方の影響で聴くようになりました。
マーティ この曲、雰囲気はカーペンターズです。ただコード進行もメロディーも解釈も完全に日本です。向こうではカーペンターズがこういう雰囲気、編成、癒やしの存在です。メロディーが強くて、バート・バカラックさんが作りそうな大人のコードが入ってます。
島倉 大人のコードですか?
マーティ マイナー7や、サビ直前のオンコード(分数コード)です。オンコードは日本のサビ前の定番で、しょっちゅう出てきます。もちろん海外の曲にもありますが、日本はすごく多いです。昔も今もよくあります。
島倉 テレサ・テンさんとカーペンターズの共通点って、発想がなかったです。
――次は日本再デビュー曲の「つぐない」を聴いてみましょう
マーティ これは日本らしいイントロだよね。切ないです。こういう音楽聴いたらどうなりますか?
島倉 切なくて泣きそうになります。歌詞もメロディーもすごく切なくて、自分のことじゃないのに、胸が締め付けられる感覚になります。聴きながら悲しい感覚に浸ってます。
マーティ こういうふうに歌ったりするんですか?
島倉 けっこうマネして歌ってます。
マーティ 素晴らしいじゃん! 今度セッションしましょう!
――マーティさんはこの曲は好きですか
マーティ もちろんです。ハワイに住んでいたころ、初めて気になった日本の音楽がこういう系でした。ハワイでは「紅白歌合戦」が見られるんですよ。見てたら、誰かわからないですが、歌手の声が女性らしくて、癒やし系でいいと思ったんです。
――まだ日本語がわからないころですね
マーティ 日本語はわからないし、ハワイではアジアの国の番組を交ぜて放送してたから、どこの国なのかもわかりませんでした。その時はまだ日本か韓国かわからない、普通のアメリカ人でした。後で紅白だとわかりました。聞こえてきた女性の声がすごく耳ざわり良かったんです。このテレサ・テンさんのように。
74年に日本デビューしたときのテレサ・テン
島倉 テレサさんの声は優しくてすてきですよね。
マーティ そうです。ホイットニー・ヒューストンみたいに、叫んだり、アドリブで高音出して歌唱力アピールしたりしないじゃないですか。それからシンディ・ローパー、彼女は上手ですてきだけど、歌に女性らしさが薄いんです。当時アメリカでは彼女たちが人気でしたが、僕が求めるものは紅白で聴いた日本の女性歌手の声にあったんです。
島倉メロメロ!「寺尾聰さんって、大人の色気があって、渋くてかっこいい」
――島倉さん、次はどなたにしましょうか
島倉 寺尾聰さんのアルバム「Reflections」(1981年)のお話がしたいです。
マーティ 寺尾さんて、パッと曲が思いつかないです。
日本歌謡大賞を受賞した寺尾聰(81年11月)
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