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雀歴82年!97歳バアさん登場!

 各地のマージャン教室や大会で元気なのは高齢者。ボケ防止にもつながるので、60歳や70歳を過ぎてからマージャンを覚えようとする方も少なくない。一方で、とんでもないキャリアを誇る人も…「雀聖アワー」福山純生氏が振り返ります。

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東1局

 御年97。大正、昭和、平成を生き抜いてきたハマちゃん。麻雀歴は82年。点数申告も完璧。計算がうろ覚えのジジイ連中に、ハマちゃんの爪のアカを煎じて飲ませてやりたいほどだ。

 普段は嫁ぎ先である布団屋さんの店頭にちょこんと座っている現役の看板娘。6人の息子を育て上げ、孫は総計20人。ひ孫や玄孫とともに一族総出で移動するとしたら、大型バスでも補助席まで使うんだろうか。余計な心配だけど。

 そんなハマちゃんの誕生日を祝う麻雀大会に出席したことがある。優勝者にはハマちゃんお手製の座布団。

 大会は和やかな雰囲気で進行。でも午後になり、勝敗の行方が見えてくると、優勝圏内卓の真剣さとは裏腹に、圏外卓はグチか独り言の宝庫となる。ハマちゃんはそんな圏外卓にいた。同卓者には、常によくしゃべる御年61のジジイと耳の遠い御年73と79のジジイ。

「一時期、週刊誌が毎週毎週〈死ぬまでセックス〉特集をしてた時期があったよな。表紙にまで〈死ぬまでセックス〉。飽きずに欠かさず〈死ぬまでセックス〉。俺なんかさ~」なんて調子で、61のジジイは、延々としゃべり始めた。耳の遠いジジイたちは聞こえていないのか、それともハマちゃんに気を使っているのか、相槌のタイミングも曖昧だから計りかねる。

 考えてみてほしい。御年97のバアさんを前に〈死ぬまでセックス〉談義。ジジイのデリカシーのなさはさておき、隣の卓にいた私は、抱腹絶倒寸前だった。

 大会終了時、ハマちゃんから一言。

「本日はお世話様でした。ワタシは死ぬまで麻雀ダァ」

 拍手喝采。〈死ぬまでセックス〉ジジイなんて諸手を挙げて喜んでいる。私にはハマちゃんが女菩薩に見えた…気がした。


続いてはコチラのお話

東2局

 流局が続くと、供託されたリーチ棒がたまりがち。1本ならまだしも3本、4本と積み重なってくると、鼻息荒く、何が何でも手に入れてやろうと意気込む御仁は多い。

 またそういった御仁は、アガッたとき、点数申告をする前に供託リーチ棒に手を伸ばす習性がある

 しかし供託リーチ棒が置かれている場所は、親のエリア内であり、手牌同様の不可侵エリア。そこへいきなり手を出すのは、ノックもせずに家に入ってくるようなもの。

 御年79。ゾウガメのような体躯のジジイ。流局が続き、5本の供託リーチ棒があった。西家のそのゾウガメジジイは自風をポン。数牌をチー。オタ風をポン。数牌をチー。残る手牌は1枚。チーした数牌は萬子と索子で、ドラも切っているので明らかな自風のみ。捕らぬ狸の皮算用。すでに供託リーチ棒を手中にしたかのごとく、口元が緩んでいる。

 だが相手が悪かった。親番はメンゼン派で有名な品のある御婦人。御年63。供託リーチ棒が何本積まれていようが、どこ吹く風。はした金を欲しがるのは貧乏人よ!とでも言わんばかりの雰囲気すら漂っている。

 御婦人の切った9萬にロンと発声したゾウガメジジイ。案の定、点数申告前に、供託リーチ棒へ手を伸ばした。だがその時。ピシャリと甲高い音。ゾウガメジジイが、慌てて手を引っ込めている。

「手を出さないの。いまあげるから!」

 ひと回り以上年下の御婦人から手を叩かれる飼い犬扱い。すわ、ゾウガメジジイ逆上か?と思いきや、ハニかみながら、大人しく点棒を待っていた。

 欲しいものは欲しい。ダメなことはダメ。卓上で素直に感情を出す。これも長寿の秘訣なのかもしれない。

◆福山純生(ふくやま・よしき)1970年、北海道生まれ。雀聖アワー主宰。全日本健康麻将協議会理事。健康麻将全国会新聞編集長。好きな役はツモ。


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