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麻雀ジジババ〝終電間際の攻防〟

「終電まで…」と始めたはずが徹マンに――そんな〝麻雀あるある〟は、健康第一、早寝早起きのジジババたちにもあり得るのか。今回は、そんなエピソードからいってみましょう。ご案内は「雀聖アワー」の福山純生氏です。

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東1局

 終電間際の攻防――うら若きカップルが、帰りたくないのか帰したくないのか。男女の機微を巡って一進一退を繰り広げる光景は、都心の駅前でよく見かける。どちらを決断するのかは知ったこっちゃあないが、こと麻雀にも「終電間際の攻防」は存在する。

 とある大会終了後の飲み会の席にて「これから延長戦をやりたいんだが」とのたまうジジイが出現。御年69。「朝まで打ちたいけど、かかあが風邪気味だから終電まで」なんて言い出した。

 あまりにもしつこいので、御年72の好々爺が終電までならと名乗り出た。その席では若手となる私は有無も言わさず強制参加。となると、あとひとり。すると意外な人物がおもむろに口を開いた。御年62のヒロコさん。品のある面倒見のいい性格で、料理上手なご婦人。「ホントに終電までなら、私いいわよ。明朝、旦那にお弁当作らなきゃいけないんで」と言うではないか。

 しかし、このヒロコさんがクセ者だった。

 迎えた南4局。終電までは20分。親は持ち点が300点のヒロコさん。誰かがサクッとアガれば、余裕で間に合うと思った矢先、ヒロコさんの驚異の粘りが始まった。

 ツモ1000オール。ロン5800。ツモ4000オール。気がつけば終電まで10分。危機を感じた言い出しっぺのジジイが鬼の形相でタンヤオ仕掛けに邁進するも、痛恨の親満を放銃。悔し紛れにジジイが尋ねた。

「明日のお弁当は…?」

「コンビニでテキトーに済ませなってメールしといたわよ。さあ、勝負はこれからよ。あんたもかかあに連絡しな!」

 こうして終電間際の攻防戦に敗れた男衆。結局、攻撃の手をゆるめない野獣と化したヒロコさんとともに、日の出を見ることに相成った。

東2局

 一世を風靡した「ちょいワルオヤジ」。男性ファッション誌が提唱した不良がかった中年男性のファッションを指すこの言葉。中年と高齢者の明確な境目は不明だが、モテるジジイとモテにくいジジイには明確な違いがある。

 モテるジジイの代表は、今春に喜寿を迎えたキヨシさん。四暗刻テンパイをリーチしてロンアガリ。ツモれば役満だったが、ロンだとリーチ、三暗刻、トイトイ。他に役牌、タンヤオ、三色同刻、もしくはドラでもないかぎりは満貫止まり。こういった状況でも、キヨシさんは「ツモりたかったけど出ちゃったからしようがない」的な言い訳をまずしない。寛容な態度で、様々なケースを想定しているからである。したがって余計なことを言わないのだ。

 モテにくいジジイの代表はマサオさん。御年80。高め三色同順の平和リーチ。安目で出アガると、なんだかんだ懸命な講義を始める。「本当だったらツモりたかったんだけどさ。親だからしようがないよね」。相手に同意を求めたり、言い訳をする姿こそ、まさに〝本当の自分〟であることに気がついていない。予測が外れるケースを想定しておらず、現実を認められない不寛容精神をご婦人たちは見抜いているわけである。

 しかもモテにくいジジイにかぎって、モテるジジイに嫉妬する。「なんでキヨシさんが人気あるのかホントわからん。ただのジジイじゃないか」と年下に対してジジイ呼ばわり。ダメな自分を認めたくないため、人の振り見て我が振りを直す気のないマサオさん。しかしたとえモテなくても、憎まれっ子世にはばかることも長生きの秘訣なのか⁉

◆福山純生(ふくやま・よしき)1970年、北海道生まれ。雀聖アワー主宰。全日本健康麻将協議会理事。健康麻将全国会新聞編集長。好きな役はツモ。


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